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見積もりの出し方と、値下げ交渉への答え方

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若手Webマーケター/SNSグロースプランナーの早瀬優人です。

見積もりを出すとき、いくらと書けばいいのか分からずに手が止まる。独立して間もない時期は、ほぼ全員がここで詰まります。

では、何を基準に決めればいいのか。僕は最初、他の人の単価を検索してそれらしい数字を書いていましたが、その出し方だと値下げを言われたときに根拠を持って答えられませんでした。

この記事では、見積もりを積み上げで作る手順と、値下げ交渉への答え方を、実務の順番で整理していきます。

初めての相手に出すとき

継続の相手と、初めての相手では、見積もりの出し方を変えたほうが通ります。

初めての相手には、金額だけでなく、その内訳と前提を添えてください。

内訳といっても細かく割る必要はありません。工程を3〜5つに分けて、それぞれの想定時間を示す程度で足ります。

前提として書いておきたいのは、含まないものと、修正の回数です。

含まないものを書いておくと、後から追加の依頼が来たときに追加費用の相談がしやすくなります。

修正回数に上限を書いておくと、際限なく続く事態を避けられます。

もうひとつ、有効期限を入れておいてください。

数か月前の見積もりで発注が来ると、こちらの状況が変わっていることがあります。

見積もりを出す前の準備

金額を決める前に、確認しておくことがあります。ここを飛ばすと後から必ず戻ってきます。

作業の範囲を確定させる

見積もりが崩れる原因は、単価の設定ではなく範囲の曖昧さです。

「サイトを1本」と言われても、原稿はこちらが書くのか、画像は用意されるのか、公開作業まで含むのかで、かかる時間は何倍も変わります。

見積もりは金額を答える作業ではなく、範囲を確定させる作業です。

確認する5点

順番として、次の5つを先に聞いてください。

  • 成果物の点数と形式(何を何点、どの形式で納品するか)
  • 素材の提供有無(原稿・画像・データはどちらが用意するか)
  • 修正の想定回数
  • 納期と、途中の確認タイミング
  • 使用範囲(自社サイトだけか、広告や印刷物にも使うか)

ここでつまずく人が多いのですが、質問することで印象が悪くなるのを心配しなくて大丈夫です。実務では、詳しく聞いてくる相手のほうが信頼されます。

見積もりが通らなかったときの振り返り

出した見積もりが通らないことは、当然あります。

そのとき、金額が高かったと結論づける前に確認したい点があります。

  • 範囲が伝わっていたか……何が含まれるか不明確だと、高く見えます
  • 相手の予算感を先に確認していたか……前提が違えば、金額の議論になりません
  • 比較対象がいたか……相見積もりなら、条件の書き方で差がつきます
  • 返答までの時間はどうだったか……遅いと、それだけで選ばれないことがあります

金額以外の要因で通らないケースは、実際に多いです。

通らなかった案件は、理由を聞ける関係なら聞いてみてください。

次の見積もりの精度が上がります。

適正価格を積み上げで作る

ここがこの記事の中心です。相場を調べる前に、自分の数字を持ってください。

まず自分の時間単価を出す

計算は単純で、必要な売上を年間の稼働可能時間で割ります。

ここでつまずく人が多いのですが、分子に置くのは会社員時代の年収ではなく、「生活に必要な額 + 税金と社会保険料 + 事業の経費」です。

会社員のときは社会保険料の半分を会社が負担し、税金も給与から引かれた後の金額を受け取っていました。独立するとこれらを自分で払うため、同じ手取りを保つには必要な売上のほうが大きくなります。

仮に必要な売上を500万円、年間の稼働可能時間を1,500時間とすると、時間単価はおよそ3,300円です。

そして分母のほうにも注意点があります。稼働可能時間は、営業・経理・学習を除いた、実際に受注作業へ充てられる時間だけで数えてください。

ここに準備時間まで入れてしまうと、単価が実態より低く出ます。

次に工程別の想定時間を出す

案件を工程に分けて、それぞれ何時間かかるかを見積もります。

記事執筆なら、構成づくり・情報収集・執筆・推敲・修正対応、といった分け方です。

この時間に時間単価を掛けたものが、その案件の下限になります。ここを下回る金額で受けると、働くほど目標から遠ざかります。

実費と余白を足す

最後に、素材の購入費や交通費といった実費を足します。

さらに、想定時間の1〜2割を余白として乗せておくと、予定外の作業が入っても赤字になりません。

金額の目安は分野や経験によって大きく変わるため、この計算は「相場と比べるための自分の基準」として使ってください。

相場は後から見る

自分の数字を出したうえで、初めて相場と照らします。

相場のほうが高ければ引き上げる余地があり、相場のほうが低ければ、工程を減らすか対象の案件を変えるかの判断になります。

相手が予算を先に言ってきた場合

見積もりを出す前に「予算は〇円です」と提示されることがあります。

このとき、その金額で受けるかどうかを即答しないでください。

先にやることは、その予算で実現できる範囲を提示することです。

「その金額であれば、この範囲までを想定しています」と条件を返します。

範囲を示すと、相手は予算を上げるか、範囲を狭めるかを選べます。

ここで金額だけを議論すると、条件が曖昧なまま数字を削ることになります。

提示された予算が明らかに合わない場合も、断る前に一度この形で返してみてください。

相手が範囲を誤解していただけ、ということは実際にあります。

値下げ交渉への答え方

ここが実務でいちばん困る場面です。答え方には型があります。

値段ではなく、条件を動かす

「もう少し安くなりませんか」と言われたとき、金額をそのまま下げると、次回以降その金額が基準になります。

動かすのは値段ではなく、次の3つです。範囲を減らす、納期を延ばす、修正回数を減らす。

この3択に置き換えると、値引きではなく条件の調整になります。

実際の返し方

言い方の例を挙げておきます。

  • 範囲を減らす……「ご予算に合わせるなら、画像の作成を外して原稿のみにする形はいかがでしょうか」
  • 納期を延ばす……「納期を2週間いただければ、他の案件と並行できるのでその金額で対応できます」
  • 修正回数を減らす……「修正を1回までとさせていただければ、ご提示の金額で調整できます」

