キャリアアドバイザーの秋吉しおりです。
働きながら転職活動をすると決めた方から、いちばんよくいただくのが「どう時間を作ればいいですか」というご相談です。
ここで多くの方が、まず応募数を増やそうとされます。ただ、実際に詰まるのはそこではありません。
在職中の活動で足りなくなるのは、応募する時間ではなく、面接に出られる時間のほうです。
枠から逆算して組み立てる。この考え方さえ持っていただければ、無理のない形が見えてきます。
どのくらいの期間がかかるのか
まず、全体像から見ていきます。
期間には大きな幅があります
準備から入社までにかかる期間は、職種や時期、応募先の数によってかなり違います。数週間で決まる方もいれば、半年以上かかる方もいます。
「平均◯か月」という数字を目標にすると、かえって焦りにつながります。ここでは、工程ごとにどのくらいかかるかを見ておきます。
工程ごとの目安
- 準備……経験の棚卸し、書類作成。数日〜2週間程度
- 応募と書類選考……結果が出るまで1〜2週間かかることが多いです
- 面接……2〜3回。日程調整を挟むため、1社あたり3〜6週間ほど
- 内定から入社まで……退職の申し出、引き継ぎ、有給消化。1〜2か月程度
後半の「内定から入社まで」を短く見積もる方が多いのですが、ここは自分だけでは決められない部分です。就業規則で退職の申し出時期が定められている場合もあるので、確認しておいてください。
応募先を絞るという考え方
枠が限られているなら、応募先を絞るという方向もあります。
数を受けて確率を上げるやり方は、時間が取れる方には有効です。
ただ、在職中で枠が週1〜2しかない場合、同じやり方では消耗してしまいます。
絞るときの基準としてお伝えしているのは、次の2つです。
- その会社に入りたい理由を、3行で書けるか……書けない場合、面接でも伝わりません
- 求人票の必須条件を、8割方満たしているか……大きく外れていると、準備の労力に見合いません
この2つを満たす会社に絞ると、1社あたりの準備に時間をかけられます。
結果として、少ない応募数でも通過率が上がることがあります。
ボトルネックは「面接に出られる枠」です
ここがこの記事の中心です。
応募はいくらでもできますが
求人を探して応募するだけなら、通勤中でも夜でもできます。数を増やすこと自体は難しくありません。
問題はその先です。書類が通ると、面接の日程調整が来ます。
平日の日中に、何回抜けられるでしょうか。
枠を数えてみる
1か月のうち、面接に使える時間がどれだけあるかを先に数えてください。
- 有給休暇を何日使えるか
- 半休を取れる制度があるか
- フレックスや在宅勤務で、中抜けできる日があるか
- 定時後(18時以降)の面接に応じてくれる企業がどれだけあるか
数えてみると、月に3〜4枠しかないという方が多いのではないでしょうか。あなたの場合、いくつになりましたか。
枠から応募数を決める
1社あたり2〜3回の面接があるとすると、月に3枠なら同時に進められるのは1〜2社です。
10社に応募して全部通ってしまうと、日程が組めずに辞退することになります。相手にも失礼になりますし、自分も消耗します。
ですから、順番は逆です。枠を数えて、そこから同時に進める社数を決め、応募のペースを合わせていきます。
無理のない進め方
具体的な組み立て方を挙げます。
波を作る
一度に全部応募するのではなく、2〜3社ずつの波にして進めます。
1つ目の波の結果が出てから次を出すと、日程が重なりません。書類の内容も、前の波の反応を見て調整できます。
平日夜と土曜を確認する
意外と知られていませんが、応募先によっては定時後や土曜の面接に対応してくれることがあります。
「在職中のため、平日は18時以降か土曜であれば伺いやすいのですが、ご調整は可能でしょうか」と最初に伝えておくと、後の調整が楽になります。聞いてみて不利になることは、まずありません。
オンライン面接を活用する
移動時間がなくなるぶん、昼休みや中抜けでも対応しやすくなります。
ただし、自宅以外から参加する場合は、静かで背景が映り込まない場所を確保できるかを事前に確認しておいてください。
準備は細切れの時間で進める
書類の作成や企業研究は、まとまった時間がなくても進められます。
本業と並行して何かを進める組み立て方は、副業と本業を両立する人のスケジュールの組み方で扱っている考え方がそのまま使えます。細切れの時間には短い工程を、まとまった時間には集中が要る工程を割り当てる、という分け方です。
面接の時間をどう作るか
在職中の活動でいちばん難しいのが、面接の時間の確保です。
実際に使われている方法をいくつか挙げておきます。
- 半休を使う……午前休で午後から出社、あるいはその逆。1日単位より調整しやすい形です
- 始業前・終業後の枠を相談する……朝8時台や夜19時以降に対応してくれる企業もあります
- 土曜の面接を打診する……業種によっては受けてもらえることがあります
- オンラインで一次を済ませる……移動時間がなくなる分、昼休みでも収まることがあります
複数社を受ける場合、同じ日にまとめられないか調整してみてください。
午前と午後で2社入れられれば、休みの消費を抑えられます。
ただ、面接が続くと集中が落ちますので、3社以上を1日に入れるのはおすすめしていません。
有給が取りづらい職場の場合は、通院や家庭の用事といった理由で問題ありません。詳しく説明する必要はないと考えています。
勤務先との関係で気をつけること
在職中ならではの注意点をまとめます。
会社の設備は使わない
これは実務上、必ずお伝えしています。
会社のパソコンやメールアドレス、社内のネットワークを転職活動に使うのは避けてください。履歴が残る可能性があり、就業規則との関係でも問題になり得ます。
連絡用のメールアドレスは、私用のものを用意しておいてください。
服装で分かることがあります
普段が私服の職場で、その日だけスーツで出社すると気づかれやすくなります。
