若手Webマーケター/SNSグロースプランナーの早瀬優人です。
副業を自宅でしていると、家賃や通信費、電気代のように、プライベートと業務の両方で使っている支出が出てきます。
これをどこまで経費にしていいのか、実際のところここでつまずく人が多いです。僕自身も最初は感覚だけで割合を決めていて、あとから根拠を聞かれたら答えられないなと不安になった経験があります。
この記事では、家事按分の考え方から割合の決め方、そして税務署に説明できる根拠の残し方までを順番に整理します。経費の全体像は副業の経費にできるもの・できないものの線引きも参考にしてください。
按分を始める前にそろえるもの
計算を始める前に、手元に用意しておきたいものがあります。
- 賃貸契約書または間取り図……面積で按分する場合の根拠になります
- 直近数か月の請求書……電気代や通信費の実額を確認します
- 作業時間の記録……1〜2週間分でも根拠になります
3つ目は、これから記録を取る形でも構いません。
過去にさかのぼって作れないものなので、按分を始めると決めた時点から記録を取り始めてください。
この3つがそろっていれば、割合を出す作業自体は難しくありません。
家事按分とは何か
家事按分とは、プライベートと業務の両方に使っている支出を、業務で使った割合分だけ経費にする考え方です。
家賃や光熱費、通信費のように、生活と仕事の両方にまたがる支出は、全額をそのまま経費にすることはできません。ここが出発点です。
「業務で使っている部分だけ」を切り分けて計上するのが、家事按分の基本ルールです。
なぜ全額を経費にできないのか
家賃や光熱費は、副業をしていなくても生活のために発生する費用です。
このうち、業務のために追加でかかっている部分だけが経費として認められる、という考え方になります。
全額を経費にしてしまうと、生活費まで経費として申告することになり、税務上のリスクが高まります。
按分の対象になりやすい費目
按分が必要になるのは、家賃と通信費だけではありません。
実際に相談を受けることが多いのは、次のような費目です。
- 電気代……作業時間や使用する機器から考えます
- 自動車関連……走行距離や使用日数が根拠になります
- スマートフォンの通信費……通話や通信の用途で分けます
- 各種サブスクリプション……業務専用なら全額、兼用なら按分の対象です
費目ごとに、何を基準に分けるかを先に決めておいてください。
同じ家の中の支出でも、面積で分けるものと時間で分けるものがあります。
基準がその都度変わると、後から説明しにくくなります。
按分割合をどう決めるか(計算例つき)
按分の割合に、法律で定められた一律の数字はありません。ここが最初の壁です。
実態に即して、合理的に説明できる基準で自分で決める必要があります。順番として、まず何を基準にするか(面積か時間か)を決め、次にその基準で計算する、という流れになります。
ここでは代表的な2つの支出を例に、具体的な計算のイメージを示します。
家賃・自宅の一部を仕事に使っている場合
自宅の一室を仕事専用のスペースとして使っているなら、床面積の割合を基準にする方法が一般的です。
たとえば、専有面積60平方メートルの部屋のうち、仕事専用の1部屋(6畳・約10平方メートル)を使っているなら、面積比はおよそ17%になります。
家賃が月10万円であれば、17%を掛けた約1万7千円が、その月に経費として計上できる目安の金額です。
仕事専用の部屋がなく、リビングなどで作業している場合は、1日の作業時間が生活時間全体に占める割合で按分する考え方もあります。
通信費・電気代の按分
スマホやネット回線の通信費は、業務で使っている時間の割合で按分するのが一般的です。
このとき大切なのは、割合を出すための「母数」を先に決めて、最後まで同じ母数で計算することです。順番を逆にすると、あとから数字がぶれます。
たとえば、1日のうち睡眠を除いた起きている時間を16時間と決め、そのうち平日は4時間を副業に使い、休日は使わないとします。
この場合、1週間の起きている時間は16時間×7日で112時間、副業に使った時間は4時間×5日で20時間です。
20時間÷112時間で、按分割合はおよそ18%と計算できます。通信費が月5,000円なら、経費にできる目安は約900円です。
電気代も同じように、仕事で使うパソコンや照明の使用時間をもとに、同じ母数で割合を見積もります。
正確な数字を出すのが難しい場合でも、どの母数から何時間を業務としたのかを説明できるようにしておくことが大切です。
按分割合は高すぎないかを一度見直す
「経費を増やしたいから」という理由で、実態よりも高い割合を設定するのは避けてください。
按分割合は「多く見せる」ためではなく、「実態を正確に反映する」ために決めるものです。
自分の生活と仕事の時間配分を振り返って、無理のない割合になっているか確認してみてください。
按分の計算や記帳は、慣れないうちは特に手間に感じやすい作業です。
クラウド会計ソフトには家事按分の入力機能が用意されているものもあり、計算の手間を減らせます。
働き方が変わったときの見直し
一度決めた按分割合も、働き方が変われば実態と合わなくなります。
見直すきっかけになるのは、次のような変化です。
- 作業時間が増えた・減った……時間で按分している場合、直接影響します
- 使う部屋や場所が変わった……面積で按分している場合に関わります
- 引っ越した……家賃も間取りも変わるため、計算をやり直す必要があります
- 副業から専業になった、あるいはその逆……実態が大きく変わります
変わったときは、その時点で新しい根拠をメモに残してください。
年の途中で変わった場合、どの時期にどの割合を使ったかが分かる形にしておくと説明できます。
