キャリアアドバイザーの秋吉しおりです。
「入ってみたら思っていたのと違った」。転職後に一番よく伺うのが、この言葉です。
このずれの多くは、求人票に書かれていなかったことで起きています。嘘が書いてあったわけではなく、書く義務のない項目が空白のままだった、というだけのことがほとんどです。
では、その空白はどうすれば埋まるのでしょうか。順に見ていきます。
求人票に書かれていないこと
まず、求人票から何が読めて何が読めないのかを整理しておきます。
読めること
職種、勤務地、給与の幅、休日、加入している保険。ここは記載されているとおりです。
読めないこと
一方、入社後の満足度を左右する部分は、多くの場合書かれていません。
- 実際に何人が辞めているか(離職率、平均勤続年数)
- 残業時間の実態(「月平均20時間程度」の根拠と分布)
- 評価制度が実際にどう運用されているか
- 制度としてある育児休業を、実際に何人が使っているか
- 入社した人がどう受け入れられるか
後悔の原因は、書かれていた条件よりも、この空白部分にあることのほうが多いように思います。
まずは、公的なデータベースで調べてみる
意外と知られていないのですが、企業の職場情報は国のサイトで検索できます。
しょくばらぼで確認できること
厚生労働省が運営する職場情報総合サイト(しょくばらぼ)では、企業名から次のような情報を調べられます。
- 平均継続勤務年数(男女別に出ている企業もあります)
- 月平均の所定外労働時間
- 年次有給休暇の取得率
- 育児休業の取得率
- 中途採用に関する情報
このサイトは、若者雇用促進総合サイト・女性の活躍推進企業データベース・両立支援のひろばに企業が公表した情報をまとめたものです。企業によっては、テレワークや副業の可否といった独自の項目を追加していることもあります。
掲載項目は企業ごとに差がありますので、実際にどこまで出ているかは、志望先の名前を入れて確かめてみてください。企業が自ら出した数字なので、都合よく見せている可能性は残ります。それでも、求人票の空白よりは手がかりになります。
女性の活躍推進企業データベース
女性の働き方に関わる項目をもう少し詳しく見たい場合は、女性の活躍推進企業データベースも使えます。
管理職に占める女性の割合、男女別の勤続年数、採用における男女比などが公表されています。
また、2026年4月から、常時雇用する労働者が101人以上の企業には「男女の賃金の差異」と「女性管理職比率」の公表が義務づけられました(従来は301人以上が対象でした)。
同じ職種で入社しても差が出ているかどうかは、数年先を考えるうえで見ておきたい項目かもしれません。公表の時期は企業の事業年度によって異なるため、まだ出ていない場合もあります。
載っていない場合の読み方
調べても出てこない企業もあります。規模によっては公表の対象外だからです。
載っていないこと自体を悪いこととは考えないでください。ただ、同業の他社が公表していて、志望先だけ空欄が多いという場合は、面接で直接聞いてみる材料になります。
質問する順番とタイミング
聞きたいことがあっても、どのタイミングで出すかで受け取られ方が変わります。
一次面接では、業務の内容や1日の流れといった、仕事そのものに関する質問が自然です。
制度の利用実績や残業の詳細は、選考が進んでからのほうが聞きやすくなります。
最終面接や内定後の面談では、待遇や働き方に踏み込んだ質問をしても差し支えありません。
一度にすべてを聞こうとせず、段階を分けて確認していく形をおすすめしています。
面接でそのまま使える質問
調べても分からなかった部分は、聞くしかありません。ここでは、角が立ちにくい聞き方をそのまま書いておきます。
聞く前に知っておいてほしいこと
一度立ち止まって考えていただきたいのですが、面接は企業があなたを選ぶ場であると同時に、あなたが企業を選ぶ場でもあります。
条件を確認することは、失礼にはあたりません。むしろ、入社後のずれを防ごうとしている姿勢として受け取られることが多いです。
ただ、聞き方によって印象は変わります。「不安なので確認したい」ではなく「入社後をイメージしたいので教えてほしい」という形にすると、自然に伝わります。
離職と定着について
「直近で入社された方は、どのような経歴の方が多いでしょうか。また、入社された方がどれくらい定着されているかも伺えますか」
離職率を直接聞くより、こちらのほうが答えやすい形です。返答の具体性そのものが情報になります。
残業の実態について
「募集要項に月平均◯時間と記載がありましたが、繁忙期にはどのくらいまで増えるものでしょうか。また、部署によって差はありますか」
平均だけでは分布が見えません。知りたいのは平均ではなく、いちばん忙しい月にどうなるかです。
評価制度の運用について
「評価はどのような周期で、どなたが行う形でしょうか。評価の結果は、ご本人にどのように伝えられていますか」
制度があるかどうかではなく、運用されているかを聞く形にしています。フィードバックの有無は、実際の運用状況が出やすい部分です。
入社後の受け入れについて
「入社してから最初の3か月は、どのような業務を担当することが多いでしょうか。教えていただく体制についても伺えますか」
ここが曖昧な場合、受け入れの準備がまだ整っていない可能性があります。
制度の利用実績について
「育児休業や時短勤務の制度について、実際に利用された方はいらっしゃいますか。復帰後はどのような働き方をされていますか」
制度の有無ではなく、使った人がいるかを聞くのがポイントです。制度はあっても前例がない、という職場は実際にあります。
この質問は、いますぐライフイベントの予定がない方でも聞いて構いません。数年先の働き方を考えるための情報です。
口コミサイトとの距離の取り方
会社を調べるとき、口コミサイトを見る方は多いと思います。
見ること自体は問題ありませんが、読み方に少し注意が要ります。
書き込みは、強い感情を持った方が投稿する傾向があります。満足して働いている方は、わざわざ書きに来ないためです。
