業務効率化コンサルタントの斎藤ほのかです。
通勤時間を副業に使いましょう、という話はよく見かけます。ただ、実際にやってみると想像どおりにはいきません。
満員電車で資料は作れませんし、座れる日と座れない日で使い方も変わります。ここは根性ではなく、移動中の条件がそのまま制約になっているだけです。
通勤時間にできることを条件別に整理してから、実際の使い方と注意点まで見ていきます。
まず、自分の通勤条件を3つで分類する
使い方を決める前に、自分がどの条件で移動しているかを確認します。
3つの条件
できることを決めるのは、次の3つです。
- 両手が使えるか……座れるか、片手だけか、つり革で塞がっているか
- 音声が使えるか……イヤホンで聞けるか、声を出せる環境か
- 機密情報を開けるか……画面を他人に見られない位置にいるか
この3つの組み合わせで、できることはほぼ決まります。組み合わせを無視した時間術は、続きません。
通勤手段別にできること
先ほどの3条件を、実際の通勤手段に当てはめます。
- 電車・座れる……両手が使え、音声も使える。短い工程をそのまま進められる
- 電車・立っている……片手だけ。音声で聞く、短いメモを取る、その日の予定を決める
- バス……座れれば電車と同じ。揺れが大きいので、読むより聞くほうが向きます
- 車を運転……画面も手も使えません。使えるのは耳だけです。音声を聞くところまでにしてください
- 徒歩……耳は使えます。歩きながらの画面操作は避けてください
- 自転車……作業に使う時間としては数えないでください。後述します
自分がどれに当たるかを決めてから、次に進んでください。
自転車と運転中は「使わない」と決めておく
ここは効率の話より優先します。
自転車の運転中にイヤホンを使う行為は、多くの都道府県の道路交通規則で、安全な運転に必要な音や声が聞こえない状態として禁止されています。音声メモを残す操作も、ながら運転にあたります。
車の運転中も同じで、操作を伴うものはすべて対象外です。ハンズフリーで再生できる音声を聞くところまでが上限になります。
移動時間をすべて使い切ろうとすると、ここで無理が出ます。使わない時間を先に決めておくほうが、結果として安全に続けられます。
実際にできることの具体例
条件が分かったところで、割り当てる作業を挙げます。
両手が使えるとき:短い工程を進める
座れる日は、作業そのものを進められます。ただし降車時刻という中断が確定しているので、中断されても困らない工程を選んでください。
- 調べる(参考になりそうな情報を集めてブックマークする)
- 構成を決める(見出しだけ並べる)
- 返信する(短い連絡を片づける)
逆に、まとまった集中が要る「書く」「作る」は向きません。20分で切れると分かっている時間に割り当てると、毎回入り口で終わります。
片手だけのとき:判断を済ませる
立っているときにおすすめしたいのが、作業ではなく判断のほうを片づける使い方です。
帰りの電車で「今夜やることを1つ決める」だけで、帰宅後に迷う時間がなくなります。
これは副業と本業を両立する人のスケジュールの組み方で挙げた意思決定疲れへの対策そのものです。
音声が使えるとき:入力と記録に使う
耳と口は、通勤中でも比較的自由に使えます。
- 関連分野の音声コンテンツを聞く(インプット)
- 思いついたことを音声メモに残す(アウトプットの種)
音声メモは後で読み返す前提なので、きれいに話す必要はありません。あとで自分が思い出せれば十分です。
何ができないかも決めておく
できることを増やすより、やらないと決めるほうが効きます。
通勤中にやらないこと
次の作業は、通勤時間から外すほうが安全です。
- まとまった集中が要る作業……中断が確定している時間には割り当てない
- 締め切り直前の最終確認……揺れる車内での確認は見落としが増えます
- 込み入った交渉ややり取り……落ち着いて考えられない状況で返信すると、後で修正が要ります
「毎日必ずやる」と決めない
通勤時間は、混雑や体調で条件が変わります。
できる日にやる、できない日は何もしない。そう先に決めておくと、できなかった日に自己嫌悪が生まれません。
公共の場で画面を開くときの注意
ここは時間術の話とは別に、必ず押さえておいてほしい部分です。
のぞき見は現実に起きます
電車内で画面を開くと、隣や後ろの人の視界に入ります。
クライアントから預かった資料、未公開の情報、個人情報を含むデータは、公共の場では開かないでください。作業効率の問題ではなく、契約上の守秘義務に関わります。
開いてよいものを先に決めておく
その場で判断すると、急いでいるときに間違えます。
- 開いてよい……自分のメモ、公開されている記事や資料、自分用の学習コンテンツ
- 開かない……クライアントの資料、契約書、他人の個人情報を含むもの
この線引きを一度決めてしまえば、毎回考える必要がなくなります。
公共Wi-Fiは業務データに使わない
駅や車内の無料Wi-Fiは、誰でも接続できる前提で用意されています。
暗号化されていない接続では、通信の内容が第三者に見られる可能性が残ります。クライアントの資料の送受信やアカウントへのログインは、自分の回線を使ってください。
スマートフォンの回線をパソコンに共有するテザリングを使えば、通信量の範囲内で同じことができます。データ量が気になる場合は、通勤中は閲覧だけにして、送信は自宅で行うという分け方もあります。
のぞき見への備え
画面を見られやすい環境が続くなら、のぞき見防止フィルムを検討する方法もあります。
ただし道具を足す前に、そもそも公共の場では開かないものを決めるほうが確実です。フィルムは角度によっては防ぎきれません。
環境づくりの手順
通勤時間を使えるようにするために、事前に整えておくことがあります。
前日に「開くもの」を決めておく
電車の中で何をするか考え始めると、着くまでに終わります。
前夜のうちに、翌日の通勤中に開くファイルやページを1つ決めておく方法があります。仕組みにしてしまえば、乗ったら開くだけになります。
オフラインで開ける状態にしておく
地下や混雑時は通信が不安定になります。
読む予定の資料は、前夜のうちに端末へ保存しておくと確実です。
道具は最小限にする
タブレットや折りたたみキーボードを増やすと、出す・しまうの手間が増えて使わなくなります。
まずはいま持っているスマートフォンだけで回してみて、それでも足りないと感じたときに考える順番が向いています。
まとめ:条件に合う作業だけを割り当てる
整理すると、こうなります。
できることを決めるのは、両手が使えるか・音声が使えるか・機密情報を開けるかの3条件です。まとまった集中が要る作業は割り当てず、短い工程と判断を片づける時間として使う。これが現実的な形になります。
通勤時間は作業を進める時間というより、帰宅後の作業を判断ゼロで始めるための準備時間だと考えると、無理なく組み込めます。
帰りの電車で、今夜やることを1つだけスマートフォンのメモに書いておく。これなら、立っていても片手で終わります。
帰宅後に迷う時間を、移動中に先に削っておく。通勤時間の使い道としては、これがいちばん効きます。











