業務効率化コンサルタントの斎藤ほのかです。
やることリストは作っているのに、いつまでも項目が減らない。むしろ増えていく。
そういう状態で相談を受けることがよくあります。
足し算だけを続けていれば、当然そうなります。必要なのは頑張ることではなく、引き算の手順を持つことです。
やらないことを決めるための判断手順を、4ステップに分けて組み立てます。
引き受ける前に、置く場所を決める
リストが膨らむ根本には、引き受け方の問題があります。
依頼された瞬間に「やります」と答えていると、量は必ず増えます。
私がお伝えしているのは、引き受ける前にいつやるかを決めるという手順です。
「今週は難しいので、来週の前半でよければ」と返す。
置く場所が決まらないものは、引き受けない。
この一手間があるだけで、抱える総量が変わります。
断るのが難しい相手であっても、時期の調整なら相談しやすいはずです。
先に決めておくのは、1週間に引き受けられる件数の上限です。
上限があると、その場の判断がしやすくなります。
やることを増やしすぎる仕組み
最初に、なぜ勝手に増えるのかを見ておきます。
増えるのは自動、減るのは手動
タスクは、放っておいても外から入ってきます。依頼、思いつき、いつの間にか続いている作業。
一方で、減るのは自分が意識して外したときだけです。入ってくるのが自動で、出ていくのが手動。この非対称があるかぎり、リストは必ず膨らみます。
「いつかやる」が滞留する
リストの中で場所を取っているのは、締切のない項目です。
いつかやろうと思っている勉強、いつか整理しようと思っているファイル。これらは実行されないまま、見るたびに罪悪感だけを生みます。
減らせないのは判断基準がないから
やめたほうがいいと薄々分かっていても、決められない。これは意志の弱さではなく、判断の基準を持っていないためです。
基準さえあれば、機械的に処理できます。それをこれから作ります。
仕分けに時間をかけすぎない
全部書き出して仕分ける作業は、それ自体に時間がかかります。
完璧にやろうとすると、この作業が新しい負担になってしまいます。
目安として、書き出しに20分、仕分けに20分で切り上げてください。
迷った項目は、いったん保留の欄に置いて先へ進みます。
保留が多くても構いません。明らかにやめられるものが数個見つかれば、その分だけ軽くなります。
全部を判断しようとするより、判断できるものから減らすほうが早く効果が出ます。
残りは翌月に持ち越して構いません。
やらないことを決める4ステップ
ここが本題です。上から順に進めます。
ステップ1:いま抱えているものを全部出す
頭の中にあるもの、リストにあるもの、メモに残っているものを、1か所に書き出します。
この段階では判断しません。書き出すだけです。
20項目を超えることも珍しくありませんが、それで正常です。
ステップ2:3つに仕分ける
出したものを、次の3つに分けます。
- 締切があるもの……相手がいて、期日が決まっている
- 締切はないが、続いているもの……習慣化した作業、定期的な確認
- いつかやろうと思っているもの……着手していない
やめる候補になるのは、下の2つです。締切があるものは、やめるのではなく交渉の対象になります。
ステップ3:「やめたら誰が困るか」で検証する
ここがこの記事の核心です。
やめる候補ひとつひとつに、次の質問を当てます。これをやめたら、誰が、いつ、どう困るか。
- 答えられない……やめてよい。惰性で続いていた可能性が高い
- 自分だけが困る……頻度を下げる、簡略化する余地がある
- 特定の相手が困る……やめるのではなく、伝えたうえで頻度や形を変える
「なんとなく必要そう」で残していたものは、この質問に答えられないことがほとんどです。好きか嫌いかで判断しないのがポイントになります。
ステップ4:やめ方を決めて書き留める
やめると決めたら、どうやめるかまで書きます。
- 完全にやめる……もう着手しない。リストから消す
- 頻度を下げる……毎日→週1回など
- 簡略化する……確認項目を減らす、形式を軽くする
- 期限を切って保留する……3か月後に見直す、と決めて視界から外す
「いつかやる」を消せない人には、最後の保留が有効です。捨てるのではなく、見直す日を先に決めておく形にすれば、手放しやすくなります。
やめると決めたあとの伝え方
ひとりで完結する作業なら、やめるだけで済みます。
ただ、仕事の多くは誰かとつながっているので、伝え方が要ります。
私がお伝えしているのは、次の順番です。
まず、やめる対象と時期を具体的に伝えます。「来月から、週次の集計表の作成を止めます」
次に、代わりの手段を示します。「同じ数字は、管理画面から各自で確認できます」
最後に、困る場合の連絡先を残します。「不都合があれば、今月中にご連絡ください」
3つ目があると、反対されにくくなります。
やめること自体より、相談なく消えることのほうが問題になるためです。
先に決めておくと、伝えるときに迷いません。
リストの置き場所
やらないことリストは、やることリストと同じ場所に置かないでください。
混ざると、やらないと決めたものが再びやることに戻ってしまいます。
おすすめしているのは、月に一度しか開かない場所に置くことです。
毎日目に入る必要はありません。見直しのときだけ開ければ足ります。
先に決めておくのは、どこに置くかと、いつ開くかの2つです。
やらないことリストの書き方
決めた内容は、見える形に残します。
やることリストとは別の場所に置く
同じリストに混ぜると、やることに紛れて復活します。
別のページ、別のファイルに分けて、「やらないと決めたこと」として並べておきます。
理由を1行だけ添える
やめた理由を書いておくと、後から迷ったときに再検討しなくて済みます。
・毎朝のニュースチェック → やめる(やめても誰も困らない) ・週次の作業ログ整理 → 月1回に下げる(自分の振り返り用のみ) ・資格の勉強 → 3か月後に見直す(いまの案件と接続しない)
