家計改善アドバイザーの真鍋みゆです。
「車を手放したほうがいいでしょうか」。固定費のご相談では、必ずと言っていいほど出てくる質問です。
私はここで、すぐには答えを出しません。
車の損得は、住んでいる場所と使う頻度でまったく変わるからです。都市部で週末しか乗らない方と、地方で毎日通勤に使う方では、答えが逆になります。
今日は、ご自身で計算できるように、費用の分け方と比べ方をお伝えしますね。
まず、維持費を全部並べます
「車の維持費」と一言で言っても、中身はバラバラですよね。分けて書き出すところから始めます。
毎年かかるもの
- 自動車税・軽自動車税……排気量や種別で決まります。毎年5月ごろ
- 任意保険……年齢・等級・補償内容で大きく変わります
- 駐車場代……月極なら12倍。持ち家で敷地内なら不要
数年ごとにかかるもの
- 車検……2年ごと(新車は初回3年)。法定費用に加えて整備の内容で変動
- タイヤ交換……数年に一度。降雪地ならスタッドレスの分も
- バッテリー、オイル、消耗品
車検時には検査や整備の費用だけでなく、自賠責保険料などの法定費用も発生します。自賠責保険はすべての自動車に加入が義務づけられる制度で、任意保険とは別です。
制度の概要は国土交通省「自賠責保険・共済とは」で確認できます。料率や税額は変わることがあるため、試算には手元の更新案内や見積書を使ってください。
使うたびにかかるもの
- 燃料代……走行距離に比例します
- 高速道路料金、コインパーキング代
見落とされやすいもの
そして、いちばん忘れられているのがこれです。
車両本体の代金を、使う年数で割った額。150万円の車に10年乗るなら、年15万円が毎年かかっていることになります。
買ったときに払い終えているので家計簿には出てきませんが、次の買い替えに向けて積んでおくべきお金なんです。ここを入れずに計算すると、実態より安く見えます。
なお、売却できる見込みがあるなら、その分は差し引いて計算してください。
ローン返済額と車両コストを混同しない
ローンがある場合、毎月の返済額は資金繰りを見るうえで必要です。ただし、車両代を使用年数で割った額と返済元本を両方足すと、同じ購入費を二重に数えてしまいます。
損益比較では「購入額から予想売却額を引き、使用年数で割った額」に、ローンの利息や手数料を加えます。毎月払えるかを見る表では、実際の返済額を別に置いてください。
年間の合計を出してみる
項目が並んだら、年額に直して合計します。
計算の例
あくまで一例として、数字を置いてみますね。
車両代(150万円 ÷ 10年) 150,000円 自動車税 30,000円 任意保険 60,000円 駐車場(月10,000円) 120,000円 車検(2年ごと10万円の半額) 50,000円 タイヤ・消耗品 30,000円 燃料代 80,000円 ──────────────────────── 年間合計 520,000円 → 月あたり 約43,000円
この金額は、車種・年式・地域・保険の条件でまったく変わります。ご自身の数字に置き換えて計算してみてください。
税額や保険料の平均を示すものでも、現在の料金水準を保証するものでもありません。明細がない項目は、販売店や保険会社から見積もりを取り、計算日も一緒に残します。
駐車場が不要なら、それだけで年12万円下がります。
実際に書き出すと驚かれます
家計を見せていただくと、車の費用は「ガソリン代と駐車場代」だけで認識されていることが多いんです。
よくあるのが、税金も車検も保険も出ていく月がバラバラなので、合計として意識されないまま何年も過ぎている、という形です。
年によって金額が変わる部分
車の費用は毎年同じではありません。ここが見積もりを外す原因になります。
大きく動くのは、車検のある年と、任意保険の等級が変わったときです。
任意保険は無事故で経過すると等級が上がって保険料が下がり、事故で保険を使うと下がって上がります。
小さな損害で保険を使うと、翌年以降の増額分が受け取る額を上回ることがあります。
修理費が自己負担で払える範囲なら、使わずに済ませる判断も現実的です。
この判断は保険会社に試算を依頼できるので、事故のときは金額を出してもらってから決めてください。
タイヤやバッテリーのような消耗品も、数年に一度まとまって出ていきます。
年間の合計を出すときは、こうした数年ごとの費用を年数で割って足しておくと、実態に近づきますよ。
持たない場合のコストも出す
ここが大事なところです。車をやめれば費用がゼロになるわけではありません。
代わりに使うもの
- 公共交通……通勤定期、日常の移動
- カーシェア……月会費+利用ごとの時間料金・距離料金
- レンタカー……旅行や帰省など、まとまった利用
- タクシー……雨の日、荷物が多いとき、夜間
- 配送料……買い物を運べない分、ネット注文が増えます
最後の2つが抜けやすいところです。車がないと、その分をお金で埋める場面が出てきます。
こちらも年間で出す
カーシェア月会費 12,000円 カーシェア利用(月2回×3時間) 60,000円 レンタカー(年3回) 45,000円 タクシー(月2回) 48,000円 ネットスーパーの配送料 12,000円 ──────────────────────── 年間合計 177,000円 → 月あたり 約15,000円
この例だと、車を持つ方が年34万円ほど高い計算になります。ただし、これは使う頻度が少ない場合の数字です。
カーシェアやレンタカーの料金は、時間帯・距離・補償・予約条件で変わります。比較する日は、実際に使える事業者の料金表と、よく使う時間帯の見積もりを保存してください。
分岐点はどこにあるか
2つを並べたところで、何が結果を分けるのかを見ていきます。
決め手は「使う頻度」です
