棚の上に、いつ買ったか思い出せないものが並んでいる。クローゼットを開けると、去年着なかった服がそのままある。
片づけようと思ってはいるけれど、どこから手をつければいいのかわからない。ご相談のなかで、この話はとてもよく出てきます。
家計改善アドバイザーとして500名以上の家計を拝見してきた真鍋みゆです。この記事では、持ち物を減らしてすっきり暮らすための順番をまとめます。
ただし最初に、あまり言われない話もしておきます。モノを減らしても、家計の数字はそこまで大きく変わりません。
そのうえで、それでも減らす価値がどこにあるのかをお伝えします。
モノを減らすと、家計のどこが変わるのか
「ミニマムな暮らしにすればお金が貯まる」と言われます。でも、家計を拝見していると、そこまで単純ではありません。
減る費目は、思ったより大きくありません
公的な数字を置いておきます。
総務省統計局の家計調査(家計収支編)によると、2025年平均で単身世帯の被服及び履物への支出は1か月あたり4,908円、家具・家事用品は6,120円でした。同じ調査で、単身世帯の消費支出全体は173,042円です。
もちろん人によって差はありますし、この調査の単身世帯には平均年齢58.6歳という幅があるので、そのままご自身に当てはまるものではありません。
それでも傾向としては言えます。モノを減らすことで直接減らせる費目は、家計全体のなかでは小さいほうです。
本当に効くのは「買う回数が減ること」
では意味がないのかというと、そうではありません。効き方が違うだけです。
持ち物が少ない方は、いま何を持っているかを把握しています。
だから、同じようなものを買い足すことがありません。ここが効きます。
逆に、収納の奥に何があるかわからない状態だと、必要になるたびに買うことになります。
家にあるのに買う。この繰り返しが、金額としてはいちばん大きいです。
探す時間も、実は支出です
もう1つ、金額に出ない負担があります。探す時間です。
どこにしまったか思い出せず、10分かけて探す。
見つからないので買い直す。この繰り返しは、家計簿には「日用品費」としてしか出てきません。
持ち物が少ないと、探す時間そのものが消えます。すっきりした暮らしが楽なのは、見た目の問題だけではないんです。
スペースの費用という考え方
もう1つ、見落とされやすい点があります。使っていないモノは、家賃を払っている場所を占めています。
収納が足りないからと広い部屋に住み替えたり、外部の収納サービスを借りたりすると、そこは毎月の固定費になります。モノの量が住居費に跳ね返る形です。
支出を性質ごとに分けて考える方法は 支出を「固定費・変動費・自己投資」で仕分ける基準 にまとめています。
捨てる前に、増える入り口を止める
片づけが続かない方の多くは、捨てる作業から始めています。でも、入ってくる量が変わっていなければ、しばらくすると元に戻ります。
買う経路を1つ減らす
まず、モノが家に入ってくる経路を書き出してみてください。
通販アプリ、コンビニ、休日の買い物、セール通知のメール、動画やSNSで見かけた商品。この中で、いちばん頻度が高いものが1つあるはずです。
その経路を1つだけ止めます。
アプリを消す、通知を切る、その店に寄る曜日を決める。全部を断つ必要はありません。
買う前に1日置く
欲しいと思ったものを、その場で買わずに1日置く。これだけで、買わずに済むものがかなり出てきます。
買い物かごに入れたまま翌日まで置いておいて、翌日も欲しければ買う。この形にしておくと、我慢している感覚がないまま回数が減ります。
1日で足りないと感じるなら、金額で線を引いてもかまいません。ある金額を超えるものは1週間置く、という決め方をしている方もいます。
収納用品を買い足さない
片づけを始めるときに、まず収納ケースを買いに行く方がいます。ここは一度立ち止まってください。
収納を増やすと、そのぶん入る量が増えます。減らすつもりで容量を足しているので、しばらくすると同じ状態に戻ります。
買うのは、減らし終わって、それでも足りないと分かってからで十分です。順番を逆にすると、収納用品そのものが不要品になります。
「安いから」で入ってくるものに注意する
セールやおまけでもらったものは、支払いが小さいぶん、判断せずに家に入ってきます。
そして、使わないまま置き場所を占めます。安く買ったものほど、手放すときに「もったいない」と感じて残りやすいのも難しいところです。
買い物の判断そのものを整えたい方は 上手な買い物の仕方 もあわせてご覧ください。
手放す順番は「判断が軽い順」
ここからが、実際に減らす工程です。順番を間違えると、最初の30分で止まります。
思い出のあるものから始めない
写真、手紙、いただきもの。ここから始めると、1つずつに時間がかかって進みません。
最初に手をつけるのは、判断がすぐ終わるものです。空き箱、使い終わった袋、期限の切れたもの、壊れているもの、同じものが複数あるもの。
迷わないものから片づけると、目に見えて場所が空きます。この「空いた」という実感が、次に進む力になります。
服は「1年着なかったか」で分ける
服はいちばん量が多く、判断も難しい場所です。
1年のあいだ一度も着なかったものは、来年も着ない可能性が高いと考えられます。ただし、冠婚葬祭のように出番が決まっているものは別に扱ってください。
それでも決められないときは、いったん別の箱にまとめて、半年後にもう一度見る形にしてもかまいません。今すぐ全部を決めなくても大丈夫です。
「もったいない」で止まったときの考え方
使っていないのに手放せない理由の多くは、買ったときの金額を思い出すからです。
ただ、その支払いはもう終わっています。
手元に置いておいても戻ってきません。ここで判断すべきなのは、これから先も置き場所を使い続ける価値があるかどうかです。
