若手Webマーケター/SNSグロースプランナーの早瀬優人です。
副業を始めたばかりの時期は、機材やツールへの投資がかさんで、収支が赤字になることも珍しくありません。
そんなとき「この赤字、本業の給与と相殺できないの?」と気になった人もいるはずです。僕も初年度は機材費が先行して、同じことを調べました。
実際のところ、答えは「できる場合とできない場合がある」です。この記事では、副業が赤字になったときの損益通算の可否を、仕組みから所得区分ごとの結論まで順番に整理します。
経費の基本は副業の経費にできるもの・できないものの線引きもあわせて参考にしてください。
通算できる場合とできない場合の整理
損益通算という言葉は幅が広く、混乱しやすい部分です。
整理しておくと理解しやすくなります。
- 所得の区分によって扱いが違う……すべての所得の赤字が通算できるわけではありません
- 通算する相手にも順番がある……どの所得と相殺できるかが決まっています
- 赤字の原因によっては対象外になることがある……生活に関わる資産の損失など
この記事で扱っているのは、副業の所得区分に関わる部分です。
他の所得がある場合や、複雑な状況では判断が変わります。
制度の詳細は国税庁の案内で確認できますし、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談してください。
損益通算とは何か
損益通算とは、一定の所得区分で生じた赤字を、他の所得の黒字と相殺できる仕組みのことです。
相殺できれば、その分課税対象となる所得が減り、結果的に納める税金が少なくなります。
ただし、損益通算ができるかどうかは、副業の所得がどの区分に当たるかで結論が変わります。
すべての赤字が通算できるわけではない
損益通算の対象になるのは、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得という決められた所得区分の赤字です(国税庁No.2250 損益通算)。
これ以外の所得区分で生じた赤字は、原則として他の所得と通算することができません。
副業の場合、ここで関わってくるのが「事業所得」か「雑所得」かという区分です。ここが分かれ目です。
判断を急がないほうがよい理由
赤字が出ると、損益通算できるかどうかをすぐ知りたくなります。
ただ、結論を急いで区分を決めるのは避けてください。
区分は実態で決まるもので、有利かどうかで選ぶものではありません。
先にやるべきなのは、自分の副業の実態を整理することです。
どれくらいの時間を割いているか、継続してどれくらい続けているか、どう仕事を得ているか。
この整理ができていれば、専門家に相談したときにも話が早く進みます。
整理しないまま「事業所得にできますか」と聞いても、判断材料がない状態になります。
事業所得なら損益通算できる可能性がある
副業の所得が「事業所得」に区分される場合、赤字が出ていれば、給与所得と損益通算できる可能性があります。
事業所得として認められる副業とは
事業所得として扱われるには、継続性・営利性があり、社会通念上「事業」と呼べる実態を伴っていることが求められます。
実務上は、日々の取引を帳簿に記帳し、書類を保存しているかどうかも、事業所得として扱われるかを左右する重要な要素とされています。順番として、記帳の体制を先に整えることが前提になります。
単発の作業ではなく、継続的に取り組んでいて、収益を得る目的が明確な副業であれば、事業所得として扱われる可能性が高くなります。
事業所得か雑所得かの具体的な判断基準は事業所得か雑所得かで変わる税額の差でくわしく整理しています。
損益通算できると何が変わるか
副業が赤字で、本業の給与所得が黒字の場合、両者を通算すると課税対象になる所得の合計が小さくなります。
結果として、その年に納める所得税・住民税の負担が軽くなる可能性があります。
ただし、赤字を出すこと自体を目的にするのは本末転倒です。あくまで実態として赤字になった場合の救済措置と捉えてください。
青色申告なら赤字を翌年以降に繰り越せる
事業所得として青色申告をしている場合、その年の損益通算だけでなく、通算しきれなかった赤字を翌年以降(最長3年間)に繰り越して、将来の黒字と相殺できる仕組みもあります。
副業を始めたばかりで初期投資がかさみやすい人にとっては、この繰越控除も見逃せないメリットです。実際のところ、この仕組みを知らないまま初年度を過ごしてしまう人が多いです。
事業所得として申告する場合は、収入と経費を正確に記帳しておくことが欠かせません。
クラウド会計ソフトを使えば、日々の取引を入力するだけで損益の状況を把握しやすくなります。
赤字が出ない年の準備
黒字の年にやっておくと、赤字が出たときに困らないことがあります。
ひとつは、記帳の形を整えておくことです。
赤字の年だけ帳簿を作り始めても、継続性を示すことができません。
もうひとつは、経費の根拠を残す習慣をつけておくことです。
黒字の年は経費の根拠を厳しく見られる場面が少なく、記録が甘くなりがちです。
その習慣のまま赤字の年を迎えると、説明が難しくなります。
金額の大小にかかわらず、記録の形は変えないでおいてください。
翌年以降に向けてできること
今年の赤字を通算できなかった場合でも、翌年以降にできることがあります。
ひとつは、記帳と資料の整備を今年から始めることです。
もうひとつは、事業としての実態を積み上げていくことになります。
営業の記録、継続的な取引、割いている時間。これらは1年で作れるものではありません。
今年の結論が変えられなくても、来年以降の判断材料は今から積めます。
あわせて、赤字の原因を減らす手も打っておいてください。
制度の適用を待つより、事業として成り立たせるほうが本筋になります。
