家計改善アドバイザーの真鍋みゆです。
「余ったら貯金しよう」と思っていて、余ったためしがない。ご相談でいちばん多いのが、この状態なんです。
責めるつもりは全くありません。生活費と貯蓄が同じ口座に入っていれば、そうなるのが自然です。
今日は、貯まる人がやっている「先に引いてしまう」形の作り方を、口座の分け方から順番にお話ししますね。
なぜ「余ったら」では貯まらないのか
仕組みの話に入る前に、理由をはっきりさせておきます。
使えるお金に見えてしまうから
口座に30万円あると、私たちは30万円使えると認識します。そのうち5万円は貯蓄のつもりでも、見えている以上は選択肢に入ってしまうんです。
これは意志の強さの問題ではなくて、目に入るものに引っ張られるという、ごく普通の反応です。
月末に判断させる設計になっている
「余ったら」は、月末に判断を求める形です。
でも月末は、その月に何にいくら使ったかを一番知っている時期です。予定外の出費があった記憶も新しい。
判断を任せるには、いちばん不利なタイミングなんですよね。
だから、判断の前に動かす
先取り貯金の本質は、金額を増やすことではありません。判断が入る前に、お金を別の場所へ移してしまうことです。
移した後の残りで生活する。それだけで、意志を使う場面がなくなります。
口座は最低3つに分けます
ここから具体的な形です。数を増やす必要はなくて、3つで足ります。
3つの役割
- 固定費用(給与振込口座)……家賃・光熱費・通信費・保険料など、毎月自動で引き落とされるものを集める
- 生活費用……食費・日用品・交際費など、その月に使ってよいお金だけを入れる
- 貯蓄用……手をつけないお金。普段は見ない
この3つが混ざっていると、いくら使ってよいのか分からなくなります。分けた瞬間に、生活費用の残高が答えになります。
なぜ4つ以上にしないのか
目的別に細かく分ける方法もありますが、最初はおすすめしていません。
家計を見せていただくと、口座を6つ7つと作った方ほど、どこに何が入っているか分からなくなっている印象があります。管理の対象が増えると、それ自体が手間になるんです。
3つで2〜3か月回してみて、足りないと感じたら足す。この順番で十分です。
どの金融機関を使うか
ここは正直にお伝えしますが、どこがいちばん良いという答えはありません。
選ぶときに見るのは、次の3点くらいで足ります。
- 自動振替(定額自動送金)の手数料が無料か、または安いか
- 給与振込口座から移しやすいか(同じ銀行内なら手数料がかからないことが多いです)
- 貯蓄用は、引き出しにくいほうが向いています。カードを作らない選択もあります
いま使っている銀行にこの機能があるなら、新しく作らなくて構いません。
3つの銀行が必要なわけではありません
役割を3つに分けることと、金融機関を3社に増やすことは別です。同じ銀行の普通預金・貯蓄預金・目的別口座などで役割を分けられるなら、それでも構いません。
大切なのは、生活費の残高に貯蓄分が混ざらないことです。新しい口座を作る前に、いまの銀行で追加口座や目的別管理が使えるかを確認してください。
自動化の設定
分けたら、次は動かす部分を自動にします。ここまでやって、ようやく仕組みになります。
タイミングは「給与振込日の翌営業日」
いちばん大事なのがここです。
給与が入った翌営業日に、貯蓄用へ自動で移す設定にしてください。間が空くほど、使ってしまう可能性が出てきます。
給与日が土日祝に重なると前後することがあるので、翌営業日に寄せておくと空振りしません。
給与日が一定でない場合
入金日が月ごとに変わる方は、毎月同じ日の自動送金が合わないことがあります。
固定日で設定するなら、もっとも遅い入金予定日の数営業日後に置き、固定費用口座には1回分の振替額を予備として残します。入金のたびに手動で動かす場合も、通知やカレンダーを使って判断する日を固定してください。
使える機能の名前
銀行によって呼び方が違うので、探すときの手がかりを書いておきます。
- 定額自動送金(自動振込)……毎月決まった日に、決まった額を別の口座へ送る
- 自動積立定期預金……同じ銀行の中で、普通預金から定期預金へ毎月移す
- 財形貯蓄……勤務先に制度があれば、給与から天引きされる形
3つ目が使えるなら、いちばん確実です。振り込まれる前に引かれるので、口座に入ってすらきません。
設定前に確認する4項目
- 送金1回あたりの手数料と、無料回数の条件
- 実行日が休日の場合に前後どちらへ動くか
- 残高不足のときに再実行されるか
- 金額変更・停止をどこから手続きできるか
月330円の手数料でも、1年なら3,960円です。無料の銀行へ必ず移る必要はありませんが、貯蓄額に対して負担が大きいなら、同じ銀行内の振替や手動移動も比べてください。
設定画面は保存し、次に見直す日もカレンダーへ入れます。自動化した後に放置するのではなく、最初だけ確認する仕組みまで作って完了です。
金額の決め方
最初から手取りの2割、といった目標を置かないでください。
無理なく続けるなら、3か月続けても苦しくない額から始めるのが確実です。1万円でも5,000円でも構いません。
仕組みが回ることのほうが、金額より大事です。
3か月続いたら、少し上げる。この繰り返しで十分に増えていきます。
手取りから決めたい場合の考え方
それでも目安がほしい、という方はいらっしゃいます。
その場合は割合から入らず、引き算で出してください。
まず手取りから、家賃・通信費・保険料のように毎月必ず出ていくお金を引きます。
次に食費や日用品のような月ごとに変わるお金を、少し多めに見積もって引きます。
残った金額の半分が、最初の先取り額の上限です。
半分にとどめるのは、見積もりが外れる前提で余白を残しておくためです。
家計を見せていただくと、この余白を取らずに始めた方ほど2か月目で崩しています。