それでも決められないなら、無理に手放さなくてかまいません。
判断を先送りにしたものだけを1か所にまとめておいて、次の点検のときにもう一度見る。この形なら作業は止まりません。
一度に全部やろうとしない
休日を1日使って家中を片づけようとすると、途中で力尽きます。しかも、出しっぱなしの状態で終わると、かえって散らかります。
引き出し1つ、棚1段。
この単位で区切ってください。15分で終わる範囲を選ぶと、平日でも進められます。
持たずに済ませられるもの、そうでないもの
買わずに借りるという選択肢もあります。ただ、これも向き不向きがあります。
使う頻度が低いものは借りるほうが軽い
年に数回しか使わないものは、借りるほうが置き場所も手入れも要りません。
本は図書館で借りられますし、レジャー用品はその場で貸してもらえることが多いです。車についても、レンタルやカーシェアという形があります。
「持っていないと不安」という気持ちは自然なものですが、実際の使用回数を数えてみると、思っていたより少ないことがほとんどです。
毎日使うものは、持ったほうがいい
一方で、毎日使うものを借りる形にすると、手間も費用もかえって増えます。
借りる・買うの線引きは、頻度で決めてください。
毎日使うものは良いものを1つ持ち、たまにしか使わないものは借りる。この分け方がいちばん無理がありません。
定額サービスは固定費になります
借りる形のサービスは、契約すると毎月の支払いが続きます。使わない月があっても引き落とされます。
モノを減らすつもりで契約が増え、固定費が上がっていたという例は珍しくありません。
契約したものは一覧にして、年に一度は使用頻度を確認してください。固定費の見直し方は 固定費を抑えて節約をする3つの方法 で扱っています。
手放し方は、手間の少ない順に選ぶ
手放すと決めたあと、方法で迷って止まってしまう方が多いです。ここも順番を先に決めておくと迷いません。
売る・譲る・処分するの使い分け
売れば多少のお金にはなりますが、写真を撮って、説明を書いて、梱包して発送する手間がかかります。
点数が多いなら、まとめて買い取ってもらえる店に持ち込むほうが早く終わります。1点あたりの金額は下がりますが、手放す作業が止まらないことのほうが大事です。
それも難しければ、譲るか処分してかまいません。売れるはずのものを取っておいて、そのまま何年も置いている状態がいちばん惜しいです。
自治体のルールを先に確認する
大きな家具や家電は、自治体によって出し方や手数料が決まっています。
先に確認しておかないと、片づけた当日に運び出せず、部屋の真ん中に置いたままになります。お住まいの自治体の案内で、回収の申し込み方法と日程を確認しておいてください。
家族と暮らしている場合
ここは慎重に進めてください。ご家族のものを、本人に確認せずに手放すのは避けたほうがいいです。
片づけをきっかけに関係がぎくしゃくしてしまうと、その後の家計の話もしにくくなります。まずはご自身のものだけを対象にしてください。
共用のものについては、置き場所を決めるところから始めると話が進みやすくなります。減らす話ではなく、どこに置くかの話なら合意しやすいからです。
手放したお金の行き先を決めておく
売って入ったお金は、そのまま使ってしまいがちです。
手放す前に、入ったぶんをどうするか決めておいてください。貯蓄用の口座に入れる、という形にしておけば、片づけの成果が残ります。
戻らないようにするための、月1回の点検
片づけたあと、半年でもとに戻ってしまうことがあります。これは意志の問題ではなく、点検の機会がないだけです。
写真を撮っておく
片づけが終わった状態を、部屋ごとに写真に撮っておいてください。
見慣れてしまうと、少しずつモノが増えていることに気づけません。写真と見比べると、変化がはっきりわかります。
点検は15分で終わらせる
月に一度、日を決めて15分だけ見てください。増えているものがあれば、その経路を思い出します。
ここで大事なのは、また全部を片づけようとしないことです。増えたぶんだけ戻せば十分です。
増えたときは、原因のほうを見る
点検で増えているものが見つかったら、そのモノ自体より、なぜ入ってきたかを見てください。
収納が足りなくて出しっぱなしになっているのか、通販で買ったのか、もらったものなのか。原因が同じなら、次の月も同じことが起きます。
ここまで来ると、片づけは掃除ではなく、買い方の点検になります。家計の見直しと、やっていることはほとんど同じです。
ミニマリストを目指さなくていい
最後に書いておきたいのは、持ち物を極端に減らすことが正解ではないということです。
趣味の道具や、家族との時間に使うものまで手放して、暮らしがつまらなくなってしまっては意味がありません。減らすかどうかは、金額ではなく、そのものがいまの生活で働いているかどうかで決めてください。
私がご相談のなかでお伝えしているのは、目標の数を決めないことです。「服は何着まで」と決めた方は、達成した瞬間に興味を失って、その後じわじわ戻っていくことが多いからです。
数ではなく、把握できているかどうか。ここを基準にすると、無理なく続きます。
まとめ:減らす作業より、増える経路を止めるほうが効きます
すっきりした暮らしを作るために必要なのは、まとまった時間でも強い意志でもありません。
入ってくる経路を1つ止める。判断の軽いものから手放す。
手放したら、写真を撮って月に一度だけ見る。この3つで、状態はかなり保てます。
家計への効き方は、費目が直接減るというより、同じものを買い足さなくなることのほうにあります。いくら浮くかをお約束することはできませんが、買う回数が減れば支出は安定します。
今日は引き出し1つだけ、15分。そこから始めてみてください。
