ファイナンシャルライターの宮内俊輔です。
新NISAが始まり、投資信託を始めようとする人が一気に増えました。ただ、いざ口座を作っても「結局どれを選べばいいのか」で手が止まってしまう人は少なくありません。
私は証券会社で働いていた頃から、この最初の一歩でつまずく人を数多く見てきました。
投資信託は、選び方さえ押さえれば初心者でも十分に扱えます。この記事では、新NISAを踏まえた投資信託の具体的な選び方を、順を追って解説します。
投資信託は「選び方」で結果が大きく変わる
投資信託は、数千本という単位で存在します。
同じ「投資信託」という名前でも、中身やコストは大きく異なります。だからこそ、最初にどれを選ぶかが、その後の運用成果を左右します。
投資信託は、何を選ぶかで長期の結果が変わりやすくなります。これは投資額の大小に関係なく当てはまる考え方です。
まずは「選び方の軸」を持つことが、遠回りに見えて一番の近道になります。
なぜ初心者ほど投資信託が向いているのか
投資と聞くと、値動きを見ながら自分で売買する姿を思い浮かべる人が多いようです。
しかし、その方法は時間も知識も要求されます。初心者がいきなり個別株の売買で成果を出すのは簡単ではありません。
投資信託は、運用の判断をプロに任せる仕組みです。
1本買うだけで、世界中の株式や債券に分散して投資できる商品もあります。
少額から始められ、手間をかけずに分散投資ができる点が、初心者にとって大きな利点です。
「なんとなく人気だから」で選ぶと損をしやすい理由
ランキング上位だから、名前を聞いたことがあるから、という理由だけで選ぶのはおすすめしません。人気の投資信託の中には、販売手数料や運用コストが高い商品も混ざっているためです。
コストは、成果が出ても出なくても差し引かれ続けます。
つまり、選ぶ基準を持たずに雰囲気で決めると、知らないうちに手元に残る利益を削られていきます。
次章から、その基準を一つずつ整理します。
そもそも投資信託とは何か
選び方の前に、投資信託の仕組みを押さえておきます。
仕組みを理解しておくと、なぜコストや中身を確認すべきなのかが腑に落ちるためです。
プロに運用を任せる仕組み
投資信託は、多くの投資家から集めたお金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資する商品です。
運用によって出た成果は、投資した金額に応じて各投資家に還元されます。
販売する会社、運用の指図を出す会社、資産を管理する会社という複数の機関が役割を分けて関わっています。
私が証券会社にいた頃も、この分業によって投資家の資産が守られる設計になっていると実感していました。
少額・分散・NISAという3つのメリット
投資信託の利点は、大きく3つに整理できます。
1つ目は、金融機関によっては月100円や1,000円といった少額から始められること。
2つ目は、1本で複数の銘柄に分散できるため、特定の企業の値下がりの影響を受けにくいこと。
3つ目は、後述する新NISAの非課税制度と相性が良いことです。
少額で始めて、分散でリスクを抑えながら、非課税で運用できる。この組み合わせが、初心者の最初の一歩に投資信託が向いている理由です。
コストと元本保証がない点というデメリット
一方で、デメリットも正直にお伝えします。
投資信託には、保有している間ずっとかかる「信託報酬」というコストがあります。
また、投資である以上、元本は保証されません。運用の成果によっては、購入時より価値が下がることもあります。
この2点を理解したうえで、コストを抑え、長期で分散して付き合うことが、投資信託とうまく付き合うための前提になります。
新NISAを踏まえた投資信託の選び方
2024年から、NISAは新しい制度に変わりました。
旧制度とは非課税の枠も期間も大きく異なります。投資信託を選ぶうえで、この新NISAの理解は欠かせません。
つみたて投資枠と成長投資枠の違い
新NISAには、2つの枠があります。
年間120万円まで使える「つみたて投資枠」と、年間240万円まで使える「成長投資枠」です。両方を合わせると、年間で最大360万円まで投資できます。
