食費は、家計のなかでいちばん先に手をつけられる費目です。明日からでも変えられますし、誰の許可も要りません。
ただ、いちばん戻りやすい費目でもあります。
1か月がんばって減らしても、翌月には元の金額に戻っていた。そんな経験はありませんか。
家計改善アドバイザーの真鍋みゆと申します。
戻ってしまう方に共通しているのは、意志の弱さではありませんでした。「何を減らすか」だけを決めて、「どこで使っているか」を見ていないことです。
この記事では、食費が増えやすい4つの場面を分けて、それぞれの手の打ち方を整理します。
全部やる必要はありません。ご自身に当てはまるところだけで十分です。
減らす前に、いま何にいくら使っているかを分ける
最初にやっていただきたいのは、金額を減らすことではありません。中身を分けることです。
食費は1つの費目ではありません
ひとくちに食費といっても、性質の違うものが混ざっています。
スーパーでの買い物、コンビニ、昼食、飲みもの、外食、飲み会。これらは全部「食費」に入りますが、減らし方はまったく違います。
まとめて見ているうちは、どこを変えれば効くのかがわかりません。1か月ぶんのレシートや決済履歴を、この単位で分けてみてください。
分け方は、決済履歴を使うのがいちばん早い
レシートを取っておくのが苦手な方でも、カードや電子マネーの履歴なら残っています。
アプリの明細を1か月ぶん開いて、店名を見ながら振り分けてください。
スーパー名なら買い物、コンビニ名なら昼食か間食、飲食店名なら外食。おおよそで十分です。
1円単位で正確にする必要はありません。ここでの目的は、どの場面がいちばん大きいかを知ることだけだからです。
「食費が高い」の中身は人によって違います
実際に分けてみると、思っていた場所と違うことがよくあります。
自炊はしているのに食費が下がらない方の内訳が、ほとんど飲みものと間食だったこともありました。逆に、外食が多いと気にされていた方が、実際には買い物のほうが大きかったこともあります。
だからこそ、いきなり「自炊しよう」と決めないでください。効かない場所をがんばっても、疲れるだけで数字は動きません。
公的な統計を見るときの注意点
参考として、公的な数字も置いておきます。
総務省統計局の家計調査(家計収支編)によると、2025年平均で二人以上の世帯の食料への支出は1か月あたり94,895円、消費支出に占める食料費の割合であるエンゲル係数は28.6%で、前年から0.3ポイント上がりました。単身世帯では食料が49,321円です。
ただし、この「食料」には外食が含まれています。ご自身の金額と比べるときは、外食も足した数字で見ないと同じ物差しになりません。
それから、平均より多いこと自体は問題ではありません。世帯の人数も住んでいる場所も違うので、比べるべきなのは平均ではなく先月のご自身の金額です。
①昼食:買う場所を1つに決める
会社勤めの方の家計を拝見していると、いちばん差が出るのが平日の昼食です。
金額より「回数」を数える
まず、先月の平日に何回外で買ったかを数えてみてください。日数で見ると、思っていたより多いことがほとんどです。
ここで、ご自身がふだん払っている1回あたりの金額を当てはめて、20日ぶんを計算してみてください。
1年に直すとどうなるか。この数字が出ると、優先順位が自然に決まります。
お弁当は「毎日」にしない
お弁当を作るのがいちばん効きますが、毎日は続きません。作れなかった日に自分を責めることになるからです。
週に2回、と決めてしまうほうが長く続きます。
前の晩のおかずを少し多めに作って、そのまま詰めるだけでかまいません。朝から新しく作ろうとすると、そこで止まります。
コンビニを使う日の決め方
コンビニをやめる必要はありません。近くて早いのは、忙しい方にとって十分な価値です。
問題は、入るたびに予定になかったものが増えることのほうです。
買うものを決めてから入る、レジ前で足さない。この2つだけで金額は変わります。
コンビニを使いながら整える方法は コンビニで使える節約術 に詳しくまとめています。
社食や近所の定食屋を「安いほう」として使う
お弁当が難しい日に、選択肢がコンビニしかない状態だと、そこで金額が固定されてしまいます。
職場の近くで、いつも同じくらいの金額で食べられる場所を1つ決めておいてください。社員食堂があるなら、それがいちばん確実です。
選択肢が2つあると、その日の気分や時間で選べます。毎日ぴったり同じにする必要はなく、選べる状態にしておくことが大事です。
作れなかった日の逃げ道を用意しておく
お弁当を作る前提にすると、作れなかった日に予定外の支出が生まれます。
冷凍のごはんとレトルトを、職場に置ける方は置いておく。
難しければ、家に「作れなかった日用」のストックを決めておく。これだけで、崩れた日の金額が読めるようになります。
②飲みもの・間食:金額が見えにくい費目です
この費目は、1回の金額が小さいので記憶に残りません。でも回数が多いぶん、月末には積み上がっています。
持ち歩く形にすると回数が減る
自動販売機やコンビニで買う回数を減らすいちばん確実な方法は、家から持っていくことです。
水筒が重いなら、小さいサイズでかまいません。全部を置き換える必要はなく、1日1本ぶんでも回数は変わります。
コーヒーを我慢する話ではありません。
家で淹れて持っていけば、飲む回数はそのままで支払いだけが減ります。我慢して減らしたものは戻りますが、置き換えたものは戻りません。
お菓子は買う場所を1か所に決める
間食も同じです。やめるのではなく、買う場所を決めてください。
週に一度の買い物のときにまとめて買い、それ以外の場所では買わない。こうすると、1週間ぶんの量が目に見えるので、自然と適量に落ち着きます。
疲れているときに買っているなら、そこは削らない
ご相談を受けていると、間食が増えるのは決まって忙しい時期です。