そのため、内容の良し悪しよりも「同じ指摘が複数の投稿に出てくるか」を見るほうが参考になります。
1件だけの指摘は、その方の状況によるものかもしれません。
複数の投稿に同じ話が出てくるなら、組織として起きていることの可能性があります。
もうひとつ見ておきたいのが、投稿の時期です。
数年前の内容であれば、いまの体制とは変わっていることもあります。
そのうえで、気になった点は面接で直接確認してみてください。口コミを根拠に判断を決めてしまうのは、少しもったいないように思います。
気になったときに確認したいこと
ここからは、選考の過程で見えてくる事実についてです。
事実として観測できることだけを見る
最初にお断りしておきたいのですが、この項目は「こういう会社は危ない」という話ではありません。
面接での印象は、担当者個人の忙しさや相性にも左右されます。1つ当てはまったから避ける、という使い方はしないでください。
ここで挙げるのは、確認しないまま進めないほうがいい、という項目です。
確認しておきたい6つ
- 選考が極端に速い……面接1回で即日内定など。人手が急に必要になった事情がある可能性があります。何名採用予定かを聞いてみてください
- 質問への回答が具体性を欠く……残業や離職について聞いたときに、数字や事例が出てこない
- 給与の幅が極端に広い……「月給25万〜60万円」のような記載。何がその差を生むのかを確認してください
- 固定残業代の内訳が示されない……何時間分が含まれているか、超過分が支払われるかは、本来示される項目です
- 同じ求人が長期間、常時掲載されている……継続的に人が入れ替わっている可能性があります
- 回答を急かされる……「今日中に返事を」と言われた場合、検討する時間が必要だと伝えてみてください
内定後にもう一度確認できます
内定が出た後は、聞きにくさが下がります。
労働条件については、書面での明示を求めて構いません。求人票と内容が一致しているかを確かめてから、承諾するかどうかを決めてください。
条件面の相談をする場合の進め方は、転職の年収交渉はどこまでしていいのかでも触れています。
見学や面談の機会があれば使う
選考の途中で、職場見学やカジュアル面談の機会が用意されていることがあります。
時間が取れるようであれば、参加してみることをおすすめしています。
求人票や面接では分からないことが、その場では見えるからです。
見ておきたいのは、次のような点になります。
- 働いている方の年齢層と、男女の構成
- 席の配置と、話しかけやすい雰囲気があるか
- 訪問した時間帯に、どれくらいの方が残っているか
とくに3つ目は、残業の実態を推し量る材料になります。
ただし、その日がたまたま忙しかった可能性もありますので、これだけで判断しないでください。
案内してくださった方に、同世代の社員の方と話す機会をお願いできるか聞いてみるのも一つの方法です。
「後悔しない」は、完璧に見抜くことではありません
最後に、この記事の前提をお伝えしておきます。
入ってみないと分からない部分は残ります
どれだけ調べても、実際に働いてみないと分からないことはあります。それは仕方のないことだと思っています。
目指したいのは、見抜くことではなく確認したうえで選んだと言える状態です。同じ結果になったとしても、納得感がまったく違います。
優先順位は人によって違います
残業が少ないことを最優先にする方もいれば、多少忙しくても任される範囲の広さを取る方もいます。
あなたの場合、この6つの中でどれがいちばん譲れないでしょうか。ここが決まっていると、面接で何を聞くかも絞れてきます。
面接で自分を伝える準備も同じくらい大事です
見極めるのと同時に、選ばれる側の準備も要ります。
自分の経験をどう言葉にするかは、面接で自己PRが思いつかない人のための経験の言語化にまとめました。
答えの中身より、答え方を見てみる
面接で質問をしたとき、返ってきた内容そのものより、答え方に情報があることがあります。
たとえば残業について聞いたとき、具体的な時間や部署ごとの違いまで説明が返ってくる会社は、その数字を把握しているということです。
一方、「人によります」「繁忙期は多少ありますが」で終わる場合は、把握していないか、答えにくい状況にあるのかもしれません。
質問に対して、その場で分からないことを「確認して回答します」と返してくれるかどうかも、見ておきたい部分です。
これは誠実さの表れであると同時に、入社後の対応の予測にもなります。
面接は評価される場ですが、同時にこちらが確認する場でもあります。
聞きにくいと感じる質問こそ、入社後に効いてくることが多いように感じています。
見極めきれなくても、進んで大丈夫です
ここまで確認する方法をお伝えしてきましたが、すべてを調べ切る必要はありません。
調べることに時間をかけすぎて、応募のタイミングを逃してしまう方もいらっしゃいます。
公的なデータベースで1社あたり15分ほど確認し、残りは面接で聞く。この配分で足りると考えています。
調べた内容は記録に残す
複数社を見ていると、どの会社で何を確認したか分からなくなります。
会社ごとに1枚、確認した項目と回答をメモしておいてください。
内定が出て比較する段階で、この記録が判断材料になります。
まとめ:空白を埋めてから決める
会社を見極めるための順番を見てきました。
求人票で読めないことを整理し、しょくばらぼなどの公的データで調べ、それでも埋まらない部分を面接で質問する。この3段階です。
確認しないまま進めることが後悔につながるのであって、完璧に見抜けなかったこと自体が問題なのではありません。
いま応募を検討している企業があるなら、まずしょくばらぼで名前を入れてみるところからでしょうか。何も出てこなければ、それが面接で聞く項目になります。
未経験の職種を検討している場合は、見るべき条件が変わってきます。未経験職種への転職が現実的な年齢とその条件もあわせてご覧ください。
