Webリサーチャーの江原健太です。
格安SIMは通信費を下げる有力な選択肢です。ただ、乗り換えた後に「こんなはずじゃなかった」となる人も一定数います。
国民生活センターが2020年に公表した注意喚起を見ると、格安スマホの利用方法やサポート内容に関する相談が数多く寄せられていました。60歳以上からの相談の割合が増えているとも報告されています。
その後の各社の条件を調べていて感じるのは、料金以外の部分で「思っていたのと違った」という声が減っていないことです。
この記事では、後悔しやすい3つの見落としと回避策を整理します。
ご自身の乗り換えはもちろん、親や家族の乗り換えを手伝う場合にも使えます。
自分の通話時間を把握する方法
通話オプションが必要かどうかは、実際の通話時間で決まります。
確認するのは、端末の通話履歴です。
ここに、発信ごとの時間が記録されています。
1か月分を合計してみてください。
合計が短ければ、オプションなしでも問題ありません。
長い場合は、かけ放題の条件を確認します。
ここで見るのは、無制限か、1回あたりの時間に上限があるかです。
短い通話を何度もする人と、長電話をする人では、選ぶべきオプションが違います。
合計時間だけでなく、1回あたりの長さも見ておいてください。
見落とし1:通話料が思ったより高くなる
数字で比べると、最も金額に響くのがここです。
標準の通話アプリだと割高になることがある
多くの格安SIMは従量課金です。スマホに最初から入っている通話アプリで発信すると、30秒あたりの通話料がかかります。
大手キャリアで「かけ放題」に入っていた人は要注意。同じ感覚で通話すると、請求額を見て驚きます。
格安SIMの多くは、専用の通話アプリを経由して発信することで通話料が下がる仕組みになっています。この一手間を知らないまま使い続けるのが、最も多い後悔のパターンです。
回避策
対策は3つあります。
- 契約先が提供する専用通話アプリを必ずインストールし、そこから発信する習慣をつける
- 通話が多い人は、かけ放題オプションの有無と月額を申し込み前に確認する
- 家族との通話が中心なら、無料通話アプリで代替できないか検討する
親のスマホを設定する場合は、標準の電話アプリをホーム画面から外し、専用アプリだけを残しておくと間違いが起きにくくなります。
困ったときに使える手段
店舗がなくても、相談できる手段は用意されています。
事業者によって違いますが、次のような窓口があります。
- チャットサポート……テキストでやり取りします。履歴が残る利点があります
- 電話サポート……有料の場合があるので確認が必要です
- 公式のヘルプページ……手順が図つきで載っていることが多い
- 利用者向けのコミュニティ……同じ機種の事例が見つかることがあります
1つ目は、対応時間が限られていることがあります。
深夜や早朝に対応していない事業者が多いので、申し込む前に受付時間を確認してください。
切り替え作業をする時間帯も、サポートが動いている時間に合わせると安心です。
設定作業をどこまで自分でやるか
オンライン完結の事業者を選ぶ場合、自分でやる作業を把握しておいてください。
具体的には次のような作業になります。
- 申し込みと本人確認書類の撮影
- SIMの挿入、またはeSIMの設定
- 回線切り替えの手続き
- APN設定
- 動作確認
このうち、多くの人がつまずくのはAPN設定です。
ただ、手順は事業者の案内ページに図つきで載っています。
そのとおりに進めれば、10分ほどで終わる作業です。
不安なら、切り替え前に手順ページを開いて一度読んでおいてください。
見落とし2:店舗サポートがない、または有料
料金の安さには理由があります。サポート体制を簡素にすることで実現している面です。
オンライン完結が前提の事業者が多い
格安SIMの多くは、申し込みから設定まで自分で進める前提です。店舗を持たない事業者もあります。
店舗があっても油断はできません。設定サポートが有料だったり、取り扱う内容が限られていたりします。
自分で調べて解決できる人には問題になりません。ただ、対面で相談したい人にとっては大きな差です。
回避策
申し込み前に、次の3点を確認してください。
- 店舗があるか、あるなら生活圏内か
- 電話・チャットの問い合わせ窓口と受付時間
- 設定サポートが有料か無料か
特に高齢の家族の回線を乗り換える場合は、「困ったときに誰が対応するのか」を先に決めておくことが実務上いちばん大切です。
自分がサポート役を引き受けられないなら、店舗のある選択肢を残しておく。多少割高でも、結果的に負担は小さくなります。
トラブル時の相談先としては、国民生活センターの格安スマホに関する注意喚起も参考になります。
見落としを把握したうえで比較すれば、後悔する確率は大きく下がります。
メールアドレスを移す方法もあります
キャリアメールについては、有料で持ち運べる仕組みが用意されています。
乗り換え後も同じアドレスを使い続けられる形です。
ただ、判断する前に確認しておきたいことがあります。
そのアドレスを、いまも本当に使っているかどうかです。
受信はしているが、実際の連絡はメッセージアプリで済んでいる。この状態の人は少なくありません。
その場合、月額を払って持ち運ぶより、登録先を変更するほうが安く済みます。
変更にかかる手間は、登録先の数によります。
洗い出してみて、10件を超えるようなら持ち運びを検討する価値があります。
見落とし3:キャリアメールとキャリア決済が使えなくなる
見落とされやすいのが、ここです。料金表には出てきませんが、生活への影響は大きい。
キャリアメールが受信できなくなる
大手キャリアのメールアドレス(@docomo.ne.jp、@au.com、@softbank.ne.jpなど)。これは原則、解約すると使えなくなります。
月額を払って持ち運べる仕組みが用意されている場合もあります。ただ、その分の費用はかかります。
