若手Webマーケター/SNSグロースプランナーの早瀬優人です。
確定申告の時期になって、1年分の明細から仕事の支出だけを拾い出す作業に丸2日かかった。独立して最初の年に、僕はこれをやりました。
そのとき気づいたのは、記帳が大変なのではなく、混ざった状態から後で分けるのが大変だということでした。分ける仕組みを先に作っておけば、この作業はほとんど発生しません。
この記事では、事業用とプライベートを分けるための最小限のルールを、手をつける順番に沿って整理していきます。
分けないと何が起きるか
先に、混ざったままだと具体的に何が起きるのかを見ておきます。
作業時間が跳ね上がる
1つの口座に生活費と事業の支出が混在していると、明細を1行ずつ判断することになります。
取引が月100件あれば年間1,200件。このうちどれが事業のものかを、記憶をたどって仕分けていく作業になります。
判断が甘くなる
もっと問題なのはこちらです。時間に追われて仕分けると、判断が雑になります。
大変なのは記帳ではなく、混ざった状態から後で分ける工程です。支出した瞬間に分けてしまえば、この工程はほぼ消えます。
説明できなくなる
後から聞かれたときに、なぜその支出を経費にしたのかを説明できるかどうかが実務では効いてきます。
ここでつまずく人が多いのですが、まとめて仕分けた記録は、自分でも根拠を思い出せなくなります。
最小ルール:口座とカードを1本ずつ作る
ここがこの記事の結論です。やることは1つだけです。
事業用の口座を1つ作る
屋号付きでなくても構いません。個人名義の普通口座を、事業専用として1つ用意します。
報酬の入金先をこの口座にし、事業の支出もここから出す。それだけで、明細がそのまま事業の記録になります。
事業用のカードを1枚作る
口座に紐づくカードを1枚、事業専用にします。
ネットでの購入やサブスクの支払いをすべてこのカードに寄せると、月の明細を見るだけで支出が把握できます。
この2つを用意するだけで、後から分ける作業の大半が消えます。会計ソフトの使い方を覚えるより、こちらが先です。
生活費は「事業主貸」で移す
事業用口座から生活費を出したくなる場面は必ず来ます。
そのときは、都度こまごまと引き出すのではなく、月に一度まとめて生活用の口座へ移してください。記録上は「事業主貸」という扱いになり、1件で済みます。
逆に、事業の支払いを個人の口座からしてしまった場合は「事業主借」として記録します。完全に分けきれなくても、この2つの科目で吸収できます。
口座とカードを分けたら、あとはその明細を自動で取り込む形にすると記帳の手間がほとんどなくなります。
クラウド会計ソフトは口座やカードと連携して明細を取り込めるので、分けた後の記録を自動化する道具として使うのが本来の位置づけです。無料で試せる期間があるものが多いので、確定申告の前に一度触っておくと判断しやすくなります。
それでも分けきれない支出がある
口座を分けても、1つの支払いに仕事と生活が混ざる費目は残ります。
家事按分が必要になる費目
自宅で仕事をしている場合、次のような支出が該当します。
- 家賃
- 電気・ガス・水道などの光熱費
- 通信費(インターネット回線・スマートフォン)
- 自家用車のガソリン代や保険料(仕事に使っている場合)
これらは全額を経費にはできず、業務に使った割合を合理的に算出して按分することになります。
考え方は国税庁のNo.2210 必要経費の知識で確認できます。
割合の根拠を残す
按分そのものより、その割合をどう決めたかを説明できるかが重要になります。
面積で分けたのか、使用時間で分けたのか。決め方と計算式をメモとして残しておいてください。
具体的な残し方は家事按分の考え方と、税務署に説明できる根拠の残し方にまとめています。
迷う支出は「使った理由」で判断する
経費にできるかどうかは、金額の大小ではなく、事業の売上に結びつく支出かどうかで決まります。
線引きの具体例は副業の経費にできるもの・できないものの線引きで整理しています。
続けるための工夫
仕組みを作っても、運用が続かなければ意味がありません。
月に一度、30分だけ確保する
順番として、月末に30分の枠を先に確保してください。
やることは、取り込まれた明細を確認して、分類が違うものだけ直す。それだけです。1年分をためると数日かかる作業が、月30分で終わります。
レシートは撮って捨てない
紙のレシートは、その場で撮影しておくと後の確認が楽になります。
ただし、原本の保存が必要な書類もあるため、撮影したから捨ててよいとは限りません。電子データでの保存には要件があり、詳細は電子帳簿保存法で個人が本当にやるべき保存方法で整理しています。
源泉徴収された案件は別で記録する
入金額だけを見ていると、源泉徴収された分が売上から抜け落ちます。
扱い方は請求書の書き方と、源泉徴収されたときの扱いにまとめました。
会計ソフトの位置づけ
最後に、道具としての使い方を整理しておきます。
ソフトは「分けた後」を自動化する
会計ソフトは、混ざった支出を代わりに仕分けてくれる魔法の道具ではありません。
口座やカードと連携して明細を取り込み、分類を提案し、集計と申告書の作成までを担う道具です。分ける作業そのものは、口座とカードの設計で先に済ませておくのが正しい順番です。
選ぶときに見る点
製品を比べるなら、次の3点で足ります。
- 自分が使っている銀行・カードと連携できるか
- スマートフォンから入力・確認できるか
- 申告方式(白色・青色)に対応しているか
この記事で挙げている2つについて、向き不向きを整理しておきます。
- マネーフォワード クラウド確定申告……連携できる金融機関の数が多く、複数の口座やカードを使い分けている人に向きます。一方で、簿記の用語がそのまま出てくる場面があるため、勘定科目に不慣れなうちは戸惑うことがあります
- freee会計……質問に答える形で入力を進められるため、会計の知識がないところから始める人に向きます。一方で、独自の操作の流れに沿うことになるので、すでに簿記の考え方に慣れている人には遠回りに感じられることがあります
どちらも「分けた後の記録を自動化する」という役割は同じです。選ぶ基準は機能の多さではなく、自分が毎月続けられるほうがどちらか、という一点で構いません。
注意点として、無料期間が終わると年額の費用が発生します。事業の規模に対して費用が見合うかは、実際に使ってから判断してください。
白色と青色の違いは副業とフリーランスの確定申告、白色申告と青色申告はどちらを選ぶべきかで整理しています。
いずれも無料で試せる期間が用意されているので、実際に自分の口座をつないでみてから決めるのが確実です。
まとめ:分けるのは、支出した瞬間にやる
事業用とプライベートを分ける最小ルールを整理してきました。
やることは、事業用の口座を1つとカードを1枚用意すること。生活費への移動は月1回まとめて行い、分けきれない費目は按分して根拠を残す。これだけです。
後から分ける作業は重く、支出した瞬間に分ける作業は軽い。この差が、申告時期の負担をそのまま決めます。
事業用の口座を1つ用意して、次に受け取る報酬の振込先をそこへ変更してください。作業としてはそれだけです。
本記事は帳簿づけと経費の区分に関する一般的な情報提供を目的としたもので、個別の支出が経費として認められることや、按分割合の妥当性を保証するものではありません。税制・保存要件は改正される場合があります。実際のご判断は、国税庁の最新情報をご確認のうえ、所轄の税務署または税理士にご相談ください。







