家計改善アドバイザーの真鍋みゆです。
お二人でご相談に来られたとき、最初に伺うのは「いまはどうやって分けていますか」という質問です。
すると、こういう答えが返ってくることがあります。「なんとなく、家賃は夫で食費は私で……あとは、そのとき出せるほうが」。
これが悪いとは申しません。ただ、この形は貯蓄が進みにくく、そして揉めやすいんです。
決め方には選択肢があります。並べてみますね。
「なんとなく」が続くと起きること
まず、決めていない状態で何が起きるかを整理します。
世帯全体がいくら残っているか分からない
それぞれが自分の口座で管理していると、家計の全体像が誰にも見えません。
お互いに「相手が貯めているだろう」と思っていて、実はどちらも貯めていなかった。家計を見せていただくと、この形はかなりあります。
不公平感が静かにたまる
金額を決めていないと、その場で出せるほうが出すことになります。
出している側は「自分ばかり」と感じ、出していない側は「言われないから分からない」となる。どちらも悪くないのに、すれ違うんですよね。
収入が変わったときに崩れる
産休・育休、転職、時短勤務。収入のバランスが変わる場面は必ず来ます。
そのときに「なんとなく」のままだと、話し合いをゼロから始めることになります。
管理の形は4つあります
その前にひとつ。二人分を考える土台になるのは、お一人分の家計の組み方です。
家計簿が続かない人のための「記録しない家計管理」を先に読んでおくと、この先が入りやすくなります。
ここからが本題です。
どれが正解ということはありません。暮らし方によって合う形が違うので、並べてご紹介します。
パターン1:完全共同(すべて一緒にする)
二人の収入をすべて共通口座に入れて、そこから全部を支払う形です。
- 向いている……収入差が大きい、世帯として一体で考えたい、家計の全体像を常に共有したい
- 難しい点……個人の自由に使えるお金がなくなりやすい。お小遣いの額で揉めることがあります
この形を取る場合は、お互いの自由に使える枠を最初に決めておくと続きやすくなります。
パターン2:費目分担(項目ごとに分ける)
家賃は一方、食費と光熱費はもう一方、というように担当を決める形です。
- 向いている……お互いの収入や口座に立ち入りたくない、独立性を保ちたい
- 難しい点……担当していない費目が見えない。物価が上がると、変動費を担当する側の負担だけが増えます
いま食費や光熱費が上がっている時期なので、この形は定期的に配分を見直さないと片方に偏ります。
パターン3:一部共同(共通口座+各自の口座)
共通の生活費口座を作り、そこへ二人が決まった額を入れる。残りは各自で管理する形です。
- 向いている……共働きで収入が近い、ある程度の自由も残したい
- 難しい点……各自の貯蓄額が見えないため、世帯全体の貯蓄が把握しにくくなります
この形を選ぶなら、共通口座に貯蓄分も一緒に入れてしまうと、世帯の貯蓄が見える状態を保てます。
パターン4:一方が全額を管理する
収入を一方にまとめて、もう一方はお小遣いを受け取る形です。
- 向いている……片方が家計管理を得意としている、収入が主に一方にある
- 難しい点……管理する側の負担が大きく、されない側は家計の実態を知らないままになります
この形で気をつけたいのは、管理していない側が、家計の状況を年に1回でも一緒に見る機会を作ることです。何かあったときに動けなくなります。
どの形を選んでも決めておきたいこと
4つのどれを選ぶかに関わらず、先に決めておくと後で楽になることがあります。
- 共通の支出に何を含めるか……家賃、光熱費、食費まではすぐ決まりますが、日用品や外食で分かれやすい
- いくらから相談するか……1万円を超える買い物は声をかける、といった線引き
- 貯蓄の名義をどうするか……共通で持つのか、それぞれで持つのか
とくに2つ目は、決めておかないとお互いに気を遣い続けることになります。
金額の線を決めるのは、相手を縛るためではなく、線より下を自由にするためです。
この順番で伝えると、話が進みやすくなりますよ。
選ぶときの基準
4つのうちどれにするか。決め手になるのは、この3つくらいだと思っています。
収入の差はどれくらいか
差が大きいほど、完全共同か一部共同が向きます。費目分担は、収入が近い場合に成立しやすい形なんです。
一部共同にするなら、同額を出す方法だけでなく、手取りの比率で分ける方法もあります。
たとえば手取りが30万円と20万円なら、共通生活費を3対2で負担する考え方です。どちらが公平に感じるかは家庭によるので、金額と比率を一度並べて決めてください。
お互いの自由をどこまで残したいか
ここは価値観の話なので、正解がありません。
自由に使えるお金がゼロだと、隠れた支出が生まれやすくなります。金額の多い少ないより、あること自体が効くように感じています。
管理を誰がやるか
得意な人がやるのが合理的ですが、やらない側が「知らない」状態にならないようにしてください。よくあるのが、管理していた側が入院して、もう一方が引き落とし先すら分からなかったという場面なんです。
収入のバランスが変わったとき
いったん決めた形も、収入が変わると合わなくなります。
よくあるのが、産休や育休、時短勤務への切り替え、転職や独立といったタイミングです。
ここで多いのが、形はそのままにして、負担額だけを黙って調整してしまうことなんですよね。
金額だけ動かすと、不公平感が残りやすくなります。
おすすめしたいのは、負担額より先に「割合」を決め直す進め方です。
たとえば費目分担にしている場合、金額で分けていたものを収入比に切り替えます。
手取りが30万円と20万円なら、共通の支出を6対4で持つ、という形です。
この決め方なら、次に収入が変わったときも同じ計算で更新できます。
