手取りが20万円くらいの一人暮らしで、みんなはどのくらい貯めているのか。これは本当によく聞かれます。
ただ、この質問には決まった答えがありません。同じ手取りでも、家賃が7万円の方と12万円の方では、残せる金額がまったく違うからです。
節約・貯金・家計管理を担当している真鍋みゆです。これまで500名以上の家計を見せていただきましたが、この質問に一律の答えを出せたことは一度もありません。
ですのでこの記事では、いくら貯まるかをお示しするのではなく、ご自身の場合はいくら残せるのかを、順を追って出せるようにします。
使うのは公的な統計と、ご自身の明細だけです。特別な計算は要りません。
「手取り20万でいくら貯まるか」に一律の答えはありません
最初に、この記事の立場をはっきりさせておきます。
同じ手取りでも、残る金額は倍以上違います
ご相談を受けていて実感するのは、収入より支出の構成のほうが結果を左右するということです。
住んでいる地域、通勤の形、実家との距離、契約している保険や通信の内容。これらが違えば、同じ手取りでも残せる金額は大きく変わります。
ですので、「手取り20万円なら月◯万円」という形の目安は、この記事では出しません。当てはまらない方のほうが多いからです。
手取りの何割、という言い方にも根拠はありません
家賃は手取りの3分の1まで、貯金は2割、といった目安を見かけます。
これらは広く使われている慣習的な目安であって、公的に定められた基準ではありません。参考として知っておくのは構いませんが、そこから外れているからといって問題があるわけではないんです。
基準にすべきなのは一般的な割合ではなく、ご自身の固定費の実額です。
公的な統計で、一人暮らしの支出の内訳を見る
とはいえ、何も手がかりがないと計算が始まりません。まずは公的な数字を置きます。
173,042円
総務省統計局「家計調査(家計収支編)2025年平均結果の概要」より。
単身世帯の1世帯あたり1か月平均。この調査の単身世帯は平均年齢58.6歳で、20代・30代だけを取り出した数字ではありません。
費目ごとの内訳
同じ調査から、単身世帯の費目別の月平均額を並べます。
| 費目 | 月平均額(円) |
|---|---|
| 食料 | 49,321 |
| 住居 | 21,667 |
| 光熱・水道 | 13,333 |
| 家具・家事用品 | 6,120 |
| 被服及び履物 | 4,908 |
| 保健医療 | 8,754 |
| 交通・通信 | 19,334 |
| 教養娯楽 | 21,173 |
| その他の消費支出 | 28,396 |
出典は同じく総務省統計局「家計調査(家計収支編)2025年平均結果の概要」です。
この表を読むときの注意点が2つあります
1つめは「住居」です。
21,667円という金額は、家賃を払っていない持ち家の世帯も含めた平均なので、賃貸の家賃相場よりかなり低く出ます。ご自身の家賃と直接比べないでください。
2つめは「食料」です。
この費目には外食が含まれています。自炊しているかどうかにかかわらず、外で食べたぶんもここに入ります。
この2点を押さえておかないと、比べた結果を読み違えます。統計は自分の位置を知る材料であって、目標そのものではありません。
平均と比べて落ち込む必要はありません
ご相談で多いのが、平均より支出が多いことを気にされるケースです。
でも、この平均は年齢も地域も住まいの形もばらばらな世帯を合わせたものです。
都市部で賃貸に住んでいれば住居費は高く出ますし、通勤に電車を使えば交通費も乗ります。条件が違うのに、金額だけを比べても意味がありません。
比べるとすれば、ご自身の先月と今月です。統計はあくまで、費目の抜けを確認するための一覧として使ってください。
まず、毎月出ていく金額を書き出す
ここからが実際の作業です。
順番があります。最初にやるのは、節約ではなく把握です。
引き落としの明細を1か月ぶん開く
銀行口座とクレジットカードの明細を、1か月ぶんだけ開いてください。そこに毎月同じ名前で並んでいるものが、あなたの固定費です。
家賃、管理費、電気、ガス、水道、通信、保険料、定額サービス。契約した覚えのないものが1つ2つ見つかることもよくあります。
この作業に1時間もかかりません。それでいて、以降の判断がすべてここから始まります。
手取りから固定費を引く
書き出した固定費の合計を、手取りから引いてください。残った金額が、食費や日用品、交際費などに使える金額です。
ここが極端に小さければ、日々の節約でどうにかする話ではありません。契約のほうを見直す番です。
年に数回の支出も入れておく
毎月ではないけれど必ず来る支出があります。更新料、火災保険料、帰省の費用、年払いのサービス。
これらを月ごとに割って、固定費に足しておいてください。入れずに計画すると、その月だけ貯金を崩すことになります。
この作業をすると、毎月の余裕が思っていたより小さいことに気づく方が多いです。
それは悪いことではありません。実態が見えたということなので、そこから計画を立て直せます。
手取りの数字は、明細から取る
もう1つ気をつけたいのが、手取りの金額です。おおよその記憶で計算している方がとても多いんです。
給与明細の差引支給額を見てください。
月によって残業代が変わる方は、いちばん少なかった月の金額で計画を組むと安全です。多い月を基準にすると、少ない月に足りなくなります。
賞与がある場合も、月の計画には入れないでください。入れてしまうと、支給が変わったときに計画ごと崩れます。
貯める金額は、残りからではなく先に決める
ここが結果を分けるところです。
入ってきた日に取り分ける
使ったあとに残ったぶんを貯める形だと、ほとんど残りません。使えるお金が口座にあれば、使い道は出てくるからです。