着替える場所を確保しておくか、オンライン面接を選ぶかで対応できます。細かい話ですが、実際によく起きます。
同僚には話さない
親しい同僚に相談したくなる場面があると思います。
ただ、伝わり方はこちらで制御できません。決まるまでは、社外の人に話すほうが安全だと思います。
本業の質は落とさない
転職活動中に本業が疎かになると、内定が出なかった場合に居づらくなります。
そして、円満に辞められるかどうかは、最後の引き継ぎの質にかかっています。いま働いている会社との関係は、辞めた後も残ります。
1週間の予定に落とし込んでみる
枠を数えたあと、実際の1週間に置いてみると進めやすくなります。
たとえば、面接に出られる枠が週2つだとします。
この場合、1週間の使い方はおおよそ次のような形になります。
- 平日の朝か夜に30分……求人を見る、応募する
- 週2枠……面接(半休またはオンライン)
- 土曜の午前に1〜2時間……書類の調整、面接の振り返り
- 日曜は空けておく……休息のために予定を入れない
日曜を空けておくことを、私はいつもお伝えしています。
在職中の活動は、思っている以上に体力を使います。
予定を詰めすぎると、本業にも活動にも影響が出てしまいます。
この形で回すと、1か月あたり応募は6〜8社、面接は8枠ほどが上限になります。
数として少なく感じるかもしれませんが、無理のない範囲で続けるほうが結果につながりやすいと感じています。
途中で疲れてしまったら
両立が続かないと感じたときの話もしておきます。
止まっても構いません
書類が通らない時期が続くと、消耗します。仕事をしながらだと、なおさらです。
そういうときは、一度立ち止まって1〜2週間手を止めても問題ありません。求人はなくなりませんし、再開したときに条件が悪くなるわけでもありません。
止まる前に、記録だけ残す
ただ、ひとつだけお願いしたいことがあります。
止まる前に、どこまで進めたかを書き残しておいてください。応募した企業、選考の段階、次にやること。
これがあると、再開するときに思い出す手間がなくなります。
体調が優先です
睡眠を削って活動時間を作るのは、おすすめできません。
判断力が落ちた状態で会社を選ぶと、後から見え方が変わります。急ぐ理由が特にないなら、期間を延ばすほうを選んでください。
辞めてから活動する場合との比較
最後に、選択肢としての比較も置いておきます。
在職中に進める場合
- 収入が途切れないので、条件を吟味できます
- 決まらなくても現状が続くので、焦りが小さくなります
- 一方で、面接の枠が限られ、期間は長くなりがちです
退職してから進める場合
- 時間を自由に使えるため、日程調整の制約がありません
- 一方で、収入が途切れます。生活費の備えが必要です
- 期間が延びるほど、条件面で妥協しやすくなる傾向があります
資金の目安については、転職を考え始めたとき最初にやる3つの準備で触れています。
どちらが良いかは状況によりますが、心身の調子に問題がないのであれば、在職中に進めるほうが選択肢を広く保てることが多いように思います。
内定が出てからの流れ
スケジュールを組むとき、内定後の期間まで見ておくと慌てずに済みます。
内定通知を受け取ってから、実際に入社するまでには、いくつかの段取りがあります。
まず、条件を書面で確認します。ここで金額や勤務地、業務内容を確かめます。
承諾の返事には期限が設けられていることが多く、1週間程度が一般的です。
承諾したら、現職へ退職の意思を伝えます。就業規則で申し出の時期が定められていますので、事前に確認しておいてください。
引き継ぎの期間を含めると、退職までに1〜2か月かかることが多いです。
入社日を決めるときは、この期間を見込んでおく必要があります。
ここを短く見積もると、現職にも転職先にも迷惑がかかってしまいます。
有給の消化を希望する場合も、この段階で相談しておくと調整しやすくなります。
思ったより長引いたとき
目安の期間を過ぎても決まらないことがあります。
そのとき、応募数を増やす前に一度立ち止まってみてください。
見るのは、どの段階で止まっているかです。
書類で止まっているなら、応募先の選び方か書類の内容に原因があります。
一次面接で止まるなら、伝え方の準備に手を入れる余地があります。
最終で止まるなら、条件や志望の理由のすり合わせが足りていないのかもしれません。
段階によって、手を入れる場所がまったく違います。
数を増やすのは、原因を特定してからでも遅くありません。
在職中であれば、焦らずに進められるという強みがあります。その利点を活かしてください。
始める前に決めておきたいこと
活動を始める前に、2つだけ決めておくと迷いが減ります。
ひとつは、いつまでに決めるかという期限です。区切りがないと、活動が長引きやすくなります。
もうひとつは、どこまで条件を下げてよいかという下限です。
疲れてくると判断が緩みますので、元気なうちに決めておくほうが確実です。
この2つを紙に書いて、見えるところに置いておいてください。
途中で迷ったとき、立ち戻る場所になります。
活動が始まると、日々の予定が細かくなります。
カレンダーに面接と準備の時間を先に入れておくと、後から埋まりません。
予定として先に押さえてしまうほうが、結果的にきちんと守れます。
まとめ:枠を数えてから、応募数を決める
組み立ての順番を、もう一度整理します。
面接に使える枠を先に数え、そこから同時に進める社数を決めて、応募を波にして出す。準備は細切れの時間で進め、本業の質は落とさない。
応募数を増やしても、面接に出られなければ前に進みません。ボトルネックの側から設計してください。
今月、面接に使える枠がいくつあるか。まずはそれを数えてみるところからでしょうか。
3枠なら3枠なりの進め方があります。
枠が極端に取れないという場合は、どうでしょうか。オンライン面接に対応している応募先を優先するという選び方もあります。
