家計改善アドバイザーの真鍋みゆです。
お部屋探しのサイトを開くと、たいてい「家賃は手取りの3分の1まで」と書いてあります。手取り20万円なら6万6千円、という計算ですね。
この目安、実はどこかの役所が定めたものではありません。昔から言われている慣習的な数字で、公的な基準は存在しないんです。
では、何を基準に決めればいいのか。手取りから逆算する方法があります。
3分の1という数字の扱い方
まず、この目安をどう見ればいいかを整理します。
目安として便利ではあります
否定したいわけではありません。ざっくり判断するには使える数字ですよね。
ただ、根拠のある基準だと思って従うと、無理が出ることがあります。同じ手取り20万円でも、住む地域や通勤の形で事情がまったく違いますから。
ずれやすいのは、この2つ
- 家賃以外の居住コストが入っていない……管理費、駐車場、更新料など
- その人の他の支出が考慮されていない……奨学金の返済、通信費、車の維持費
ご相談でよくあるのが、家賃だけ見れば3分の1に収まっているのに、住まいに関わる支出を全部足すと4割を超えている、という形です。
公的な統計を見るときの注意
総務省の家計調査にも住居費の項目がありますが、これは家賃を払っていない持ち家世帯を含んだ平均なので、家賃の相場としては低く出ます。
総務省統計局「家計調査」は家計全体の傾向を見る資料です。借家だけの募集条件や、いま契約できる家賃を示す資料ではありません。
相場を知りたいなら、住みたい地域の募集物件を10件ほど眺めるほうが早いです。統計の平均に自分を合わせる必要は、そもそもありません。
「総居住コスト」で考える
募集ページに出ている数字だけで判断するのを、まずやめます。
住まいにかかるお金を全部足す
家賃という1つの数字ではなく、住むために毎月出ていくお金の合計で見ます。
- 家賃
- 管理費・共益費
- 駐車場代・駐輪場代
- 更新料(2年ごとなら24で割って月額に)
- 火災保険料(年払いなら12で割る)
- 保証会社の年間保証料(あれば同様に)
募集ページに出ている家賃は、支払う総額ではありません。下の試算では、管理費・更新料・火災保険を月額に直すと8,950円増えます。
これは相場の平均ではなく、計算方法を示すための編集部試算です。実際の金額は物件の募集条件と見積書で確かめてください。
計算してみると
家賃 65,000円 管理費 5,000円 更新料(家賃1か月分/2年) 約2,700円 火災保険(年15,000円) 1,250円 ────────────────────── 総居住コスト 約73,950円
「家賃6万5千円の部屋」でも、実際に出ていくのは月7万4千円ほど。この差が、後から効いてきます。
通勤コストも一緒に見る
家賃を下げるために遠くへ住むと、交通費と時間が増えます。
定期代が会社から支給されるなら金額の問題は小さいのですが、通勤時間が延びる分は取り戻せません。ここは金額と時間を並べて考えてみてください。
内見前に比較表を作る
候補ごとに、家賃・管理費・駐車場・更新料の月割り・保険料の月割り・通勤時間を横に並べます。募集ページにない項目は空欄にせず、「要確認」と書いてください。
家賃だけが安い物件でも、更新料や移動費を足すと逆転することがあります。反対に総額が少し高くても、通勤時間が短く、車が不要になるなら候補に残ります。
金額の上限を超えた物件は、内見してから悩むのではなく先に外します。気に入った後に予算を広げる流れを防ぐためです。
同じ家賃でも、住み心地は変わります
総居住コストが同じでも、部屋によって暮らしやすさは変わります。
後から効いてくるのは、断熱と設備の2つです。
断熱が弱い部屋は、冷暖房を使う時間が長くなり、光熱費として毎月出ていきます。
設備では、追い焚きの有無、洗濯機置き場が室内か屋外か、宅配ボックスの有無あたりが生活の手間に直結します。
家賃が2,000円安い代わりに光熱費が3,000円上がるなら、安いほうを選ぶ理由はありません。
内見のときは、窓の種類とエアコンの製造年を見ておくと判断材料になります。
手取りから逆算する手順
では、いくらまでなら大丈夫か。順番に出していきます。
手順1:手取りを確認する
額面ではなく、実際に振り込まれる金額です。ボーナスは含めません。
賞与を家賃の前提に入れると、出なかった年に苦しくなります。この考え方はボーナスに頼らない年間貯蓄計画の立て方と同じです。
手順2:先に貯蓄を引く
よくあるのが、残った額から家賃を決めてしまう順番です。
ここが逆算の要になります。先に貯蓄を引いて、その後の額で考えてください。
手取り20万円で毎月2万円貯めたいなら、住居と生活に使えるのは18万円です。
手順3:動かせない支出を引く
奨学金の返済、通信費、保険料、車があればその維持費。これらを引きます。
手取り 200,000円 − 貯蓄 20,000円 − 奨学金返済 15,000円 − 通信費 8,000円 − 保険料 5,000円 ────────────────────── 残り 152,000円
手順4:残りの中で配分を決める
この15万2千円を、住居費と生活費(食費・日用品・光熱費・交際費など)に分けます。
ここで初めて、総居住コストをいくらにするかが見えてきます。生活費に最低いくら必要かを先に見積もると、上限が決まります。
仮に生活費に8万円必要なら、総居住コストの上限は7万2千円。手取りの36%です。
3分の1より少し上ですが、この人にとってはこれが答えになります。
入居審査で見られること
払える家賃と、借りられる家賃は別だ、という点にも触れておきますね。
賃貸の申し込みでは、収入に対して家賃が高すぎないかを確認されます。
基準は貸主や保証会社によって違いますが、月収の3分の1あたりを目安に置いているところが多いようです。
ここでいう月収は、手取りではなく額面で見られることが一般的です。