給料が入った翌日に、決めた金額が別の口座へ自動で移るように設定してください。手作業にすると、その月の気分が入ります。
口座の分け方と設定の手順は 先取り貯金の口座の分け方と自動化の設定 にまとめています。
最初の目標は「働けない期間を支えるお金」
何のために貯めるかが決まっていない場合、まずは収入が止まったときに暮らせるお金から用意してください。
これがないうちに他の目的へ回すと、急な出費のたびに崩すことになります。
どのくらい必要かの考え方は 生活防衛資金とは?どのくらい貯めるべきかを解説 で扱っています。
金額は下げてもいいので、止めない
設定した金額で生活が回らないときは、金額を下げてください。設定そのものを止めてしまうと、再開するのが難しくなります。
3か月続いたら少し上げる、2か月続かなかったら下げる。この調整だけで十分です。
すぐ引き出せる分と、そうでない分を分ける
取り分けたお金を全部まとめて置いておくと、急な出費のときに全体から崩すことになります。
手元にあってほしい分は普通預金のまま、当面使う予定のない分は引き出しにひと手間かかる形にしておく。この2つに分けておくと、崩す範囲がその都度小さく済みます。
どちらにどれだけ置くかは、収入の安定度によって変わります。収入に波がある働き方なら、すぐ動かせる側を厚めにしておいてください。
見直す順番は、手間の軽いものから
固定費を書き出したら、上から順に手をつけたくなります。でも、いちばん金額の大きい家賃から始めると、たいてい進みません。
1か月に1件で十分です
通信の契約、定額サービス、電気やガスの契約。この順で見ていくと、手続きが軽いものから片づきます。
1か月に1件と決めてください。
まとめてやろうとすると、途中で止まって全部が中途半端になります。具体的な進め方は 固定費を抑えて節約をする3つの方法 に書いています。
保険は「見直す」前に「把握する」
保険料は固定費のなかでも見落とされやすい項目です。加入したまま内容を覚えていない方も少なくありません。
まずは証券を出して、何にいくら払っているかを確認するところまでで十分です。
解約や乗り換えの判断は、その先の話になります。内容によっては、いま必要な保障が外れてしまうこともあるためです。
通信費は、乗り換える前に今の会社で確認する
通信の契約は、手続きが比較的軽くて効果が続くので、最初に見る費目としてはちょうどいい場所です。
ただ、いきなり他社へ乗り換えなくても構いません。
まずは今契約している会社の中に、いまの使い方に合ったプランがないかを確認してください。データの使用量が契約している量に対して少なければ、それだけで下げられることがあります。
確認するのは、月々の請求額、契約しているデータ量、実際に使っている量、そして解約や乗り換えに違約金がかかる期間かどうか。この4つで判断できます。
家賃は動かせる時期が決まっています
家賃は金額としてはいちばん大きいのですが、変えられるのは更新や引っ越しのタイミングだけです。
いますぐ動けないなら、次の更新月をカレンダーに入れておいてください。
そのときに判断できるよう、いまのうちに周辺の相場を見ておくと迷いません。引っ越し自体の費用を抑える方法は 引っ越し節約テクニック にまとめてあります。
それでも貯まらないときに見るところ
設定もしたし固定費も見直した。それでも増えていない場合、確認するところは決まっています。
- 先取りした口座から、月末に引き出していないか
- 年に数回の支出を、固定費に含めずに計算していないか
- クレジットカードの支払いが翌月にずれて、実態が見えなくなっていないか
- 固定費を下げたぶんが、別の支出に移っていないか
- 手取りが変わったのに、設定を直していないままではないか
とくに多いのが、いちばん下の項目です。
収入が増えたときに生活の水準を先に上げてしまうと、貯まる額は変わりません。増えたぶんは、まず先取りの額に足してください。
下げた固定費の行き先を決めておく
固定費を見直したのに残高が変わらない、という相談もよくあります。原因はほとんどの場合、浮いたぶんの行き先を決めていないことです。
下げた金額は、そのままにしておくと生活費に混ざって消えます。見直しが済んだ月に、下がったぶんだけ先取りの設定額を上げてください。
ここまでやって、はじめて見直しが結果につながります。固定費を下げる作業と、貯まる額を増やす作業は別々のものです。
それでも変わらないようなら、支出ではなく収入のほうを動かす検討に入ります。ただ、そちらは時間がかかるので、固定費の見直しを終えてからで十分です。
もう1つ、意外と見落とされるのがカードの支払いです。
使った月と引き落としの月がずれるため、今月の残高が良く見えていても、翌月にまとめて出ていくことがあります。明細は、使った月ではなく引き落としの月で並べて確認してください。
分割やリボの形で残っているものがある場合は、貯める前にそちらを減らすほうが先になることもあります。支払いが続いている状態で貯蓄だけを増やしても、家計全体としては前に進みません。
まとめ:貯まる額は手取りではなく固定費で決まります
手取り20万円でいくら貯められるかは、金額だけでは決まりません。家賃と通信、保険、定額サービスの合計がいくらかで、残せる幅が変わります。
やることは3つです。毎月出ていく金額を書き出す。
手取りから引いて、使える額を知る。そのうえで、先に取り分ける金額を決めて自動にする。
いくら貯まるかをお約束することはできません。ただ、この順番で進めれば、来月いくら残るかは自分で計算できるようになります。
それに、今月うまくいかなくても構いません。固定費は一度整えれば翌月以降も効き続けるので、急いで結果を出す種類の作業ではないんです。
まずは、口座とカードの明細を1か月ぶん開くところから始めてみてください。