具体的な計算方法や割合の妥当性は個別の事情で変わるため、判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください。
按分割合が否認されやすいパターン
実際のところ、税務署から指摘を受けやすい按分の仕方には、いくつか共通する特徴があります。先に知っておくと避けられます。
割合が高すぎて実態と合わない
ワンルームの自宅全体を「8割が仕事スペース」のように計上すると、寝る場所や生活空間まで含めて説明がつかなくなります。
床面積や使用時間から逆算して、無理のない割合かどうかを一度チェックしてください。
収入に対して経費の割合が極端に大きい
副業の収入がそれほど大きくないのに、家賃や通信費の大部分を経費にしていると、収支のバランスから不自然さを指摘されることがあります。
面積や時間の根拠が何も残っていない
按分割合だけを決めていて、その数字をどう算出したかの記録がまったくない状態は、指摘を受けたときに反論できません。ここでつまずく人が多いです。
数字そのものより、算出の過程を残しているかどうかが問われます。
説明を求められる場面
根拠を残す意味を、具体的な場面で考えてみます。
説明を求められるのは、たいてい申告から時間が経ってからです。
そのとき、記憶だけで答えようとすると、当時の判断を再現できません。
「なぜこの割合にしたのか」を、数字と一緒に説明できる状態が求められます。
逆に、根拠のメモが残っていれば、割合そのものが多少ずれていても、考え方は伝えられます。
説明できないまま高い割合を使っているほうが、問題になりやすい部分です。
個別の判断については、税務署や税理士に確認してください。
税務署に説明できる根拠の残し方
按分割合は、決めた数字だけでなく、その根拠を残しておくことが重要です。ここが分かれ目です。
計算根拠をメモとして残す
床面積を基準にしたなら、部屋の面積と家全体の面積をメモしておいてください。
使用時間を基準にしたなら、平日・休日それぞれの作業時間の目安を記録しておくと安心です。
あとから聞かれたときに、感覚ではなく数字で答えられる状態にしておくことがポイントです。
一度決めた割合は継続して使う
按分割合を年によってころころ変えると、根拠のなさを疑われやすくなります。
働き方や住まいが大きく変わったタイミング以外は、同じ割合を継続して使うようにしてください。
変更する場合は、なぜ割合が変わったのかも合わせてメモしておくと説明しやすくなります。
白色申告と青色申告で求められる記帳の重さが違う
白色申告でも家事按分は必要ですが、簡易な帳簿でも申告できるため、記録の厳密さはやや緩やかです。
一方、青色申告で55万円・65万円の特別控除を狙う場合は、複式簿記による帳簿づけが前提になるため、按分の根拠もより丁寧に残しておく必要があります。
なお、複式簿記で記帳して期限内に申告すると55万円の控除が受けられ、さらにe-Taxでの電子申告または優良な電子帳簿の保存を満たすと65万円になります。要件の詳細は国税庁のNo.2072 青色申告特別控除で確認できます。
白色申告・青色申告どちらを選ぶかの考え方は副業とフリーランスの確定申告、白色申告と青色申告はどちらを選ぶべきかで解説しています。
記録を残すタイミング
根拠のメモは、後からまとめて作ろうとすると実態とずれます。
思い出しながら書くことになるためです。
おすすめしているのは、按分の割合を決めたその日に書いてしまうことです。
書く内容は、計算に使った数字と、その数字をどう測ったかの2つで足ります。
面積なら間取り図に印を付けたもの、時間なら1〜2週間の記録が根拠になります。
写真やスクリーンショットでも構いません。
大事なのは、後から自分で説明を再現できる状態にしておくことです。
按分しない選択もあります
金額が小さい費目まで按分すると、作業量に見合わないことがあります。
その場合、経費に計上しないという判断も選択肢です。
計上しなければ、根拠を示す必要もありません。
手間と金額を並べて、割に合うかどうかで決めてください。
金額の大きい費目に絞って丁寧に根拠を残すほうが、全体としては安全な形になります。
按分の考え方は他の費目にも使えます
ここで扱った考え方は、家賃や通信費に限りません。
プライベートと兼用しているものは、すべて同じ枠組みで考えられます。
実態を測れる基準を選び、その基準で割合を出し、根拠を残す。この3つは変わりません。
基準として使えるのは、面積・時間・数量・走行距離といった、後から確認できるものです。
感覚で「だいたい半分」と決めるのは避けてください。
半分という結果自体は同じでも、根拠があるかどうかで説明できる範囲が変わります。
まとめ:家事按分は「実態」と「説明できる根拠」で決める
家事按分の考え方から割合の決め方、根拠の残し方までを順番に整理してきました。
ポイントは2つです。プライベートと業務が混ざる支出は全額ではなく実態に応じた割合で按分すること、そしてその割合をどう決めたかを記録として残しておくことです。
按分割合に絶対の正解はありませんが、「なぜその割合にしたか」を説明できることが、税務署に対する最大の備えになります。
家事関連費の考え方は国税庁のNo.2210 必要経費の知識にも示されています。制度の細かい取り扱いは変わることがあるため、最終的な判断は国税庁の情報や税務署への確認を通して行ってください。
次の一歩は1つだけです。まずは自宅の面積か1日の作業時間か、どちらを按分の基準にするかを決めて、その数字をメモに残してみてください。
家事按分を含めた記帳をまとめて管理したい人は、無料プランから試してみるのも一つの方法です。
