キャリアアドバイザーの秋吉しおりです。
職務経歴書を前にして、手が止まってしまう。面談でこのご相談を受けるとき、多くの方が「自分には書けるような実績がない」とおっしゃいます。
ただ、そこから一緒に業務を掘り下げていくと、書けることが次々に出てくることがよくあります。足りないのは経験ではなく、経験を見る解像度のほうだと感じています。
解像度を上げる手順は、そう複雑ではありません。紙を1枚用意していただければ、今日から進められます。
「書くことがない」と感じる本当の理由
最初に、なぜそう感じるのかを分解しておきます。
理由1:粒度が粗い
いちばん多いのがこれです。
自分の仕事を「営業事務をやっていました」の一言でまとめてしまうと、それ以上書けなくなります。実際には、その中に見積書の作成、在庫の確認、納期の調整、問い合わせ対応と、いくつもの業務が含まれているはずです。
粗い粒度で振り返っているかぎり、どんな経歴でも「書くことがない」になります。
理由2:当たり前だと思っている
毎日やっていることは、本人にとって特別に見えません。
でも、その業務を初めて担当する人から見れば、手順も判断も知らないことばかりです。慣れているから価値がない、ということにはなりません。
理由3:数字がないと書けないと思っている
「売上を◯%伸ばした」のような実績がないと書けない、と思い込んでいる方も多いです。
後ほど詳しくお伝えしますが、使える数字は売上だけではありません。事務職や管理部門の方でも、数字で表せる要素は見つかることが多いです。
まず、1日を工程まで分解する
ここから実際の手順に入ります。準備するのは紙かメモアプリだけで大丈夫です。
昨日1日を時系列で書く
「これまでのキャリア」から考えると止まるので、範囲をぐっと狭めます。
昨日、出社してから退社するまでに何をしたか。時刻と一緒に、思い出せるだけ書き出してみてください。
9:00 メール確認・返信(12件) 9:30 見積書作成(3社分) 11:00 在庫状況を倉庫に確認、納期を営業に共有 13:00 請求書の発行と発送準備 15:00 新人からの質問対応(システムの入力方法) 16:00 月次の売上データ集計
ここまで書ければ、材料はもう手元にあります。
それぞれに「判断」を足す
次に、いま書いた各項目について、自分が何を考えて決めたかを書き足します。
たとえば「見積書作成」なら、単に様式を埋めただけでしょうか。それとも、過去の取引条件を見て掛け率を判断したり、納期を確認してから出したりしていないでしょうか。
作業と判断を分けて書くと、後者がそのまま職務経歴書の中身になります。
1週間、1か月、1年に広げる
日次の次は、頻度の低い業務です。
- 週に1回やること……定例会議の資料作成、進捗の取りまとめ
- 月に1回やること……月次の締め、請求処理、報告書
- 年に数回やること……棚卸し、監査対応、新人研修、システムの更新
頻度が低い業務ほど、担当できる人が限られていることが多く、書く価値があります。あなたの場合、年に数回しかない業務は何でしょうか。
複数の会社を経験している場合
転職の回数が複数ある方は、書き方に迷うことがあります。
すべてを同じ分量で書くと、読み手が要点をつかみにくくなってしまいます。
おすすめしているのは、応募先に近い経験を厚く、それ以外を簡潔にまとめる形です。
直近と、応募先に関係する職務は詳しく。関係の薄いものは、期間と職種、担当範囲の3行で足ります。
省略するのではなく、分量で軽重をつける、という考え方になります。
在籍期間が短い会社がある場合も、書かないという選択はしないでください。
職歴の空白は、面接で必ず触れられる部分です。
掘り下げるための質問
それでも出てこないという方のために、面談で実際に使っている質問を並べておきます。1つずつ答えてみてください。
変化について
- 入社したときと今とで、できるようになったことは何でしょうか
- あなたが担当してから、変わった手順やルールはありますか
