若手Webマーケター/SNSグロースプランナーの早瀬優人です。
副業の確定申告をするとき、「事業所得」と「雑所得」のどちらで申告すればいいのか、実際のところここでつまずく人が多いです。
この2つは、同じ利益でも課税の対象になる金額に差が出てきます。ここが分かれ目です。
この記事では、事業所得と雑所得の判断基準を確認したうえで、区分による税額の差を具体的な数字を追いながら順番に整理します。経費の基本は副業の経費にできるもの・できないものの線引きで解説しています。
区分を意識せずに申告している場合
これまで何も意識せずに申告してきた、という方も多いと思います。
その場合、まず自分がどちらで申告してきたかを確認してください。
確定申告書の控えを見ると、どの欄に記載したかで分かります。
意識せずに選んでいた場合、実態と合っていない可能性があります。
合っていないと分かったときは、今後どうするかを検討する段階になります。
過去分の扱いを含めて、税務署や税理士に相談してください。
事業所得と雑所得、それぞれの意味
事業所得は、継続的・独立的に営まれている事業から生じる所得を指します。
雑所得は、給与所得や事業所得など、他のどの所得区分にも当てはまらない所得の受け皿のような区分です。
副業は、この2つのどちらに区分されるかによって、使える税制上の優遇の範囲が大きく変わってきます。
判断が問題になるのはどんなときか
区分の判断が実際に問題になる場面を知っておくと、備え方が分かります。
多いのは次の2つです。
ひとつは、赤字を給与所得と相殺して申告した場合。損益通算の可否に直結するためです。
もうひとつは、青色申告の特別控除を使った場合になります。
いずれも、税額に大きく影響する場面で確認されやすくなります。
逆に、黒字で控除も使っていない場合は、問題になりにくい部分です。
ただし、区分が実態と合っていることは前提になります。
事業所得と雑所得の判断基準
どちらに区分されるかは、収入の金額だけで機械的に決まるものではありません。順番として、まず判断の枠組みから押さえます。
総合的に判断される考え方
継続性・反復性があるか、営利を目的としているか、自分の責任と判断で行っているか、といった実態を踏まえて総合的に判断されます。
あわせて、日々の取引をきちんと帳簿に記録し、書類を保存しているかどうかも、事業所得として扱われるかの重要な要素とされています。実際のところ、ここが実務では一番効いてきます。
国税庁の通達では、その年の収入金額が300万円以下で、かつ帳簿書類の保存がない場合は、原則として雑所得に該当するという考え方が示されています。
裏を返せば、収入が300万円以下でも、帳簿をつけて保存していれば事業所得として扱われる余地がある、ということです。
ただしこれは形式的な基準ではなく、あくまで実態を踏まえた総合判断の一要素とされています。単発で一度だけ請け負った仕事のような場合は、雑所得として扱われる可能性が高くなります。
所得区分の考え方は、国税庁のNo.1350 事業所得の課税のしくみもあわせて確認してください。
「収入が少ないから雑所得」とは限らない
収入の金額が小さくても、継続的に取り組んでいて記帳もしっかりしていれば、事業所得として認められる可能性があります。
逆に、収入が大きくても、単発的で片手間の性質が強い場合は、雑所得と判断されることもあります。
「いくら稼いだか」よりも「どう取り組んでいるか」が重視される、と理解しておくとイメージしやすいです。
控除の要件を満たせるかを先に確認する
控除額の違いを見ると、大きいほうを選びたくなります。
ただ、控除には要件があり、満たせなければ受けられません。
確認しておきたいのは次の3点です。
- 記帳の方法……求められる帳簿の形を続けられるか
- 申告の方法と期限……期限を過ぎると控除額が変わることがあります
- 事前の届出……青色申告には承認の申請が必要で、期限があります
3つ目は、その年から適用したい場合に期限が関わります。
思い立った年からすぐ使えるとは限らないので、早めに確認してください。
要件の詳細は国税庁の案内で確認できます。
同じ利益額でも、課税対象になる金額はこれだけ変わる
ここでは、副業の年間の利益(収入から経費を引いた金額)が80万円だったケースを例に、区分によって課税対象になる所得がどう変わるかを、3つのパターンで順番に比べてみます。
雑所得の場合
雑所得には、青色申告のような特別控除の仕組みがありません。
そのため、利益80万円がそのまま所得金額となり、この80万円が給与所得など他の所得と合算されて課税の対象になります。
事業所得(白色申告)の場合
白色申告の場合も、青色申告特別控除は使えないため、利益80万円がそのまま所得金額になります。
雑所得との違いは、赤字が出た場合に損益通算や繰越控除が使える点にあります(詳しくは会社員が副業で赤字になったときの損益通算の可否で解説しています)。
事業所得(青色申告・65万円控除)の場合
要件を満たして65万円の青色申告特別控除を受けられると、利益80万円から65万円を差し引いた15万円だけが所得金額になります。
同じ80万円の利益でも、課税対象になる金額が80万円と15万円とでは、大きな差になることが分かると思います。
この65万円の差が、実際の税額にどう響くかも見ておきます。
所得税の税率は所得に応じて変わりますが、仮に所得税率が10%の人であれば、住民税(おおむね10%)と合わせて約20%です。
65万円×20%で、およそ13万円の差が生まれる計算になります。所得税率がもっと高い人であれば、差はさらに大きくなります。
