買ったあとで「なんでこれ買ったんだろう」と思うことが続くと、自分は浪費癖があるのかもしれない、と感じますよね。
ご相談でも、この言葉はよく出てきます。ただ、お話をうかがっていくと、本当に問題があるケースはそれほど多くありません。
家計改善アドバイザーとして働いている真鍋みゆです。浪費かどうかを決めるのは金額の大きさではなく、その支出をあとから思い出せるかどうかです。
この記事では、その線の引き方と、直したいと思ったときにやることを順にお伝えします。
「浪費」の線は、金額ではなく記憶で引く
まず、何を浪費と呼ぶかをはっきりさせておきます。ここが曖昧なままだと、使うたびに罪悪感だけが残ります。
高い買い物イコール浪費ではありません
高額でも、納得して選んで、その後もよく使っているなら問題ありません。逆に、数百円でも、買ったこと自体を覚えていない支出が毎日続いていれば、そちらのほうが家計には効きます。
判断の基準は、月末に明細を見て「これは何だったか」と思う支出がどれだけあるかです。
好きなことに使うお金は、削る対象ではありません
趣味や人付き合いは、生活の質そのものです。ここを削ると、しばらくは金額が下がりますが、反動でまとめて使ってしまうことになります。
私がお伝えしているのは、金額の枠を先に決めて、その中では気兼ねなく使うという形です。枠があるほうが、かえって気持ちよく使えます。
「治す」より「起きる場所を変える」と考える
浪費癖という言葉には、直さなければいけない欠点、という響きがあります。この受け止め方だと、うまくいかなかったときに自分を責めることになります。
私がご相談でお伝えしているのは、性格を変える話ではなく、判断しなくて済む場面を増やす話だということです。
疲れているときに正しく判断できる人は、そもそもいません。だから、疲れているときに判断しなくていい形を先に作っておきます。
公的な統計での位置づけ
参考として、公的な数字も置いておきます。
総務省統計局の家計調査(家計収支編)によると、2025年平均で二人以上の世帯の消費支出は1か月あたり314,001円、前年に比べて名目で4.6%の増加、物価の変動を除いた実質でも0.9%の増加でした。単身世帯では173,042円です。
物価が上がっている時期は、支出が増えていても浪費とは限りません。
同じ買い物をしていても金額は上がります。前年と比べるときは、この点を踏まえてください。
まず、当てはまる項目を数える
自分の状態を知るために、次の項目を見てください。
数が多いほど悪い、というものではありません。どこで起きているかを知るためのものです。
- 財布やアプリの残高を、把握しないまま使っている
- クレジットカードの請求額を見て、毎月驚く
- セールと聞くと、必要かどうかを考える前に見に行く
- 買ったことを忘れて、同じものを持っている
- ストレスがたまると、買い物で発散している
- 飲みに誘われると、金額を考えずに参加している
- 家に、使っていない新品がいくつかある
- コンビニに寄る回数を数えたことがない
- 定額サービスを、いくつ契約しているか言えない
- 給料日前に、いつも残高が心もとない
- 貯めようと思ったことはあるが、続いたことがない
- お金の話を、家族や友人としたことがない
当てはまった項目のうち、どれが金額として大きいかを考えてみてください。全部に手をつける必要はありません。
数えるより、金額を出すほうが早いこともあります
項目を数えるのが面倒なら、先月の明細を開いて、覚えていない支出に印をつけるだけでも構いません。
印のついた支出を合計すると、1か月にどれだけあるかが分かります。この金額が、いま手を打てる余地です。
ゼロにする必要はありません。半分になれば十分な変化です。
浪費が起きる4つの場面
ご相談を受けていると、思い出せない支出が起きる場面はかなり似ています。
①疲れているとき
いちばん多いのがこれです。判断する力が落ちていると、目についたものをそのまま買います。
この場合、買い物のルールを増やしても効きません。
原因は買いたい気持ちではなく、休めていないことのほうにあるからです。忙しい時期は、削る対象から外して構いません。
②何を持っているか分からないとき
収納の奥に何があるか把握できていないと、必要になるたびに買うことになります。
家にあるのに買う。この繰り返しが、金額としてはかなり大きいです。
持ち物の量を減らすと、この種の重複が消えます。ミニマムライフを実現するためのコツ で扱っています。
買い足す前に、家の中を一度探す。
この習慣がつくだけで、同じものが増えるのを止められます。とくに日用品や文房具は、買い置きの場所を1か所に決めておくと管理しやすくなります。
③周りに合わせているとき
誘われた場、人へのお祝い、身につけるもの。人との関係が絡む支出は、自分だけの判断では決められません。
ここは無理に断らないでください。
断り方に悩むより、月にいくらまでと枠を決めておくほうが現実的です。枠があれば、「今月はもう1回行ったので」と言えます。
それから、人と比べないでください。
同じ年齢でも、収入も家族構成も違います。周りに合わせて使い続けると、自分の家計とは合わない水準に引きずられます。
④残高を見ていないとき
いま使えるお金がいくらか分からない状態では、買うかどうかを判断できません。
ここは仕組みで解決できます。
生活費用の口座に、その月に使う分だけを入れておく。残高がそのまま「あといくら使えるか」になります。
直すためにやること
