業務効率化コンサルタントの斎藤ほのかです。
「今日中に終わるはずだった作業が終わらない」という状態が続くと、自分の集中力や気力を疑いたくなります。
ただ、予定どおりに終わらない案件を並べてみると、ぶつかっているのは能力ではなく最初の見積もりであることがほとんどです。
見積もりがなぜ甘くなるのかを分解したうえで、精度を上げる手順まで進みます。
終わらない本当の原因
まず、何が起きているのかを正確に言語化するところから始めます。
予定と実績のどちらがずれているのか
タスクが終わらないとき、起きていることは2通りしかありません。
- 実績が遅い……見積もりは妥当だったが、作業が予定より遅れた
- 見積もりが甘い……作業は普通に進んだが、最初の想定が短すぎた
この2つを区別せずに「終わらなかった」とだけ記録していると、毎回同じ結果になります。直す対象がまったく違うためです。
ほとんどは後者です
実際に記録を取ってもらうと、多くは見積もりのほうがずれています。
しかも、ずれ方には規則性があります。毎回でたらめにずれるのではなく、いつも同じ方向に、似た比率でずれます。
規則性があるということは、補正できるということです。原因を分けて考えると、直す対象は見積もりの側だと決まります。
見積もりが甘くなる理由
なぜ短く見積もってしまうのか。理由は3つあります。
理由1:「作業」しか数えていない
これが最大の原因です。
記事を1本書く作業を見積もるとき、多くの人は「書く時間」だけを数えます。ですが実際には、次の時間が発生しています。
- 調べる……書き始めてから足りない情報に気づいて調べ直す
- 待つ……相手の確認、素材の受け取り、承認
- 直す……自分の見直しと、相手からの修正依頼への対応
調べる・待つ・直す。この3つを数えていないことが、見積もりが半分になる理由です。
理由2:うまくいった日を基準にしている
見積もるとき、人は調子がよかったときの記憶を使います。
集中できて、割り込みがなく、迷わずに進んだ日。その日を基準にすると、平均的な日には届きません。
理由3:初めての作業を過小に見る
やったことのない作業ほど、工程が見えていないため短く見えます。
実際には調べる時間が大きく、手戻りも増えます。初回はここが読めなくて当然なので、後述する方法で吸収します。
精度を上げる手順
ここからは実際の手順です。3ステップで進めます。
ステップ1:工程に分けて見積もる
タスク全体を1つの塊で見積もるのをやめて、工程ごとに分けます。
記事を1本書くなら、こうなります。
- 調べる:40分
- 構成を決める:20分
- 書く:90分
- 見直す:30分
- 先方の確認待ち:2日(自分の作業時間は0分。ただし納期には効きます)
- 修正対応:30分
作業時間だけ足すと3時間半ですが、納期を考えるなら確認待ちの2日も予定に入ります。塊のまま見積もると、多くの人は「2時間くらい」と答えます。この差が、そのままずれになります。
待ち時間は自分の作業時間には入りませんが、締め切りには確実に効きます。だから工程としては書き出しておく、という方法があります。
ステップ2:実測を記録する
次に、実際にかかった時間を工程ごとに記録します。
ストップウォッチを使う必要はありません。開始時刻と終了時刻をメモするだけで足ります。
ここで大事なのは、見積もりと実績を並べて残しておくことです。片方だけでは補正の材料になりません。
ステップ3:自分の倍率を出す
3〜5件たまったら、実績を見積もりで割ります。
たとえば見積もり2時間の作業が実際は3時間かかっていたなら、倍率は1.5です。これを数件分ならして、自分の倍率を出します。
仕組みにしてしまえば、あとは見積もった時間にこの倍率を掛けるだけです。見積もる力そのものを鍛えなくても、精度は上がります。
倍率は工程によって違うこともあります。「調べる」だけ2倍で他は1.2倍、というように分かれる場合は、工程ごとに持つ方法があります。
1回で当てようとしない
この手順を実践するときに、いちばん誤解されやすい点をお伝えします。
目的は当てることではありません
見積もりの精度を上げるといっても、毎回ぴったり当てるのは無理です。作業には不確実な要素が含まれるためです。
目指すのは、ずれ方を知っていることです。自分は1.5倍かかると分かっていれば、予定は組めます。
だから記録を止めない
倍率は状況によって変わります。慣れた作業では下がり、新しい分野では上がります。
3か月に一度、直近の数件で計算し直すという方法があります。この頻度で足ります。
初めての作業は「調べる」を厚く積む
やったことのない作業では、過去の倍率が使えません。
その場合は、調べる工程だけを普段の2倍にして見積もってみてください。初回のずれは、ほとんどがここから出ます。
実践に落とし込むときの注意
最後に、運用でつまずきやすい点を3つ挙げておきます。
記録が続かないときは項目を減らす
工程を5つに分けて毎回記録するのが重いなら、2つに減らして構いません。
「調べる+書く」と「直す」の2区分でも、倍率は出せます。続かない仕組みは、精度が高くても働きません。
他人と比べない
倍率は、その人の作業の進め方と品質基準によって変わります。
1.2倍の人が優秀で2倍の人が劣っているわけではありません。比べるのは過去の自分だけで十分です。
タスクが多すぎる場合は見積もりの問題ではない
ここは切り分けておくと混乱しません。
1つ1つの見積もりが正しくても、抱えている総量が可処分時間を超えていれば終わりません。その場合に必要なのは精度ではなく、量を減らす判断です。
減らし方はやることを減らすための「やらないことリスト」の作り方で扱っています。
まとめ:ずれを直すのではなく、ずれを知る
要点を3つに絞ります。
見積もりが甘くなるのは、調べる・待つ・直すを数えていないからです。工程に分けて見積もり、実測を記録し、自分の倍率を出す。この3ステップで補正できます。
見積もりを当てられるようになる必要はありません。自分が何倍ずれるかを知っていれば、予定は成立します。
次に着手するタスクに、始める前の見積もり時間をメモしておく。終わったら実際の時間を横に書き足す。この2行だけで、補正の材料はそろいます。
倍率を計算するのは、3件たまってから。それまでは、ただ数字を並べておくだけで足ります。
出した倍率を週の予定にどう反映するかは、副業と本業を両立する人のスケジュールの組み方で扱っています。