車の費用は、乗っても乗らなくてもかかる部分が大きいのが特徴です。税金も保険も駐車場も、走行距離に関係なくかかります。
一方、カーシェアやタクシーは使った分だけ。つまり、使う回数が増えるほど代替手段の側の金額が伸び、差が縮まっていきます。
比べるときは、車両代・税金・保険・駐車場などの固定費と、燃料・高速料金などの変動費を分けてください。
車を持つ年額 = 固定費 + 1kmあたりの変動費 × 年間走行距離 代替手段の年額 = 基本料 + 利用回数ごとの料金 + 交通・配送費
両方へ実際の数字を入れると、どの利用頻度で金額が入れ替わるかを探せます。
上の例でカーシェアの利用を月2回から月8回に増やすと、代替手段の側は年357,000円まで上がります。車を持つ場合との差は16万円ほどまで縮まる計算です。
毎日乗る使い方になれば、順序が入れ替わることもあります。
居住地で前提が変わる
- 公共交通が充実している地域……代替が効きやすく、持たない選択が現実的になります
- 駅やバス停まで遠い地域……そもそも代替手段が足りません。金額の比較以前の問題です
- 降雪地……冬の移動手段として、金額では測れない必要性があります
金額で測れない要素もあります
ここは正直に書いておきます。
小さいお子さんがいる、介護で送迎が必要、仕事で使う、体調に不安がある。こうした事情は、金額の計算だけで判断すべきではありません。
計算はあくまで材料のひとつです。安いほうを選ぶのが正解、という話ではないんですよね。
持ち続けたほうがいい場合
ここまで費用の話を続けてきましたが、金額だけで決めないほうがいい場面もあります。
私が「そのまま持っていてください」とお伝えするのは、次のような場合です。
- 通勤に使っていて、公共交通で代替すると勤務時間に影響が出る
- 介護や通院の送迎があり、時間帯が読めない
- 小さなお子さんがいて、急な移動が想定される
- 公共交通の本数が少なく、代替手段が実質的にない
この場合、車の維持費は移動の費用ではなく、暮らしを回すための費用に近くなります。
年間の合計額だけを見ると高く感じますが、代わりに失うものが大きいんですよね。
それでも負担を軽くしたい場合は、手放す以外の選択肢から先に検討してください。
保険の見直し、車格の見直し、駐車場の契約先の見直しといった順です。
持ち続ける前提でも、削れる部分は残っていることが多いです。
手放す前に検討できること
「高いのは分かったけれど、手放すのは難しい」という場合の話もしておきます。
先に1か月だけ代替手段を試す
売却してから困ると戻す費用が大きいので、可能なら手放す前に1か月だけ車を使わない期間を作ります。
その間に使った電車・バス・タクシー・カーシェア・配送料と、移動にかかった時間を記録してください。雨の日、通院、重い買い物など、普段と違う日を一度含めると実態に近づきます。
一方、車を持つ年額は過去12か月の明細で出します。試した1か月だけを12倍せず、季節差や帰省・旅行の予定も別に足すのがポイントです。
2台目を見直す
ご家庭に2台ある場合、1台目より2台目のほうが利用頻度が低いことがほとんどです。
まず2台目だけを検討対象にすると、判断しやすくなります。
保険を見直す
任意保険は、条件を変えるだけで金額が変わる部分です。
- 運転する人の範囲(家族限定、本人限定)
- 年齢条件
- 車両保険をつけるかどうか、免責金額をいくらにするか
ただし補償を削れば、事故のときの負担は増えます。金額だけで決めず、何が起きたときにいくら払えるかを考えてから選んでください。
車格を下げる
次の買い替えのときに、一段小さい車にするという選択もあります。
車両価格、税金、燃料代、タイヤ代。ほとんどの項目が下がるので、効き方が大きい部分です。
維持費を「特別費」として積む
持ち続けると決めた場合は、車検や税金を毎月積み立てておくと家計が崩れません。積立先の口座をどう分けるかは、家計簿が続かない人のための「記録しない家計管理」で扱っています。
やり方はボーナスに頼らない年間貯蓄計画の立て方で扱っている特別費の考え方と同じです。
買い替えを考えている場合
手放すか持ち続けるかとは別に、買い替えで迷う方もいらっしゃいます。
ここで気をつけたいのが、月々の支払額だけで比べてしまうことです。
支払額は、頭金の額や返済期間、残価を設定するかどうかで大きく変わります。
比べるなら、支払総額と、乗る予定の年数で割った1年あたりの金額で見てください。
残価を設定する形の契約は月々の負担が軽くなりますが、走行距離の上限や返却時の状態に条件が付くことがあります。
年間の走行距離が多い方は、この上限を超えると追加の支払いが生じるので、契約前に確認が必要です。
いま乗っている車の維持費が上がってきたと感じる場合、原因が車検や修理なのか、燃料代なのかで判断が変わります。
修理が続いているなら買い替えの検討に入りますが、燃料代であれば使い方の見直しで収まることもありますよね。
まとめ:一般論ではなく、自分の走行距離で判断する
今日お伝えしたのは、答えではなく計算の仕方です。
計算日、年間走行距離、固定費、1kmあたりの変動費、代替手段の見積もりを残せば、次の車検や引っ越しのときにも同じ基準で比べられます。
維持費は、車両代を年数で割った分まで入れて年額を出す。代替手段のほうも、タクシーや配送料まで含めて年額を出す。
そのうえで、いまの利用頻度で比べる。
車は持つべき、持たないべき、という一般論はありません。使う回数と住んでいる場所で、答えが逆になる項目なんです。
まずは、去年1年で車にいくら使ったかを書き出してみてください。税金の通知や車検の領収書を探すところからで構いません。
金額が見えると、判断の土台ができます。
住まいと移動を合わせて考える視点は、一人暮らしの適正家賃を手取りから逆算するにも書いています。