なお、これは分かりやすさのための概算で、実際の税額は他の所得や控除の状況によって変わります。
65万円控除には要件がある点に注意
ただし、65万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳と、e-Taxでの電子申告、または優良な電子帳簿の保存という要件を満たす必要があります。ここでつまずく人が多いです。
これらの要件を満たさない場合、同じ青色申告でも控除額は55万円(さらに簡易な帳簿なら10万円)にとどまります。要件の詳細は国税庁のNo.2072 青色申告特別控除で確認できます。
白色申告・青色申告の選び方の詳細は副業とフリーランスの確定申告、白色申告と青色申告はどちらを選ぶべきかで解説しています。
事業所得として青色申告のメリットを活かすには、複式簿記による記帳が前提になります。
クラウド会計ソフトを使えば、簿記の知識が浅くても、複式簿記の帳簿を作りやすくなります。
事業所得のその他のメリット
青色申告特別控除以外にも、事業所得として認められることで使える仕組みがあります。順番に見ていきます。
赤字の損益通算・繰越ができるかどうか
事業所得であれば、赤字が出た場合に給与所得など他の所得と損益通算できる可能性があります。
また、青色申告であれば、赤字を翌年以降に繰り越して、将来の黒字と相殺できる仕組みも使えます。
家族への給与を経費にできるかどうか
事業所得で青色申告をしている場合、一定の要件のもとで、家族に支払う給与を経費にできる青色事業専従者給与という制度があります。
雑所得では、これらの制度を使うことはできません。
区分を判断するために残しておく記録
区分は実態で決まる、というのが原則です。
その実態を示すのは、日々の記録になります。
残しておきたいのは次のようなものです。
- 帳簿……継続的に記帳していること自体が実態を示します
- 取引の記録……契約書、発注書、請求書、やり取りの履歴
- 営業活動の記録……どう仕事を得ているか
- 作業の記録……どれくらいの時間を割いているか
とくに1つ目は、後から作ることができない部分です。
区分の判断が問題になるのは、たいてい申告の後になります。
そのときに提示できる記録があるかどうかで、説明できる範囲が変わります。
判断が難しい場合は、税務署や税理士に事前に相談しておくと安心です。
迷ったときの考え方
最後に、自分の副業がどちらに当たるか迷ったときの考え方を整理します。
まずは記帳を続けてみる
事業所得として扱われたい場合、順番として、まずは日々の収入と経費をきちんと記帳する習慣をつけることが第一歩です。
記帳の実態があること自体が、事業として取り組んでいることの説明材料になります。
都合よく選ぶものではないと理解する
「税制上有利だから事業所得にする」という発想で、実態を伴わないまま申告するのは避けてください。
所得区分は実態に基づいて判断されるものであり、継続性や記帳の状況を伴わない申告は、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。
区分が変わることもあります
一度決めた区分が、ずっと同じとは限りません。
副業として小さく始めたものが、規模が大きくなって実態が変わることがあります。
逆に、事業として続けていたものが縮小することもあります。
実態が変われば、区分の判断も変わり得ます。
年に一度、申告の準備をする時期に、いまの状況が前年と変わっていないかを確認してください。
変わっている場合は、その年の実態に合わせて判断することになります。
都合のよいほうを選ぶ、という考え方はしないでください。
記帳を始める時期
区分の判断は実態で決まるため、記帳は早く始めるほど有利になります。
年の途中からでも構いませんが、その場合はいつから始めたかを記録に残しておいてください。
翌年からは、年初から通して記帳できる状態を作っておくと説明しやすくなります。
会計ソフトを使う場合も、最初の設定さえ済ませれば日々の作業は数分で終わります。
始めるハードルは思っているより低い部分です。
判断に迷ったときの進め方
区分の判断は、自分だけで結論を出しにくい部分です。
迷ったときの進め方をまとめておきます。
まず、自分の副業の実態を書き出します。時間、継続期間、取引の形、営業の方法。
次に、その内容を持って税務署の相談窓口か税理士に相談します。
相談する前に実態を整理しておくと、具体的な回答が得られます。
「どちらが得ですか」ではなく「この実態はどちらに当たりますか」と聞く形が適切です。
区分は毎年の判断になります。
実態が変われば結論も変わる、という前提で見直してください。
迷ったときは、実態を書き出してから相談してください。
その整理そのものが、判断の根拠になります。
まとめ:区分は「実態」で決まり、税額に大きく影響する
事業所得か雑所得かで変わる税額の差を、判断基準から数字の比較まで順番に整理してきました。
ポイントは2つです。区分は収入額だけでなく継続性・記帳の実態などから総合的に判断されること、そして事業所得で青色申告の要件を満たせば、課税対象になる所得を大きく抑えられる可能性があることです。
副業を長く続けていきたいなら、早いうちから継続的な記帳の習慣をつけておくことが、将来の選択肢を広げることにつながります。
制度の細かい取り扱いは、最終的に国税庁の情報や税務署への確認を通して行ってください。
次の一歩は1つだけです。まずは今月の副業の収入と経費を、帳簿の形で1か月分だけ記録してみてください。
事業所得としての記帳を整えたい人は、まず無料プランから試してみるのも一つの方法です。