生涯で非課税にできる上限は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)で、非課税で保有できる期間は無期限になりました。
制度の詳細や最新の数値は、金融庁のNISA特設サイトで必ず確認してください。制度は今後も改定される可能性があります。
まずは「つみたて投資枠の対象」の低コスト投信から
初心者がどこから手をつけるか迷ったら、私は「つみたて投資枠の対象商品」から見ることをおすすめします。
つみたて投資枠の対象は、長期・積立・分散に向くと国が一定の基準で絞り込んだ投資信託です。
この対象商品は、金融庁が条件を設けて選定しており、手数料が低いことなどが要件に含まれます。
対象リストは金融庁のつみたて投資枠対象商品ページで公開されています。数千本ある投資信託から候補を絞る、最初のふるいとして役立ちます。
インデックスファンドとアクティブファンドの違い
投資信託は、大きくインデックスファンドとアクティブファンドに分かれます。
インデックスファンドは、日経平均やS&P500といった指数と同じ値動きを目指す商品です。
アクティブファンドは、指数を上回る成果を目指して運用する商品です。
アクティブファンドは、うまくいけば指数を上回りますが、その分コストが高くなりがちで、必ず上回れるわけではありません。
初心者が最初に選ぶなら、低コストで値動きが分かりやすいインデックスファンドから検討するのが堅実だと私は考えています。
失敗しないインデックスファンドの選び方
インデックスファンドに絞ったあとは、3つの視点で具体的に比較します。
この3点を押さえれば、初心者でも大きな選び間違いは避けられます。
信託報酬(運用管理費用)をチェックする
最初に見るべきは、信託報酬です。
信託報酬は、投資信託を保有している間ずっと差し引かれる運用コストで、年率で表示されます。
信託報酬は保有している間ずっと差し引かれ続けるため、コストの低さは長期投資で最も重視すべき要素の一つです。
同じ指数に連動するインデックスファンドであれば、中身は近い値動きになります。それなら、コストが低いほうが手元に残りやすいという考え方が成り立ちます。
年0.1%台といった低い水準の商品も増えています。数字の大小だけでなく、同じ指数の商品同士で比べる視点を持ってください。
具体的に見てみます。同じ全世界株式の指数に連動する商品でも、信託報酬が年0.1%程度のものと、年0.5%を超えるものが混在しています。
仮に運用成果が同じだったとしても、コストの差は保有する年数が長くなるほど積み上がります。
たとえば100万円を20年間保有した場合、年0.4%の差は単純計算でおよそ8万円の違いになります。
1年あたりでは小さく見える差でも、長期になるほど効いてくるという点を押さえておいてください。
純資産総額と資金の流入を確認する
次に、純資産総額を確認します。
純資産総額は、その投資信託にどれだけの資金が集まっているかを示す規模の指標です。規模が極端に小さい商品は、途中で運用が終了してしまう可能性があります。
目安として、純資産総額が右肩上がりで増えている商品は、資金が継続して流入していると読み取れます。
規模が安定して伸びているかどうかは、長く付き合えるファンドかを見極める材料になります。
明確な絶対基準があるわけではありませんが、純資産総額が数十億円以上あり、かつ増加傾向にある商品は、運用が安定して続きやすいと私は見ています。
反対に、規模が小さいまま横ばいや減少が続く商品には注意が必要です。運用効率が悪化し、「繰上償還」といって運用そのものが途中で終了してしまう可能性が相対的に高くなるためです。
せっかく長期で積み立てる前提の商品が途中で終わってしまうと、計画の立て直しを迫られます。
何に連動するか(対象指数)で選ぶ
3つ目は、そのファンドが何に連動しているかです。
同じインデックスファンドでも、連動する指数によって投資先の国や資産が変わります。指数を理解することは、自分の資産がどこに投資されているかを理解することと同じです。
指数ごとの特徴は次章で整理します。
