若手Webマーケター/SNSグロースプランナーの早瀬優人です。
請求書を出したのに振り込まれた金額が請求額より少なくて、計算を間違えたかと焦った経験はないでしょうか。
僕も独立して最初の年に同じことがあって、先方に問い合わせる寸前まで行きました。実際のところ、差額の正体は源泉徴収で、引かれた分は確定申告のときに精算される仕組みです。
この記事では、請求書に何を書くかと、源泉徴収された場合の扱いを、実務の順番に沿って整理していきます。
請求書に必要な記載項目
先に、請求書そのものの作り方から押さえていきます。
最低限そろえる6項目
形式は自由ですが、次の6つが入っていれば実務上は問題なく通ります。
- 発行者(自分)の氏名または屋号、住所、連絡先
- 宛先(発注者の会社名・担当部署)
- 請求書の発行日と、通し番号
- 取引内容(案件名・作業内容・数量・単価)
- 金額(小計・消費税額・合計)
- 振込先の口座情報と、支払期日
通し番号は自分の管理用ですが、入れておくと「先月の3番の件です」と言えるので、やり取りが早くなります。
インボイス登録をしている場合
適格請求書発行事業者として登録している場合は、上の6項目に加えて登録番号と、適用税率ごとに区分した金額の記載が必要になります。
登録直後にやることはインボイス登録した副業ワーカーが最初にやることで整理しています。
提出前に確認する3点
ここでつまずく人が多いのですが、内容そのものより送り方でミスが起きます。
- 宛先の会社名が正式名称になっているか(前株・後株の間違いが多い)
- 提出先が担当者宛か、経理宛か
- 締め日を過ぎていないか
締め日を1日過ぎると支払いが翌月に回ることがあるので、順番として締め日の確認を先にしてください。
源泉徴収の仕組み
ここがこの記事の本題です。仕組みを知らないと、毎回入金額を見て不安になります。
「フリーランスは全員引かれる」は誤り
まず前提を正しておきます。源泉徴収されるかどうかは、その人がフリーランスかどうかでは決まりません。
対象になるのは、法律で定められた特定の種類の報酬だけです。範囲は限定されていて、すべての業務委託が対象になるわけではありません。
対象になる報酬の例は、国税庁のNo.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等に挙げられています。原稿料、デザイン料、講演料、弁護士や税理士などの特定の資格者への報酬などが代表例です。
判断に迷いやすい仕事
実務で線引きが分かりにくいのは、次のような仕事です。
- 記事の執筆……原稿料として対象になる場合が多い
- バナーやサイトのデザイン……デザイン料として対象になる場合が多い
- プログラムの制作、システムの開発……列挙に明示がなく、扱いが分かれる
- コンサルティング、運用代行……内容によって判断が変わる
迷う場合は、発注者側の経理も判断に迷っていることが少なくありません。自分で結論を出さず、税務署か税理士に確認してください。
引かれる金額の計算
対象になる場合の税率は10.21%です。
同一人に対する1回の支払金額が100万円を超えるときは、100万円を超える部分については20.42%になります。
たとえば報酬が10万円なら、10万円×10.21%=10,210円が引かれ、手取りは89,790円です。
120万円の場合は2段階で計算します。100万円までの部分が100万円×10.21%=102,100円、100万円を超える20万円の部分が20万円×20.42%=40,840円で、合計142,940円が引かれます。
税率は改正されることがあるため、申告前に最新の情報を確認してください。
消費税を分けて書くと、対象になる金額が変わる
ここは実務で最も問い合わせが多い論点なので、独立して書いておきます。
源泉徴収の対象になる金額は、原則として消費税を含めた総額です。
ただし、請求書で報酬額と消費税額を明確に区分している場合には、消費税を除いた報酬額だけを源泉徴収の対象として差し支えないとされています。
取り扱いは国税庁のNo.6929 消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税で確認できます。
報酬10万円・消費税1万円の請求書で考えると、区分していれば10万円が対象、区分がなければ11万円が対象になります。差額はわずかですが、件数が積み上がると無視できません。
順番として、請求書のテンプレートを作る段階で区分表示にしておいてください。
請求書にどう書くか
源泉徴収の対象になる場合、請求書に内訳を書いておくと発注者側の処理が早くなります。
報酬額、消費税額、源泉徴収税額、差引の請求額。この順で並べておけば、経理担当者がそのまま処理できます。
ただし源泉徴収するかどうかを最終的に判断するのは発注者側なので、こちらの記載どおりにならないこともあります。
引かれた金額を案件ごとに追いかけるのは、件数が増えるほど手作業では難しくなります。
クラウド会計ソフトを使うと、請求書の発行から源泉徴収額の記録までを同じ場所で管理できるので、申告のときに集計し直す手間が減ります。
確定申告への反映
引かれた分をどう扱うかが、いちばん誤解されている部分です。
引かれた分は「前払い」であって、余分な負担ではない
源泉徴収された税額は、その年の所得税の前払いにあたります。
確定申告で1年分の所得税を計算し、すでに前払いした金額と比べて、多く払っていれば戻り、足りなければ追加で納めます。
つまり源泉徴収されても、最終的に納める税額そのものは変わりません。先に払っているだけです。
経費を正しく計上していれば、還付になる人もいます。経費の線引きは副業の経費にできるもの・できないものの線引きで整理しています。
申告に必要なのは支払調書ではない
ここは知らないと年明けに慌てるところです。
発注者から支払調書が届くことがありますが、支払調書を個人に交付する義務は法律上ありません。届かない取引先もあります。
申告に必要なのは、実際の収入金額と源泉徴収された金額であって、支払調書そのものではありません。届かなくても、自分の記録から金額を集計すれば申告できます。
だからこそ、自分で記録を残す
順番として、案件ごとに次の3つを記録しておいてください。
- 報酬額(税抜・税込)
- 源泉徴収された金額
- 実際の入金額と入金日
入金額だけを記録していると、源泉徴収分が抜け落ちて収入を少なく申告してしまいます。
よくあるミス
最後に、実際に起きやすい間違いを3つ挙げておきます。
入金額を売上として記録する
最も多いのがこれです。売上は源泉徴収される前の金額であって、振り込まれた金額ではありません。
引かれた分を計上し忘れると、還付されるはずの金額を取り逃がします。
消費税の扱いを決めずに請求する
報酬額が税込なのか税別なのかを確認しないまま請求すると、後から金額が食い違います。
契約の段階で確定させておく話なので、詳しくは業務委託契約書で必ず確認する5項目を参照してください。
所得の区分を意識しないまま申告する
事業所得として申告するか雑所得として申告するかで、使える制度が変わります。
判断の基準は事業所得か雑所得かで変わる税額の差にまとめました。
まとめ:引かれた分は、記録して初めて精算できる
請求書の書き方と、源泉徴収された場合の扱いを整理してきました。
源泉徴収の対象は報酬の種類で決まるため全員が引かれるわけではないこと、引かれた分は所得税の前払いで確定申告で精算されること、支払調書が届かなくても自分の記録があれば申告できること。この3つが要点です。
記録していない金額は精算の計算に乗りません。入金額ではなく、報酬額と源泉徴収額の両方を残しておいてください。
直近の入金を1件選んで、請求額と入金額の差がいくらだったかを計算してみてください。そこが出発点になります。
本記事は請求実務と源泉徴収に関する一般的な情報提供を目的としたもので、個別の取引における源泉徴収の要否や税額を保証するものではありません。税制は改正される場合があります。実際の判断は、国税庁の最新情報をご確認のうえ、所轄の税務署または税理士にご相談ください。