- 以前は時間がかかっていたのに、今は早く終わるようになった作業はありますか
周囲との関係について
- あなたに聞きに来る人はいますか。どんなことを聞かれますか
- あなたが休むと、誰が困るでしょうか。何が止まりますか
- 新しく入った方に、何かを教えたことはありますか
2つ目は答えにくいかもしれませんが、あなたが休んだときに止まるものが、あなたの担っている役割です。
困りごとについて
- この1年で、いちばん面倒だった仕事は何でしたか
- それを、どうやって片づけましたか
- 同じことが起きないように、何かしましたか
面倒だった仕事は、たいてい難易度が高かった仕事です。ここに書けることが眠っています。
範囲について
- 担当している取引先や部署は、いくつありますか
- 扱っている商品やサービスの種類はどれくらいですか
- 使っているシステムやツールを、全部挙げられますか
売上以外の数字で書く
質問に答えて材料が出たら、次は数字にしていきます。
使える数字は4種類あります
営業職でなくても、次のどれかは出せるのではないでしょうか。
- 件数……月に何件処理したか、何社を担当したか、何人に対応したか
- 時間……1件あたり何分かかるか、締めに何日かかるか
- 対象人数……何人分の給与計算か、何名の研修か、何部署にまたがるか
- 削減率・変化……手順を変えて何時間短くなったか、問い合わせが何件減ったか
「月間120件の受注処理」「40名分の勤怠管理」。これだけで、規模が伝わる記述になります。
正確な数字が分からないとき
過去の数字を思い出せない場合もあると思います。
その場合は、幅で書くか、「約」を付けて構いません。ただし、大きく盛ることは避けてください。
面接で具体的に聞かれたときに答えられなくなり、かえって信頼を損ないます。
いま在職中であれば、今月の件数を実際に数えてみるのが確実です。
改善は「小さくても書く」
「システムを導入して業務を効率化」のような大きな話でなくて構いません。
入力の手順書を作った、確認の順番を変えてミスを減らした、よく使う文面を定型にした。こうした小さな工夫のほうが、日常の仕事ぶりが伝わります。
書式をどう選ぶか
職務経歴書には決まった書式がありません。そのため、どれを使うかで迷う方が多いところです。
大きく分けると、次の3つになります。
- 編年体……古い順に並べる形。経験が一貫している場合に向いています
- 逆編年体……新しい順に並べる形。直近の経験を見てほしい場合に向いています
- キャリア形式……職務内容ごとにまとめる形。転職回数が多い場合や、複数の分野を経験している場合に向いています
迷った場合は、逆編年体を選んでおくと大きく外れません。
採用担当の方が最初に見るのは、たいてい直近の経験だからです。
応募先が指定の書式を用意している場合は、それに従ってください。
指定がある場合、独自の書式で提出すると読み手の負担になります。
まとめ方の型
材料がそろったら、読み手に伝わる形に整えます。
3つの層で書く
職務経歴書の各社の欄は、次の順に書くと読みやすくなります。
- 1行目:立ち位置……「◯◯部にて、△△を担当(在籍◯年、チーム◯名)」
- 2〜5行目:担当業務……分解した業務を箇条書きで。件数や規模を添える
- 最後:工夫と結果……改善したこと、それによって何が変わったか
書き出しの動詞をそろえる
箇条書きの語尾がばらつくと読みにくくなります。
「〜を担当」「〜を作成」「〜を管理」のように、名詞+動詞の形でそろえてみてください。
応募先ごとに順番を変える
すべての経験を同じ比重で書く必要はありません。
応募先の求人票を読み、そこで求められている業務に近いものを上に持ってきます。内容を変えるのではなく、並び順を変えるだけです。
1社あたりの分量
直近の勤務先を厚く、古い経歴は簡潔に。全体でA4用紙1〜2枚に収まるのが一般的です。
書けることが増えすぎた場合は、応募先に関係の薄いものから削っていきます。
書き終えたあとの確認