ネット銀行・保険・会員サービスの登録メールアドレスにキャリアメールを使っていると、大切な通知が届かなくなります。
キャリア決済が使えなくなる
アプリの課金や通販の支払いを携帯料金と合算していた場合。その支払い方法は使えなくなります。
サブスクの支払いをキャリア決済にしていると危険です。決済が止まり、サービスが使えなくなります。
回避策:乗り換え前にやる棚卸し
乗り換えを決めたら、切り替える前に次の作業をしておいてください。
- キャリアメールを登録しているサービスを洗い出し、フリーメールに変更する
- キャリア決済にしている支払いをクレジットカードなどに変更する
- 二段階認証の連絡先をSMS以外にも設定しておく
この棚卸しを乗り換え後にやろうとすると、詰まります。メールが受け取れず、パスワード再設定ができないからです。
順番として、必ず切り替え前に済ませてください。
乗り換え前にやる棚卸しの手順
3つの見落としは、事前の棚卸しでほぼ防げます。
やることは決まっています。
まず、キャリアメールを使っているサービスを洗い出します。
確認する場所は、メールアプリの受信一覧です。
そこに届いている通知の送信元が、そのまま登録先の一覧になります。
金融機関、公共料金、フリマアプリ、会員サービス。この4種類は特に見落としやすい部分です。
次に、キャリア決済を使っている支払いを確認します。
明細に「情報料」や「コンテンツ利用料」として載っているものが該当します。
最後に、通話の使い方を1か月分見ておきます。
誰に、どれくらいの時間かけているか。ここが分かれば、通話オプションの要否を判断できます。
サポートが必要かどうかの見極め
店舗サポートの有無は、人によって重みが違います。
判断の目安を挙げておきます。
これまで設定を自分でやってきた人は、オンラインでも困りません。
一方、機種変更のたびに店舗で設定してもらっていた人は、慎重に考えたほうがいいです。
家族に頼れる人がいるかどうかも、判断材料になります。
自分では難しくても、身近に対応できる人がいれば選択肢が広がります。
逆に、離れて暮らす高齢の家族の回線を移す場合は、サポート体制を優先してください。
月額の差より、困ったときに相談できるかどうかのほうが効いてきます。
後悔しにくい人・しやすい人
ここまでの3点を踏まえると、向き不向きが見えてきます。
後悔しにくい人
設定を自分で調べて進められる人、通話より通信が中心の人、自宅にWi-Fiがある人。
この条件に当てはまるほど、格安SIMの恩恵は受けやすくなります。
慎重に検討したほうがいい人
対面のサポートを重視する人、通話時間が長い人、キャリアメールを主要な連絡先にしている人。
この場合は、乗り換え前の準備がより重要になります。
この場合も乗り換えができないわけではなく、準備を済ませてから移れば問題は避けられます。
乗り換えた後に確認すること
切り替えが終わったら、その日のうちに確認しておきたい項目があります。
- 電話の発信と着信……両方を実際に試します
- データ通信……Wi-Fiを切った状態で確認します
- SMSの受信……二段階認証で使う場合は必須です
- 110番などの緊急通報……発信できる状態か、設定を確認します
3つ目は忘れやすいのですが、後から困る場面が多い項目です。
銀行やフリマアプリの認証がSMSで届かないと、ログインできなくなります。
問題があれば、その日のうちにサポートへ連絡してください。
不安なら、いきなり全部を移さない
それでも不安が残る場合、段階的に移す方法があります。
まず、副回線として格安SIMを1つ契約してみる形です。
実際の通信品質や、サポートの対応を確かめられます。
数か月使ってみて問題なければ、メインを移す判断ができます。
費用は一時的に増えますが、判断材料としては確実です。
家族の回線をまとめて移す予定があるなら、この方法で先に試しておくと説得もしやすくなります。
3つの見落としを一覧で確認する
最後に、乗り換え前のチェックとしてまとめておきます。
- 1か月の通話時間を合計したか
- かけ放題の条件を確認したか
- サポートの窓口と受付時間を確認したか
- キャリアメールの登録先を洗い出したか
- キャリア決済の利用状況を確認したか
- SMS認証を使っているサービスを把握したか
この6つに答えられれば、この記事で挙げた見落としはほぼ避けられます。
逆に、答えられない項目があるなら、そこが後悔につながる部分になります。
準備さえしておけば、後悔する要素はほぼ消えます。
不安の正体を分けて考える
乗り換えをためらう理由は、たいてい漠然とした不安です。
ただ、分けてみると具体的な項目になります。
つながるか、手続きができるか、使えなくなるものがないか。
この3つに答えが出れば、不安の大半は解消されます。
1つ目は、対応エリアと通信網で確認できます。
2つ目は、手順を事前に読んでおけば見通しが立ちます。
3つ目が、この記事で扱った棚卸しの部分です。
準備の時間は、1時間もあれば足ります。
まとめ:3つの見落としは、事前準備で全部避けられる
格安SIMで後悔する人に共通する見落としを整理してきました。
確認すべき項目は3つ。①専用通話アプリを使う習慣をつける ②サポート体制を申し込み前に確認する ③キャリアメールとキャリア決済を切り替え前に棚卸しする。
後悔の原因は格安SIMそのものではなく、確認しないまま乗り換えることにあります。準備さえすれば、多くの人にとって現実的な選択肢です。
サービス内容や料金は変わります。申し込み前に、各社の公式ページで最新の条件を確認してください。
乗り換え全体の確認事項は格安SIMに乗り換える前にやるべき6つの確認もあわせて参考にしてください。
3つとも、知っていれば避けられるものです。
知らずに移った人が後悔している、というだけの話になります。
この記事の確認項目を一度なぞってから判断してください。