逆に、計算上ほとんど残らない月があっても、それだけで諦めなくて大丈夫です。
よくあるのが、その月にたまたま特別費が重なっているだけ、というケースなんですよね。
3か月分を並べてから決めても、遅くはありません。
やめたくなったときのために
ここは先にお伝えしておきたい部分です。
いつでも止められます
自動積立や定額自動送金は、手続きをすれば止められますし、金額の変更もできます。一度設定したら抜けられない、というものではありません。
ここを知らずに「大きな金額で始めるのが怖い」と止まってしまう方が、よくいらっしゃるんですよね。可逆的だと分かっていれば、気楽に始められます。
ただし、財形貯蓄のうち住宅財形・年金財形だけは別です。目的以外で引き出すと税制上の扱いが変わります。
この2つを使う場合は、勤務先の担当部署で条件を確認してください。
止めるのと、崩すのは違います
ただ、ひとつだけ区別しておいてください。
- 積立を止める……今後の入金を停止する。すでに貯まった分はそのまま
- 貯蓄を崩す……貯まった分を引き出して使う
苦しい月は、崩す前にまず止める。それで乗り切れることが多いです。
崩してしまっても、やり直せます
大きな出費で貯蓄に手をつけることは、誰にでもあります。
そこで「自分はダメだ」と全部やめてしまうのが、いちばんもったいないところです。金額を下げて再開すれば、それで続いていることになります。
回り始めてからの調整
2〜3か月経つと、見えてくるものがあります。
生活費が足りない月が続くなら
貯蓄額が身の丈に合っていないサインです。下げてください。
貯蓄を守るために生活費をクレジットカードで補うと、翌月の引き落としで固定費用の口座が圧迫されます。これが崩れ方としてよくあるパターンです。
振替が失敗していたら
残高不足や休日の扱いで、自動送金が実行されないこともあります。設定した最初の3か月は、翌営業日に入金先の残高まで確認してください。
再振替の有無や手数料は金融機関によって違います。失敗が続くなら、実行日を遅らせるか、給与振込口座に小さな予備残高を置く方法へ変えます。
毎月きれいに余るなら
貯蓄額を上げる余地があります。ただし、一度に大きく上げないでください。
3,000円ずつくらいで様子を見ると、生活の質を落とさずに増やせます。
年に数回の出費が崩す場合
車検、帰省、家電の買い替え。これらは月の生活費に入らないので、別で積んでおく必要があります。
その組み方はボーナスに頼らない年間貯蓄計画の立て方で扱っています。
分けたのに使ってしまうとき
口座を分けたのに、貯蓄用から引き出してしまう。これもよくいただくご相談です。
原因は意志の強さではなく、たいてい「手元にあること」にあります。
貯蓄用のキャッシュカードを財布に入れていると、残高が見えて、引き出せてしまいます。
カードを財布から抜き、家の中の決まった場所に置くだけで、引き出しは目に見えて減ります。
銀行アプリも同じです。生活費用だけをホーム画面に置き、貯蓄用はログインの手間が残る状態にしておく。
そのひと手間が、そのまま歯止めになってくれます。
それでも足りないときは、引き出しに日数がかかる置き場所へ移す方法があります。
財形貯蓄や社内預金のように勤務先を通すもの、あるいは満期のある定期預金です。
ただし、3年以内に使う予定があるお金を動かしにくい場所へ入れるのは避けてください。
引き出せないことが理由で借入をすることになっては、本末転倒ですよね。
賞与が入る月の扱い
賞与のある月だけ、先取りの金額を上げる方がいらっしゃいます。
これ自体は問題ないのですが、自動振替の設定を変えてしまうと、翌月に戻し忘れる方が多いんです。
毎月の設定はそのままにして、賞与の分は手動で1回移す。この形にしておくと、戻し忘れが起きません。
移す前に、特別費として先に取っておく分があるかどうかも確認してください。
車検や帰省の費用を賞与から出す予定なら、その分を残してから貯蓄へ回す順番になります。
貯まったお金をどうするか
最後に、この先の話にも少し触れておきます。
まずは動かさないお金を作る
生活費の数か月分が貯まるまでは、増やすことを考えなくて大丈夫です。
急な出費や収入の減少に耐えられる現金があること自体が、いちばんの安心材料になります。いくら必要かは、家族構成や収入の安定度によって変わります。
よく言われる「生活費の3か月分」「半年分」といった目安は、民間で一般に流通している考え方であって、公的に定められた基準ではありません。ご自身の状況に合わせて決めてください。
その先を考える段階になったら
手元の現金が十分になってから、一部を運用に回すかどうかを検討する順番になります。
貯金と運用の配分については貯金の何割を運用に回すべきか、生活防衛資金から逆算する新NISA時代の割合で整理されています。
まとめ:分けて、自動で動かす
やることは、実はとても少ないんです。
設定日・金額・手数料・最初の確認日を1枚に残しておけば、数か月後の調整も迷いません。自動化は、確認方法まで決めて初めて続く仕組みになります。
まずは小さな額で1回動かし、予定どおり入金されたことを確かめてから本運用へ移してください。
口座を固定費用・生活費用・貯蓄用の3つに分けて、給与振込日の翌営業日に貯蓄用へ自動で移す設定をする。金額は3か月続けても苦しくない額から。
それだけです。
設定は一度きりですが、効果は毎月続きます。しかも、止めたくなればいつでも止められます。
今日は、いま使っている銀行のサイトを開いて、「自動振込」や「自動積立」という項目があるかどうかだけ見てみてください。あるかないかが分かれば、次に進めます。
口座を分ける前提となる家計全体の考え方は、家計簿が続かない人のための「記録しない家計管理」にまとめてあります。
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