一通り書けたら、提出の前に確認しておきたい点があります。
私がご相談でお伝えしているのは、次の4つです。
- 事実と違う記載がないか……在籍期間、役職名、担当範囲。在籍証明と食い違うと問題になります
- 守秘義務に触れていないか……取引先名、未公開の数字、社内の仕組みの詳細
- 専門用語が伝わるか……社内でしか通じない略語は、一般的な言い方に置き換えます
- 分量が読みやすい範囲か……多くても2枚程度に収まっているか
2つ目は見落としやすい部分です。
具体的に書くほど評価されると考えて、書いてはいけない情報まで入れてしまうことがあります。
迷った場合は、社外の人に話しても問題ない範囲か、という基準で考えてみてください。
それでも埋まらないと感じたら
ここまでやっても不安が残る場合について、いくつかお伝えします。
在籍期間が短い場合
1年未満の在籍でも、担当した業務は書けます。期間の短さは事実として書き、その中で何をしたかを具体的に埋めてください。
短いこと自体より、空白のほうが説明を求められます。
ブランクがある場合
離職期間がある場合は、その期間に何をしていたかを1行添えると、読み手の疑問が減ります。
療養、家族の事情、学び直し。詳細に書く必要はありませんが、空欄のままにしないほうが進みやすくなります。
誰かに読んでもらう
自分では当たり前に見えることが、他人には価値に見えることがあります。
同僚や前職の知人に読んでもらい、「これはすごいと思う」と言われた部分を上に持ってくる。それだけでも印象が変わります。
職務経歴書は、面接の台本にもなります
書き上げた職務経歴書は、提出したら終わりではありません。
面接では、この内容に沿って質問されることがほとんどです。
ですから、書いた内容はすべて口頭で説明できる状態にしておいてください。
書けるけれど話せない項目があるとしたら、それは自分の中で整理しきれていない部分かもしれません。
提出前に、書いた項目を上から順に、声に出して1分ずつ説明してみてください。
詰まったところが、面接でも聞かれやすい部分になります。
逆に、この作業をしておくと、面接の準備を別途やる必要がほとんどなくなります。
棚卸しと書類作成と面接対策は、実は同じ作業の別の面だと考えています。
1回書けば、次からは更新で済みます
最初に作るときは、時間がかかります。
ただ、一度この形で棚卸しをしておくと、次の機会には更新するだけで済みます。
おすすめしているのは、転職の予定がなくても年に1度だけ書き足しておくことです。
記憶が新しいうちに残しておくと、いざ必要になったときの負担がまったく違います。
数字や期間は、時間が経つほど思い出せなくなってしまいます。
提出前に、もう一度読み返す
書き上げた直後は、内容を客観的に見づらい状態にあります。
一晩おいてから読み返すと、伝わりにくい表現に気づけることがあります。
時間がない場合でも、印刷するか画面の表示を変えてみてください。
見え方が変わるだけで、気づける箇所が増えます。
書き終えたものは、応募先ごとにコピーして調整してください。
元のファイルは残しておくと、次に使うときの土台になります。
まとめ:分解すれば、書ける
棚卸しの手順を振り返っておきます。
昨日1日を時系列で書き、それぞれに判断を足し、頻度の低い業務まで広げる。出てきた材料を件数・時間・対象人数・変化の4種類の数字で表し、立ち位置・担当業務・工夫の3層にまとめる。
「書くことがない」は、経験がないという意味ではありません。まだ言葉になっていない、というだけのことです。
今日は、昨日1日を時系列で書き出すところまでにしてみてはどうでしょうか。10分ほどで終わりますし、その紙がそのまま素材になります。
書き出した内容は、面接で話す材料にもそのまま使えます。話す形に変える手順は面接で自己PRが思いつかない人のための経験の言語化に続けて書いています。
まだ転職するかを決めていない段階の方は、転職を考え始めたとき最初にやる3つの準備から順に読んでいただくのがよいかもしれません。