一時的に収入が下がる期間なら、期限を決めて元に戻す約束にしておくと、お互いに納得しやすくなります。
収入が下がった側が家事や育児を多く担っている場合は、そこも一緒に見てください。
お金だけで負担を測ると、話がこじれやすい部分です。
揉めやすい実務のこと
形が決まっても、細かいところで引っかかることがあります。よくあるものを挙げておきます。
児童手当の受け取り口座
児童手当の受給者は、自治体が世帯の状況を確認して決めます。振込先も受給者名義の口座となるため、希望する名義を自由に選べるとは限りません。
受け取った側の口座に貯まっていくので、世帯の貯蓄として扱うのか、子どもの教育費として別に取り分けるのかを決めておくと後が楽です。
所得制限の撤廃や支給対象年齢など、制度は変更されることがあります。申請や受給者の扱いは、こども家庭庁「児童手当制度のご案内」と、お住まいの自治体の案内で確認してください。
教育費の準備については教育費が本格化する前にやる家計の組み替えで扱っています。
扶養に入るかどうか
働き方を変えるときに出てくる論点です。
ここは制度が改正される部分でもあるので、最新の要件を確認したうえで判断してください。年収の壁については扶養内で副業する場合の年収の壁で整理しています。
名義をどうするか
家計用の口座を作る場合も、一般的な個人口座は夫婦のどちらか一方の名義で開設します。代理人カードや家族向けサービスの扱いは金融機関ごとに違うため、利用前に規約を確認してください。
生活費や教育費として必要な都度渡し、実際にその目的へ使うお金は、通常は贈与税の対象にならないとされています。
一方で、使わずに預金したお金や、資産形成を目的に一方の名義へ移したお金は同じ扱いとは限りません。国税庁「生活費や教育費に充てるために贈与を受けた場合」と贈与税がかかる場合を確認し、判断に迷う金額は税務署や税理士へ相談してください。
どちらかが管理を負担に感じたら
家計管理は、思っている以上に手間のかかる作業ですよね。
負担が偏っていると感じたら、形を変えて構いません。一度決めた方法を守り続ける必要はないんです。
決めるときの進め方
形が決まったあと、どう切り出すか。ここでつまずく方も多いので、少しだけ。
最初の20分は結論を出さない
初回は通帳を見せ合うことから始めず、生活費として認識している項目をそれぞれ紙に書きます。片方が正解を示す場にしないことが大切です。
次に、共通で払うもの・各自で払うもの・まだ決めないものの3つへ置きます。意見が割れた項目は「まだ決めない」に残して構いません。
その日は管理パターンの候補と、次に確認する日だけ決めます。収入、貯蓄、借入など共有が必要な情報は、目的と扱い方を合意してから確認するほうが話しやすくなります。
金額の話より先に、何のためかを揃える
いきなり分担額から入ると、交渉のようになってしまいます。
「何年後に、いくら貯まっている状態にしたいか」を先に合わせておくと、そこから逆算する話になります。
試用期間を3か月にする
選んだ形が合うかは、実際に回さないと分かりません。最初から恒久ルールにせず、3か月だけ試すと決めてください。
見直すのは、負担額の差、管理にかかった手間、世帯の貯蓄が見えたかの3点です。合わなければ金額だけ直すのか、別のパターンへ変えるのかを選びます。
年に1回、見直す日を決める
収入も支出も変わるので、決めた形は必ずずれてきます。
誕生月でも年度末でも構いませんので、見直す月を1つ決めてしまうと、不満がたまる前に調整できます。手順は家計の見直しを年1回やるためのチェックリストにまとめました。
緊急時に開ける情報を共有する
口座を共同で使っているつもりでも、名義人しかできない手続きがあります。暗証番号を紙に書いて渡すのではなく、金融機関名・支店名・引き落とし項目・問い合わせ先を二人が分かる場所に残してください。
公共料金、家賃、保険、学校関係など、止まると困る支払いだけでも一覧にします。半年に一度、一覧が古くなっていないか確かめると、管理している側だけが全体を知っている状態を避けられます。
完璧を目指さない
最初から全部を決めきる必要はありません。無理なく続けるなら、まずは共通口座を1つ作って、生活費だけをそこから出す。
それだけでも、見える範囲がずいぶん広がります。
話し合いが止まってしまったとき
途中で話が進まなくなることもあります。
そういうときは、たいてい前提が揃っていません。
片方が「今の生活を楽にしたい」と考え、もう片方が「将来に備えたい」と考えていると、同じ金額の話をしていても結論が合わないんですよね。
金額の話を一度止めて、何年後にどうなっていたいかを、それぞれ紙に書いてみてください。
言葉にしてみると、対立していたと思っていた部分が、実は優先順位の違いだけだったと分かることがあります。
それでも決まらないときは、無理にまとめず、暫定の形で3か月だけ回してみる。
実際に動かしてみると、想像で議論していたときより判断しやすくなります。
まとめ:形を選んで、名前をつける
今日ご紹介したのは、完全共同・費目分担・一部共同・一方が全額管理の4つです。
最初に決めるのは、共通で払う範囲、負担額の決め方、見直す日の3つだけで構いません。細かな例外は、3か月回してから足してください。
話し合いの記録は、責任を追及するためではなく、次の見直しを短くするために残します。
二人が読める場所へ置いてください。
どれが優れているということはなく、収入の差・自由をどこまで残したいか・誰が管理するか、この3つで決まります。そして、決めた形は年に1回見直す。
揉める原因は金額そのものより、決めていないことのほうが多いんです。名前のついた形にするだけで、話し合いがずっと楽になりますよ。
今度お二人で時間が取れるときに、「いまの形は4つのうちどれに近いか」を確かめるところから始めてみてください。どれにも当てはまらないなら、そこが出発点です。
