若手Webマーケター/SNSグロースプランナーの早瀬優人です。
受けたくない案件の相談が来たのに、断る文面が思いつかなくて返信を3日放置してしまう。独立して間もない時期に、これをやったことがある人は多いと思います。
僕も同じで、断ることで次の依頼が来なくなるのが怖くて、返事を先延ばしにしていました。実際のところ、関係が悪くなるのは断ったからではなく、返事が遅いからです。
この記事では、断れないと何が起きるのかを整理したうえで、伝え方の型と実際の文面を見ていきます。
断れないと起きる問題
まず、受け続けることの副作用から確認します。
受けた案件の質が落ちる
抱えられる量には上限があるので、詰め込めばどこかにしわ寄せが行きます。
結果として、本来なら良い仕事ができたはずの案件まで納期ぎりぎりになり、全体の評価が下がります。
条件の基準が下がる
断らないことが続くと、相手の側に「この人はこの条件で受ける」という前提ができます。
一度受けた条件は、次の案件の出発点になります。断らないという選択は、将来の条件をその場で決めてしまうことでもあります。
返事を遅らせるほうが印象が悪い
ここでつまずく人が多いのですが、断ること自体より、返事がないことのほうが相手を困らせます。
発注する側は、断られたら別の人を探さなければなりません。3日放置されると、その3日分だけ相手の予定が遅れます。
返信のタイミングをどう決めるか
即答で伝える、と書きましたが、その場で判断できない依頼もあります。
その場合は、判断を保留すること自体を伝えてください。
「明日中にお返事します」と一言返すだけで、相手は待てます。
返事がないまま数日経つのが、いちばん相手に負担をかける形です。
保留の期限は、24時間以内を目安にしています。
それ以上かかる場合は、何を確認しているのかを添えてください。
「稼働状況を確認していますので、〇日までにご連絡します」といった形です。
先に期限を切っておくと、自分の側でも判断を先延ばしにしなくなります。
断るときに使う言葉の選び方
同じ内容でも、言葉の選び方で受け取られ方が変わります。
避けたいのは、曖昧な表現です。
「難しいかもしれません」「厳しそうです」と濁すと、相手は待ってしまいます。
受けられないなら、受けられないと明確に伝えてください。
そのうえで、稼働の状況という事実で理由を添えます。
「今月は既存の案件で埋まっており、お受けできません」
この形なら、断定していても角が立ちません。
相手も、次に声をかける時期の判断ができます。
断り方の型:3ステップ
順番として、この3つを守れば文面はほぼ自動的に決まります。
ステップ1:即答で結論を伝える
受けられないと判断したら、その日のうちに返信します。
文面の最初に結論を置いてください。前置きから入ると、相手は最後まで読まないと判断できません。
ステップ2:理由は簡潔に、稼働で説明する
理由は1文で十分です。そして、能力や興味ではなく、稼働状況で説明します。
「私には難しくて」と書くと、相手はこの人に依頼できる範囲を狭く見積もります。「今期はスケジュールが埋まっていて」であれば、時期が変われば依頼できると伝わります。
条件が合わない場合も同じで、金額そのものを否定せず「その予算だと、この範囲までになります」と置き換えます。伝え方は見積もりの出し方と、値下げ交渉への答え方で整理しています。
ステップ3:代替案を1つ添える
断りっぱなしにせず、相手が次に動ける材料を渡します。
代替案は次のどれかで足ります。
- 時期をずらせば対応できる(いつからなら空くか)
- 範囲を縮めれば対応できる(どこまでならできるか)
- 知り合いを紹介できる(心当たりがある場合のみ)
ここが入るだけで、断りの連絡が相談の継続に変わります。
相手との関係によって、文面を調整する
3つのステップは共通ですが、文面の温度は相手によって変えています。
- 初めての相手……丁寧に。ただし理由は簡潔にとどめます
- 継続の相手……関係があるぶん、次に受けられる時期を具体的に示します
- 紹介経由の依頼……紹介者への配慮を一言添えると、角が立ちません
3つ目は忘れやすい部分です。
紹介してくれた方に、断った旨を先に伝えておくと関係が保てます。
依頼元だけに返して終わりにすると、紹介者が後から知ることになります。
実際の文例
型に沿った文面を3パターン挙げておきます。そのまま使える形にしてあります。
スケジュールが埋まっている場合
「ご相談ありがとうございます。大変申し訳ありませんが、今回はスケジュールの都合でお受けできません。
現在、〇月中旬まで別案件が入っており、ご希望の納期に間に合わせられない見込みです。〇月下旬以降であれば対応できますので、時期の調整が可能でしたらあらためてご相談ください。」
条件が合わない場合
「ご相談ありがとうございます。いただいた内容を確認しました。
ご提示の予算ですと、〇〇までの範囲であれば対応が可能です。ご希望の内容をすべて含める場合は〇〇円ほど必要になりますので、範囲を絞るか、ご予算を調整いただく形でご検討いただけますでしょうか。」
内容が専門外の場合
「ご相談ありがとうございます。今回の内容は私の対応範囲から外れるため、お受けできません。
〇〇を専門にしている知人がおりますので、よろしければご紹介できます。必要でしたらお知らせください。」
断りやすさは、依頼元の数で決まる
文面の技術より前に、構造の話をしておきます。
依頼元が1社に偏っていると、条件が合わなくても断れなくなります。断れないのは性格の問題ではなく、代わりがない状態に置かれているからです。
断る力の実体は、他に受けられる依頼があるかどうかです。
いま1社からの依頼が売上の大半を占めているなら、断り方を覚えるより先に、依頼元をもう1つ増やすほうが効きます。
仕事の取り方はフリーランスはどうやって仕事を取っている?初心者が最初に押さえる取り方の全体像で整理しています。