どれも「できません」ではなく「この条件ならできます」という形になっているのが要点です。

それでも合わないときは断る

3択を提示しても折り合わない場合は、受けないという判断をします。

安く受けた案件で時間が埋まると、その間に来た別の依頼を受けられなくなることがあります。断り方の型はフリーランスが仕事を断るときの伝え方にまとめました。

継続案件の単価を上げたいとき

新規より難しいのが、続いている案件の単価改定です。

いきなり値上げを伝えると、関係が悪くなることがあります。

僕が使っている手順は3つです。

まず、改定を伝える時期を選びます。契約更新のタイミングか、期の変わり目が自然です。

次に、根拠を用意します。作業範囲が増えている、対応時間が延びている、といった変化を具体的に示します。

「相場が上がったから」より、この案件で実際に増えた工数のほうが伝わります。

最後に、猶予を持って伝えます。「次回の更新から」と先の話にすると、相手も調整できます。

それでも難しい場合は、金額ではなく範囲を戻す相談に切り替えてください。

相見積もりになっている場合

複数の相手に見積もりを依頼していると伝えられることがあります。

このとき、金額だけで比べられていると考えないでください。

発注する側が見ているのは、金額のほかに次のような点です。

  • 範囲が明確か……含まれるものと含まれないものが書いてあるか
  • 納期が現実的か……極端に短い提示は、かえって不安を与えます
  • 連絡の速さと丁寧さ……見積もりを出すまでのやり取りも見られています

安さで勝とうとすると、次の案件も同じ基準で判断されます。

条件を明確にして、判断材料をそろえて出す。これが結果的に選ばれる形になります。

知っておきたい前提

交渉に臨む前に、押さえておくと立ち位置が変わる点があります。

買いたたきは禁止されている

フリーランス法では、1か月以上の業務委託について、著しく低い報酬を不当に定めること(買いたたき)が禁止行為に含まれています。

あわせて、いったん決めた報酬を後から一方的に減額することも禁じられています。制度の内容は公正取引委員会のフリーランス法特設ページで確認できます。

すべての値下げ交渉が違法だという話ではありません。ただ、交渉は対等な立場で行うものだという前提が法律の側にもあるということです。

見積書に有効期限を入れる

細かい点ですが、実務では効きます。

「本見積書の有効期限は発行日から30日」と入れておくと、半年後に同じ金額で発注されて困る事態を防げます。

合意した条件は文字で残す

交渉で条件を変えた場合、変更後の内容をメールで送って確認を取ってください。

ここを口頭のままにすると、修正回数を減らした約束が忘れられます。契約条件の確認は業務委託契約書で必ず確認する5項目を参照してください。

単価を下げずに受ける工夫

金額を動かさずに調整する方法を、いくつか挙げておきます。

  • 納期を延ばす……こちらの稼働に余裕が生まれます
  • 修正回数を減らす……工数の上限が読めます
  • 素材や情報を相手に用意してもらう……こちらの作業が減ります
  • 継続契約にする……単発より1件あたりの負担が下がります

4つ目は、双方にとって利点があります。

相手は毎回の発注の手間が減り、こちらは案件を探す時間が減ります。

単価の話で行き詰まったときは、この形を提案してみてください。

時間単価を定期的に見直す

一度出した時間単価も、そのままにしないでください。

経験が増えれば、同じ作業にかかる時間は短くなります。

同じ単価のまま速くなると、実質的な報酬は上がります。

一方で、経費や必要な収入が変われば、単価そのものを見直す必要が出てきます。

年に1回、確定申告の時期に合わせて計算し直すのがおすすめです。

その年の実績が数字で出ているので、根拠のある単価を作れます。

見直した結果を、すぐに全案件へ適用する必要はありません。

新規の案件から反映していけば、無理がありません。

断る判断も、見積もりの一部です

条件を動かしても合わない案件は、受けないほうがよい場合があります。

無理な条件で受けると、他の案件にも影響が出ます。

見積もりは、受けるための手続きであると同時に、受けるかどうかを判断する材料でもあります。

積み上げで金額を出す意味は、ここにもあります。

感覚ではなく数字で判断できると、断るときにも迷いません。

見積もりを出したあとの記録

出した見積もりは、結果と一緒に残しておいてください。

案件名、金額、通ったか通らなかったか、実際にかかった時間。

実績と見積もりを並べておくと、次の精度が上がります。

とくに、通った案件で想定より時間がかかったものは要注意です。

同じ条件で受け続けると、実質の時間単価が下がっていきます。

年に一度、この記録を見返す時間を取ってください。

まとめ:金額ではなく、条件で答える

見積もりの出し方と、値下げ交渉への答え方を整理してきました。

見積もりは相場ではなく、時間単価と工程別の想定時間から積み上げる。値下げを言われたら、金額ではなく範囲・納期・修正回数の3つを動かす。

この2つが軸です。

根拠のある金額は、交渉されても説明できます。説明できなくなるのは、なんとなく決めた金額のほうです。

直近に受けた案件の報酬を、実際にかかった時間で割ってみてください。その数字が自分の時間単価を上回っているかどうかが、次の見積もりの出発点になります。