雑所得の場合は原則として損益通算できない
一方、副業の所得が「雑所得」に区分される場合は、赤字が出ても、原則として給与所得と通算することはできません。
雑所得の赤字はどうなるのか
雑所得の赤字は、他の雑所得の黒字と内部で相殺することはできますが、給与所得など他の所得区分とは通算できません。
つまり、副業が雑所得扱いで赤字だった場合、その赤字は基本的に「その年で切り捨て」となります。ここでつまずく人が多いです。
これが、事業所得と雑所得で税務上の扱いが大きく異なる理由のひとつです。
「損をしたくないから事業所得にする」は危険
損益通算のメリットだけを見て、実態を伴わないまま事業所得として申告するのは避けてください。
所得区分は実態に基づいて判断されるものであり、都合よく選べるものではありません。ここは押さえておいてください。
不自然な申告は、税務調査で指摘を受けるリスクを高めます。
赤字になった理由を整理しておく
赤字が出たとき、その理由を自分で説明できる状態にしておいてください。
理由によって、扱いが変わることがあるためです。
整理するときは、次の3つに分けてみてください。
- 立ち上げの費用が先に出た……機材や登録費用など、初年度に集中しやすいもの
- 売上が想定より少なかった……案件数や単価の問題
- 経費が想定より多かった……何にいくらかかったか
1つ目であれば、翌年以降に売上が立つ見込みを説明できます。
2つ目と3つ目が続く場合は、事業として続けるかどうかの判断も含めて考える段階になります。
いずれにしても、記帳と根拠の資料がそろっていることが前提になります。
申告の内容は後から変えられるのか
提出した後に間違いに気づくことがあります。
その場合の手続きは、内容と時期によって変わります。
申告期限内であれば、出し直すことができます。
期限を過ぎている場合は、別の手続きが必要になります。
税額が少なすぎた場合と多すぎた場合とで、手続きの種類も期限も異なります。
気づいた時点で早めに税務署へ相談してください。放置すると加算される負担が増えることがあります。
損益通算を検討するときの注意点
最後に、損益通算を考えるうえで押さえておきたい注意点を、影響が及ぶ範囲の順に整理します。
住民税・国民健康保険料への波及にも注意
損益通算によって所得が減れば、翌年の住民税だけでなく、国民健康保険料など所得を基準に計算される他の負担にも影響することがあります。
税金だけでなく、こうした周辺の負担も含めて全体像を把握しておくと安心です。
赤字の年が続く場合は説明を求められることがある
事業所得として申告していても、複数年にわたって赤字が続く場合、事業として成立しているかを問われることがあります。
継続的に収益を上げる見込みがあることを、記帳や事業計画などで説明できる状態にしておくと安心です。
迷ったら早めに専門家へ相談する
副業の所得区分や損益通算の判断は、個々の状況によって結論が変わりやすい分野です。
金額が大きくなってきた場合や、判断に迷う場合は、確定申告の時期を待たずに税理士や税務署へ早めに相談することをおすすめします。
申告の前に確認しておくこと
赤字が出た年は、申告の前に確認しておきたい点があります。
まず、記帳が最後まで済んでいるか。年末近くの取引が漏れていると、金額そのものが変わります。
次に、経費として計上したものの根拠がそろっているか。
そして、所得の区分についての自分の判断を説明できるか。
この3つがそろっていない状態で申告すると、後から確認を求められたときに答えられません。
時間がかかる部分なので、申告期限の直前ではなく、早めに着手してください。
判断に迷う点があれば、税務署の相談窓口や税理士に確認したうえで進めるのが確実です。
相談するときに持っていくもの
専門家に相談する場合、手ぶらで行くと話が進みません。
持っていきたいのは次の4つです。
- その年の収入と経費が分かる資料
- 帳簿(作成している場合)
- 本業の源泉徴収票
- 副業の内容と、どれくらいの時間を割いているかのメモ
4つ目があると、区分の判断について具体的な話ができます。
数字だけでは実態が伝わらないためです。
この判断が影響する範囲
所得の区分は、その年の税額だけに関わるものではありません。
影響が及ぶ範囲を整理しておきます。
- 所得税と住民税……課税対象になる金額が変わります
- 国民健康保険料……所得をもとに算定されるため、影響します
- 各種の判定……扶養や制度の利用可否に関わる場面があります
短期の税額だけを見て判断すると、他の負担が増えることがあります。
迷う場合は、これらを含めて相談してください。
結論を急ぐより、実態を整理することを先にしてください。
整理さえできていれば、判断は専門家に委ねられます。
赤字の年は、記録が残っているかどうかで説明できる範囲が変わります。
黒字の年と同じ形で、記帳と資料を残しておいてください。
まとめ:損益通算は「所得区分」で結論が変わる
会社員が副業で赤字になったときの損益通算の可否を、仕組みから順番に整理してきました。
ポイントは1つです。事業所得であれば損益通算できる可能性がある一方、雑所得の場合は原則として通算できません。
まずは自分の副業が事業所得と雑所得のどちらに当たるのかを正しく理解することが、損益通算を考える出発点になります。
制度の細かい取り扱いは変わることがあるため、最終的な判断は国税庁の情報や税務署への確認を通して行ってください。
次の一歩は1つだけです。まずは今年の副業の収入と経費を突き合わせて、実際に赤字なのかどうかを数字で確かめてみてください。
事業所得としての記帳を整えたい人は、まず無料プランから試してみるのも一つの方法です。