断る前に、条件の相談ができないか考える
断る技術の話をしてきましたが、その前に一段あります。
受けられない理由が納期や範囲にある場合、条件を動かせば受けられることがあります。
確認してみる価値があるのは次の3つです。
- 納期を後ろにずらせないか……相手に余裕があることは少なくありません
- 範囲を狭められないか……一部だけ引き受ける形が可能な場合があります
- 時期をずらして次回に回せないか……継続的な依頼なら現実的です
「今回は難しいのですが、〇〇であれば対応できます」と返すだけで、選択肢が相手に渡ります。
これは断りではなく提案なので、関係が途切れにくくなります。
もちろん、条件を動かしても受けられない場合は、素直に断るほうが早いです。
書かないほうがいいこと
文面で印象を落とすパターンがいくつかあります。
謝りすぎる
謝罪を重ねると、かえって重い雰囲気になります。
「申し訳ありません」は1回で十分です。断ることは契約違反ではないので、過剰に低い姿勢を取る必要はありません。
嘘の理由を作る
存在しない案件を理由にすると、後で辻褄が合わなくなります。
特に、SNSで活動を公開している場合は見られています。稼働状況を正直に、ただし詳細まで説明せずに伝えるのが安全です。
相手の依頼内容を否定する
「その予算では厳しいと思います」「その納期は現実的ではありません」といった書き方は、相手の準備そのものを否定する形になります。
同じ内容でも「この条件であれば対応できます」と自分の側の話として書けば、角が立ちません。
断ったあとに紹介できる相手がいる場合
代替案として、他の人を紹介する方法があります。
ただし、これは慎重にやってください。
紹介した相手の仕事に問題があった場合、紹介したこちらの信用にも関わります。
僕が紹介するのは、実際に仕事を見たことがある人だけにしています。
紹介する前に、相手方にも受けられる状況か確認しておいてください。
本人の了承なく名前を出すと、双方に迷惑がかかります。
紹介する場合は、こちらの関与範囲も明確にしておきます。
「知り合いをご紹介しますが、契約は直接お願いします」と伝えておけば、後から間に立たされることを避けられます。
断ることは、取引の対等性の一部
最後に、心理的な部分に触れておきます。
受ける・受けないを決められる関係が前提になっている
業務委託は、雇用とは違って対等な事業者同士の取引です。
フリーランス法でも、1か月以上の業務委託について、いったん決めた報酬を発注者が一方的に減額することや、不当な給付内容の変更ややり直しを求めることは禁止行為とされています(従業員を使用する発注者の場合)。
条件を一方的に押し付けられない関係が前提にあるということは、受注する側にも受けないという選択があるということです。
法律の枠組みは業務委託契約書で必ず確認する5項目で整理しています。
断った後の関係維持
断った相手との関係を続けたい場合は、次の2つをやっておくと自然につながります。
- 空きが出た時期に、こちらから一度連絡を入れる
- 紹介した相手がいる場合、その後どうなったかを聞く
断った直後ではなく、少し時間を置いてからのほうが受け取られ方が軽くなります。
もうひとつ、断った案件がどうなったかを気にかけておくと関係が続きます。
紹介した相手が引き受けたなら「その後いかがですか」と一度聞く、自分で対応できる時期が来たら「あの案件はもう終わりましたか」と触れる。それだけで、断ったことが会話の終点ではなくなります。
逆に、断った理由を後から取り繕う連絡は不要です。一度伝えた理由に補足を重ねるほど、印象は重くなります。
すべての安い案件を断るべきという話ではない
誤解のないように書いておくと、条件が良くない案件に価値がないわけではありません。
実績を作りたい時期や、その分野の経験を積みたい場合には、金額以外の理由で受ける判断もあります。判断の軸は人と時期によって変わるので、断るかどうかは目的から逆算してください。
断った案件を記録しておく
断った依頼は、記録に残しておくと後で使えます。
書くのは4つだけです。
依頼元、内容、断った理由、そのときの稼働状況。
半年ほどたまると、自分がどういう案件を断っているかの傾向が見えてきます。
特定の条件で繰り返し断っているなら、その条件を最初から提示しておけば、依頼の段階で絞れます。
逆に、稼働が理由で断り続けている場合は、受けられる量そのものを見直す時期かもしれません。
断ることを減らすには、断った記録を見るのが近道になります。
断ることに慣れるまで
最初のうちは、断ること自体に抵抗があると思います。
僕も独立した当初は、受けられない案件を無理に引き受けていました。
その結果、他の案件の質が落ちて、かえって迷惑をかけたことがあります。
断るのは、受けた仕事を守るための判断でもあります。
型があれば、迷う時間は短くなります。
まずは今回の3ステップで1件、返してみてください。
断る基準を先に決めておく
依頼が来てから考えると、その場の状況に流されます。
受ける条件を、事前に自分の中で決めておいてください。
最低単価、対応できる納期、扱わない分野。この3つで足ります。
基準があると、断るかどうかの判断が数秒で済みます。
迷う時間が減ると、返事も早くなります。
まとめ:早く、短く、代替案を1つ
仕事を断るときの伝え方を整理してきました。
型は3つで、即答で結論を伝える、理由は稼働で簡潔に、代替案を1つ添える。謝りすぎず、嘘の理由を作らず、相手の依頼内容そのものは否定しない。
関係が悪くなるのは断ったからではなく、返事が遅いからです。断る判断そのものより、返す速さのほうが印象を決めます。
保留にしたままの相談が手元にあるなら、今日のうちに3ステップの型で1通返してしまってください。返信の速さだけで、印象はかなり変わります。