投資信託協会のような公的な団体も、初心者向けの解説を公開しています。判断に迷ったら投資信託協会のサイトなど一次情報にあたる習慣をつけると安心です。
代表的なインデックスの種類と選び分け
ここでは、初心者がよく検討する代表的な指数を整理します。
特定の商品名ではなく、指数の性格を理解することを目的にしてください。
全世界株式と米国株式(S&P500)
全世界株式に連動する指数は、日本を含む世界中の株式に幅広く分散します。
1本で世界に投資できるため、「どの国が伸びるか読めない」という初心者の不安に応えやすい選択肢です。
米国株式のS&P500に連動する指数は、米国の主要企業に投資します。
過去の成長は目立ちますが、投資先が米国に集中する点は理解しておく必要があります。
分散の広さを取るか、米国の成長に絞るかという考え方の違いになります。
先進国株式と国内株式
先進国株式の指数は、日本を除く先進国の株式に投資します。
国内株式の指数は、TOPIXや日経平均といった日本市場に連動します。
円で生活する日本の投資家にとって、国内株式は値動きが身近に感じられる一方、投資先が国内に偏る点は意識しておきたいところです。
債券やREITでリスクを調整する
株式だけでは値動きが大きいと感じる場合、債券やREIT(不動産投資信託)に連動する指数を組み合わせる方法もあります。
債券は一般に株式より値動きが穏やかとされ、資産全体の変動を抑える役割を担います。ただし、絶対に損をしないという意味ではありません。
自分がどれだけの値動きに耐えられるかに応じて、組み合わせを考えてください。
では、初心者は結局どこから始めればよいのか。私の考えを一つの目安としてお伝えします。
投資先を自分で細かく決めるのが難しいと感じるなら、まずは全世界株式に連動するインデックスファンドを1本という組み立てが分かりやすい方法です。
1本で世界中に分散でき、あとから債券や他の資産を足して調整することもできます。
もちろん、これは唯一の正解ではありません。最終的には、自分が中身を理解して納得できる商品を選ぶことが、長く続けるうえで何より大切になります。
投資信託を始める前に押さえる注意点
選び方が分かっても、始め方を誤ると長続きしません。
最後に、投資信託を始める前に確認しておきたい2点を挙げます。
生活防衛資金を確保してから始める
投資は、当面使う予定のない余裕資金で行うのが原則です。
病気や失業など、いざというときに備える「生活防衛資金」を先に確保してください。
目安として、生活費の数か月分から1年分を現金で持っておくと、値下がり局面でも慌てて売らずに済みます。
生活防衛資金と投資資金を分けることが、長く続けるための土台になります。
短期の値動きに一喜一憂しない
投資信託の価値は、日々変動します。始めた直後に下がることもあります。
しかし、インデックス投資は本来、長期で少しずつ積み立てることを前提にした方法です。短期の上下で判断を変えると、かえって成果を損ないやすくなります。
制度も商品も変わり続けます。
購入後も、年に一度は公式情報で前提が変わっていないかを確認する習慣を持ってください。
総括:新NISA時代は「低コスト・分散・長期」で選ぶ
投資信託の選び方を整理してきました。
ポイントは、つみたて投資枠の対象から候補を絞り、信託報酬・純資産総額・連動指数の3点で比較し、自分が耐えられる値動きに合わせて選ぶことです。
低コスト・分散・長期。この3つを満たすインデックスファンドを、新NISAの非課税枠でコツコツ積み立てていく。これが、初心者が大きく外さないための現実的な方針だと私は考えています。
まずは対象商品を実際に見比べるところから、最初の一歩を踏み出してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の金融商品・保険商品の購入や投資を勧誘・保証するものではありません。制度・商品内容は変更される場合があります。NISA制度・対象商品・税制の最新情報は金融庁など公式情報をご確認のうえ、実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。



