この場合、間食を減らそうとしてもうまくいきません。原因は食べたい気持ちではなく、休めていないことのほうにあるからです。
そういう時期は、金額を減らす対象から外してかまいません。
無理に削ると、別の形で反動が出ます。落ち着いてから見直せば十分です。
③外食・飲み会:断らずに減らす
ここはいちばん扱いを間違えやすい場所です。全部断ると、人間関係のほうに影響が出ます。
行くものと行かないものを先に分ける
誘われてから考えると、その場の空気で決まってしまいます。
先に基準を決めておいてください。会いたい人がいる会には行く、なんとなく続いている定例の会は月1回までにする、といった形です。
基準があると、断るときに理由を作らなくて済みます。「今月はもう1回行ったので」と言えるからです。
金額の枠を先に取っておく
飲み会を減らすより、月にいくらまでと決めておくほうが現実的です。
枠のなかであれば、罪悪感なく使えます。家計として困るのは、金額そのものより、いくら使ったかわからない状態のほうです。
二次会と、その日の帰り方
飲み会でいちばん読めなくなるのは、一次会そのものより、そのあとです。
二次会に行くかどうかを、その場で決めない。
終電を先に調べておく。この2つで、金額の幅がかなり狭くなります。
タクシー代は食費ではありませんが、飲み会の日にまとめて発生する支出です。枠を作るなら、そこまで含めて考えておくと計算が合います。
家で飲む分も同じ費目として見る
外での飲み会を減らした結果、家で飲む量が増えている方も少なくありません。
これは減ったのではなく、移っただけです。買い物のレシートに入っているので気づきにくいのですが、分けて見ると意外と大きいことがあります。
④買い物:回数が金額を決めます
最後は、スーパーでの買い物です。ここは金額が大きいぶん、変えたときの効き方も大きくなります。
行く回数を減らす
買い物は、行くたびに予定外のものが増えます。ですので、週の回数を1回減らすだけでも変わります。
そのために必要なのは、買うものを決めてから行くことです。決まっていないと、足りないものが出て、また行くことになります。
捨てている量を見る
買った食材を使い切れていないと、いくら安く買っても意味がありません。
1週間だけ、捨てたものをメモしてみてください。同じものが繰り返し出てくるようなら、それは買う量が多すぎるということです。
野菜がいつも余るなら、次はカットされたものや冷凍のものに替えてみてください。
単価は上がりますが、捨てる量が減れば支払い総額は下がることがあります。単価の安さと、実際に払った金額は別のものです。
まとめ買いが合う人と合わない人
まとめ買いは、誰にでも効く方法ではありません。
予定が読める生活で、冷蔵庫と冷凍庫に余裕がある方には向いています。
逆に、帰宅時間が読めない方や、収納が小さい方には向きません。使い切れずに捨てることになるからです。
合わないと感じたら、こまめに少量ずつ買う形でかまいません。そのかわり、買うものを決めてから店に入るというルールだけは残してください。
買い方の具体的な手順は 一人暮らしの自炊のコツ で扱っています。安くて栄養の取りやすい食材を知りたい方は お助け食材7選 もどうぞ。
4つのうち、どれから手をつけるか
ここまで4つの場面を挙げましたが、全部を同時に変えようとすると、まず続きません。
金額の大きいものから1つだけ
分けた4つのうち、先月いちばん金額が大きかったものを選んでください。そこだけを1か月変えます。
効果が出てから次に進むほうが、結果的に早いです。同時に4つ変えると、どれが効いたのかもわからなくなります。
それに、4つ同時に変えた月は反動が出やすくなります。1つずつなら、生活のなかに収まってから次に進めます。
健康を削る形にしない
食事を抜く、量を極端に減らすといった形は、金額としては効きます。ただ、体調を崩せば医療費や休んだぶんの負担が出ますし、そもそも長続きしません。
食費の見直しは、削る作業ではなく、買う場所と回数を整える作業として進めてください。同じ金額でも、内容のよい食事に置き換えられる余地はあります。
始める前に確認しておきたいこと
- 先月の食費を、買い物・昼食・飲みもの・外食に分けた
- そのなかで金額がいちばん大きい場面を1つ選んだ
- 減らす金額ではなく、変える行動を決めた(買う場所・回数・持っていくもの)
- やめる形ではなく、置き換える形になっている
- 1か月続けたあとに見直す日を決めた
食費で無理をしないという選択もあります
正直に書くと、食費は節約の労力に対して効き方が読みにくい費目です。毎日の判断が必要で、体調にも直結します。
ここで削るのが苦しいと感じるなら、先に家賃や通信費のような固定費を見たほうが楽です。
一度手続きをすれば、翌月以降は何もしなくても効果が続きます。順番については 固定費を抑えて節約をする3つの方法 をご覧ください。
まとめ:減らす金額ではなく、変える場面を1つ決める
食費を抑えるために必要なのは、我慢の量を増やすことではありません。支出が起きている場面を分けて、そのうち1つの行動を変えることです。
昼食を買う場所を決める。飲みものを持っていく。
飲み会に枠を作る。
買い物の回数を1回減らす。どれも、毎日がんばり続ける必要のないものばかりです。
いくら下がるかは、いまの食生活や住んでいる場所によって変わるので、お約束はできません。ただ、金額が読めるようになれば、次の月の計画は立てられます。
そして、1か月で結果が出なくても、やり方が間違っているとは限りません。
生活のリズムが変わる月もありますし、そこで判断を急ぐ必要はありません。2〜3か月ぶんを並べてから見直せば十分です。
まずは先月のレシートを4つに分けるところから始めてみてください。そこで、手をつける場所は自然に見えてきます。