手取りで逆算した金額が通らない場合と、通るけれど生活が苦しくなる場合、その両方が起こり得ます。
審査に通ったから適正、ということではないんですよね。
勤続年数が短い、転職したばかり、収入が変動する働き方といった事情がある場合は、事前に不動産会社へ伝えておくと進めやすくなります。
連帯保証人ではなく保証会社を使う形が増えていて、その場合は保証料が別途かかります。
初期費用にも毎年の更新料にも関わる部分なので、金額と支払いの周期を必ず確認してください。
地域による違い
同じ手取りでも、住む場所で事情が変わります。
都市部の場合
家賃の水準が高いぶん、割合は上がりやすくなります。
ただし、車を持たなくても生活できる地域なら、その分の維持費が丸ごと不要になります。住居費の割合だけを見て高いと判断しないでください。
地方の場合
家賃は下がりますが、車が必要になることが多いです。
駐車場代、ガソリン代、任意保険、車検、自動車税。これらを足すと、住居費で浮いた分が相殺されることもあります。
判断の材料は車を持つ・持たないの損益分岐点にまとめました。
比べるなら「住居費+移動費」で
地域を比較するときは、家賃だけを並べても意味がありません。
住居費と移動にかかる費用を足した合計で比べると、実感に近い数字になります。
更新のときにかかるお金
住み始めてからかかるお金は、家賃と管理費だけではありません。
契約期間が満了するタイミングで、更新料や火災保険料、保証会社への更新保証料が発生することがあります。
この3つは請求される時期が近く、重なると負担が大きく感じられます。
更新の年に必要な額を12で割って、毎月積んでおくと、その月だけ苦しくなる状態を避けられます。
家計を見せていただくと、更新の月に貯蓄を崩している方が本当に多いんです。
金額は契約書に書かれています。更新料は家賃1か月分としているところが多いですが、地域や物件によって差があります。
更新のない契約もあるので、まずご自身の契約書を確認してみてください。
退去のときにかかるお金も、同じように先に見ておくと安心です。
敷金から原状回復費が差し引かれ、残った分が返ってきます。
次の住まいの初期費用を、返ってくる敷金を当てにして組むのは避けておいたほうが無難です。
迷ったときの判断材料
金額が出たあとに、もう3つだけ見ておきたいことがあります。
初期費用も忘れずに
敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・火災保険・鍵交換を、入居前に一覧にします。
「家賃の数か月分」という表現は計画時の目安にすぎません。礼金なしの物件もあれば、保証料や鍵交換などの費用が加わる物件もあり、契約条件によって総額は変わります。
見積書を1枚もらって、実額で確かめてください。
ここで貯蓄を使い切ってしまうと、入居直後に余裕がなくなります。引っ越し後の手元資金がいくら残るかまで計算してください。
いま一人暮らしなら実績から補正する
すでに一人で暮らしている方は、食費や日用品をゼロから推測する必要はありません。直近3か月の引き落としを見て、最低限必要だった生活費を使います。
手取り20万円の配分例は、手取り20万円の一人暮らしでどれくらい貯金できるかでも整理しています。平均額ではなく、ご自身の固定支出に置き換えてください。
上限いっぱいで決めない
後で効いてくるのは、計算して出た上限が7万2千円でも、6万8千円くらいの部屋を選んでおくと呼吸ができます。
家賃は下げにくい支出です。上げるのは簡単でも、下げるには引っ越しが必要になります。
余白には、光熱費の季節差や更新時の値上げ、収入が一時的に減る月を受け止める役割があります。具体的な余白額は、過去の変動幅と手元資金から決めてください。
数年後の収入を前提にしない
「来年昇給するから」と考えて決めると、昇給しなかったときに苦しくなります。
いまの手取りで判断してください。収入が増えたときの扱い方は収入が増えても貯まらない「生活水準の膨張」を止めるで扱っています。
二人で住むことを考えている場合
近いうちに同居や結婚の予定がある方は、少し見方が変わります。
二人で住むと家賃は上がりますが、一人あたりの負担は下がることが多いですよね。
ただし、負担が下がるのは家賃だけで、水道光熱費や通信費は単純に半分にはなりません。
それでも総額では有利になりやすいので、時期が決まっているなら、いまの契約を更新するかどうかから考えてみてください。
更新料を払って1年住むより、少し早めに動いたほうが総額で安く済むこともあります。
逆に、予定が不確かな段階で広い部屋を先に借りるのは、おすすめしにくいところです。
家賃は上がったのに一人で住む期間が続く、という形になりやすいためです。
まとめ:目安ではなく、自分の数字で決める
「手取りの3分の1」は慣習的な目安であって、公的に定められた基準ではありません。
候補を比べる表には、総居住コスト、移動費、通勤時間、入居後に残る手元資金を置きます。家賃だけの比較から離れるための4項目です。
空欄の費用は契約前に確認し、上限を超えたら設備ではなく予算を優先してください。
その順番なら、あとで苦しくなりません。
やることは、総居住コスト(家賃+管理費+更新料+保険料など)で見ること。そして手取りから貯蓄と動かせない支出を引いて、残りの中で配分を決めること。
この順番が取れるのは、家計簿が続かない人のための「記録しない家計管理」で書いた「貯蓄を先に引く」形ができているときです。
この順番です。
上限は人によって3割にも4割にもなります。割合が高いことより、毎月きちんと残ることのほうが大事なんです。
これから探す方は、上限を出してから物件を見る。いま住んでいる方は、住まいに関わる支出を一度全部足してみる。
どちらも、募集ページに出ている家賃とは違う数字が出てきます。そこからが本当の判断です。