原因が分かったら、そこだけ変えます。全部を一度にやろうとすると続きません。
使えるお金を目に見える形にする
いちばん効くのがこれです。口座を、生活費・固定費・貯めるお金の3つに分けてください。
家計簿をつけなくても、残高を見るだけで状況が分かるようになります。詳しい分け方は 家計簿が続かない人のための「記録しない家計管理」 にまとめています。
入ってきた日に、先に取り分ける
使ったあとに残った分を貯める形だと、ほぼ残りません。給料が入った翌日に、決めた金額が別の口座へ自動で移る設定にしてください。
設定の作り方は 先取り貯金の口座の分け方と自動化の設定 で扱っています。
この設定でいちばん大事なのは、金額の大きさではなく止めないことです。生活が回らないなら金額を下げて構いませんが、設定そのものは残してください。
買う前に1日置く
欲しいと思ったものを、その場で買わずに1日置く。これだけで、買わずに済むものがかなり出てきます。
我慢している感覚がないまま回数が減るので、反動も出にくい方法です。
金額で線を引いてもかまいません。ある金額を超えるものは1週間置く、という決め方をしている方もいます。
持ち歩くものを減らす
クレジットカードを何枚も持ち歩いていると、どこから払ったか分からなくなります。日常で使うものを1枚に絞ってください。
通販アプリの通知を切る、アプリそのものを消す、といった形も同じ効果があります。買う経路が減れば、判断する回数も減ります。
使っていい枠を、はっきり作る
制限だけを増やすと、どこかで反動が出ます。ですので、自由に使っていい枠も同時に作ってください。
月にいくらまでは何に使ってもいい、と決めて、その分を別に取り分けておく。使い切っても構いませんし、残しても構いません。
この枠があると、他の費目を守りやすくなります。我慢の総量には限りがあるので、逃げ場を用意しておくほうが結果的に持ちます。
費目ごとの割合は、参考程度に
「住居費は手取りの◯%まで」といった費目ごとの目安をよく見かけます。
ただ、これらは広く出回っている目安であって、公的に定められた基準ではありません。
家族構成や住んでいる地域が違えば、適切な割合は変わります。そこから外れているというだけで、問題があるわけではないんです。
3か月ごとに振り返る
仕組みを変えたら、しばらくは触らないでください。毎月結果を気にすると、うまくいっていても不安になります。
3か月に一度、覚えていない支出がどれだけ減ったかを見てください。
減っていれば続ける、変わっていなければ別の場面を選ぶ。判断はそれだけです。
3か月という間隔なら、季節による支出の波もひととおり入ります。カレンダーに日を入れておくと忘れません。
放っておくと起きること
脅かすつもりはありませんが、書いておくべきことがあります。
「なんとかなってきた」が通用しなくなる場面
病気やけが、失業、家族の事情。収入が止まる場面は、予告なく来ます。
そのときに手元にお金がないと、選べる選択肢が一気に減ります。治療を先延ばしにする、条件の悪い仕事を受ける、といった判断につながることもあります。
分割やリボの残高がある場合
すでに分割払いやリボ払いの残高がある場合は、貯めることより先にそちらを減らすほうが家計全体としては前に進みます。
手数料がかかり続ける支払いを抱えたまま貯蓄だけを増やしても、差し引きでは目減りするからです。まずは、いま何にいくら残っているのかを一覧にしてください。
金額が大きく、自力での見通しが立たない場合は、次の項目の相談先を早めに使ってください。
まず用意するのは「働けない期間を支えるお金」
貯める目的が決まっていないなら、まずここから始めてください。
どのくらい必要かの考え方は 生活防衛資金とは?どのくらい貯めるべきかを解説 で扱っています。
一人で止められないと感じたら
買い物がやめられず、生活や人間関係に支障が出ている場合は、家計の工夫の範囲を超えていることがあります。
各自治体の消費生活センターや、公的な相談窓口では、無料で相談を受け付けています。
返済が続いている場合も同じです。早い段階のほうが、選べる方法が多く残っています。
相談することに抵抗を感じる方も多いのですが、状況を人に話すだけで整理がつくこともあります。誰かに知られる話ではありませんし、費用もかかりません。
家族と暮らしている場合
ご家族の使い方が気になっている場合、指摘の仕方には気をつけてください。お金の使い方を否定されると、たいてい反発が返ってきます。
変えるとしたら、人ではなく仕組みのほうです。共用の支出は同じ口座から出す、月の枠を決める、といった形なら、誰かを責める話になりません。
まずはご自身の分だけ整えて、うまくいってから共有する。この順番のほうが受け入れられやすいです。
まとめ:全部を我慢するのではなく、1つの場面だけ変える
浪費癖という言葉は強く聞こえますが、多くの場合、性格ではなく仕組みの問題です。
思い出せない支出がどの場面で起きているかを特定して、そこだけ変える。
使えるお金を目に見える形にして、入ってきた日に先に取り分ける。やることはこれだけです。
どのくらいで変わるかは、いまの状況によって違うのでお約束はできません。ただ、直そうとして全部を我慢する方法は、まず続きません。
それから、うまくいかない月があっても、性格の問題だと結論づけないでください。
忙しさや体調によって、判断できる量は変わります。仕組みを作っておく理由は、まさにそのためです。
まずは先月の明細を開いて、覚えていない支出に印をつけるところから始めてみてください。