月に一度だけ見直す
やめた判断が正しかったかは、しばらく経たないと分かりません。
月に一度、このリストを開いて、戻すものがあるかを確認してください。仕組みにしてしまえば、やめる判断を怖がらずに済みます。
やめられないものが多すぎる場合
仕分けをしてみたら、ほとんどが「やめられない」に入ってしまうことがあります。
その場合、判断の基準が厳しすぎる可能性があります。
「誰も困らないか」ではなく、「困る人が、代わりの方法で対応できるか」で見てみてください。
基準を変えるだけで、やめられる候補が増えます。
それでも減らない場合は、やめる以外の選択肢を検討する段階です。
- 頻度を下げる……週次を隔週に、月次を四半期に
- 簡略化する……項目を半分にする、体裁を整えるのをやめる
- 渡す……別の人や仕組みへ移す
- 止めて様子を見る……1か月だけ止めて、問い合わせが来るか確認する
4つ目は、私が現場でよく使う方法です。
止めてみたら誰からも連絡が来なかった、という業務は実際にあります。
減らしたのに戻ってしまうとき
実践するとよく起きる問題を3つ挙げます。
空いた時間に別のものが入る
減らして空いた時間を埋めないと、自然に何かが入ってきます。
やめると決めたら、空いた時間に何を入れるかまで先に決めておくほうが確実です。空白のままにすると、優先度の低いものが流れ込みます。
やめたことを人に説明できない
相手がいる作業をやめる場合、伝え方でつまずきます。
この記事で扱っているのは自分の中の意思決定までです。仕事そのものを引き受けるかどうかの伝え方はフリーランスが仕事を断るときの伝え方をご覧ください。
そもそも量の問題ではなかった
減らしても終わらないなら、原因は別にあります。
1つ1つの作業の見積もりがずれている場合は、量ではなく見積もりの補正が必要です。手順はタスクが終わらない原因を見積もりのズレから直す方法にまとめています。
そもそも使える時間が足りていないなら、減らす前に時間の作り方から見直す順番になります。全体の組み立ては副業と本業を両立する人のスケジュールの組み方で扱っています。
やめる判断を、他人に委ねない
やめてよいかどうかを上司や周囲に聞くと、たいてい「続けたほうがいい」という答えが返ってきます。
判断する側にとって、止めるリスクを負うより現状維持のほうが安全だからです。
ですから、聞き方を変えてください。
「やめてよいですか」ではなく、「1か月止めて様子を見たいのですが、問題があれば教えてください」と伝えます。
これなら、判断ではなく確認になります。
実際に困る人がいれば連絡が来ますし、来なければそのまま止められます。
先に決めておくのは、止める期間と、連絡がなかった場合にどうするかです。
この2つを添えておけば、曖昧なまま元に戻ることがありません。
やめないと決めておくもの
最後に、減らす対象から外しておいてほしいものを挙げます。
- 睡眠……ここを削ると、減らした分の効果が丸ごと消えます
- 記録……見積もりの補正も振り返りも、記録がないと成立しません
- 連絡の返信……止めると相手側で滞留し、あとでまとめて戻ってきます
この3つは、減らした効果が見えにくいわりに、失うものが大きい領域です。
リストが機能しているかの確認
やらないことリストを作ったあと、それが効いているかを確かめる方法があります。
月に一度、次の2つを見てください。
ひとつは、リストに書いたものが実際に発生していないか。書いただけで、結局やってしまっているものはないか。
もうひとつは、やることリストの総量が減っているか。
やらないことを決めたのに、やることが減っていない場合、空いた場所に別のものが入っています。
この場合、減らす作業をもう一度やるより、入ってくる経路のほうを見たほうが早いです。
依頼を受ける窓口、通知、定例の予定。入り口を絞らないかぎり、出口をいくら広げても追いつきません。
原因を分けて考えます。減らないのは減らし方の問題ではなく、増え方の問題であることが多いです。
やめられたことを記録に残す
減らす作業は、成果が見えにくいものです。
やめたものを書き留めておかないと、何も変わっていないように感じてしまいます。
やめた項目と、その日付。これだけでも残しておいてください。
半年後に見返すと、思っていたより多くを手放していることが分かります。
この記録は、次に何かを引き受けるかどうかの判断にも使えます。
先に決めておくのは、記録を置く場所です。
やめられない自分を責めない
減らせない期間があっても、それ自体は問題ではありません。
時期によっては、抱える量が増えるのが自然な場合もあります。
大事なのは、増えていることを把握しているかどうかです。
把握していれば、落ち着いたときに戻せます。
先に決めておくのは、いつ見直すかという日付だけで足ります。
まずは1つだけ、やめるものを決めてみてください。
全部を整理しようとすると、着手する前に疲れてしまいます。
1つ手放せた実感があると、次の判断が楽になります。
その積み重ねで、抱える量は確実に減っていきます。
減らした先に何を置くか
やめることを決めたら、空いた時間の使い道も先に決めておいてください。
決めていないと、別の依頼がその場所に入ってきます。
減らす目的は、時間を空けることではなく、置きたいものを置くことにあります。
置きたいものが決まっていれば、次に依頼が来たときに断る理由も立ちます。
まとめ:好き嫌いではなく、誰が困るかで決める
手順は4つでした。
全部書き出し、3つに仕分け、「やめたら誰がいつどう困るか」で検証し、やめ方まで決めて書き留める。この4ステップです。
減らせないのは意志が弱いからではなく、判断の基準を持っていないからです。基準さえあれば、機械的に処理できます。
いま続けている作業を1つ選んで、「これをやめたら誰がいつ困るか」を書いてみてください。
答えが出てこなければ、それが最初にやめられるものです。全部を見直す必要はなく、1つで足ります。
